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CSRマネジメント CSRマネジメント

ステークホルダー・ダイアログ2015

「食の感動」を社会に届け続けるために必要な安定調達とは〜第2弾〜

プロセスを重視した調達活動で競争力向上を目指す

2014年、私たちアサヒグループが原料の安定調達のために抱える課題について、グループ各社で調達業務に関わる社員が集まり、有識者と調達先の方を交えたダイアログを開催しました。
このダイアログにおいて「水資源の不足が今後の大きな調達リスクになる」という指摘を受け、アサヒグループでは水に関するリスクの調査分析に着手しました。

2015年、それらの経過報告を中心に、今後のアサヒグループの取り組む方向性をさぐるために開催したダイアログについてご紹介します。

CSR基本方針

出席者

  • 足立 直樹氏

    (株)レスポンスアビリティ
    代表取締役
    足立 直樹氏

  • ア田 薫

    アサヒグループホールディングス(株)
    調達部門 ゼネラルマネジャー
    ア田 薫

  • 佐田朋彦

    アサヒグループホールディングス(株)
    CSR部門 ゼネラルマネジャー
    佐田 朋彦(進行役)

原料の水リスク分析調査の概要

目的

アサヒグループの原材料調達過程における水リスクを分析し、グループの事業への経済的影響を評価する

分析の内容

分析対象の原材料:アサヒグループの製品製造において使用量が多く、かつ、代替し難い、海外から調達している主要原料

調達場所:世界59地域

分析内容:

  • 原材料のウォーターフットプリント※1
  • 自然資本コスト(外部費用)

分析スケジュール:2014年9月〜2015年5月

分析方法

  • 1 . 調達先地域の水の希少性調査
  • 2 . 各地域の原材料のウォーターフットプリントの調査
  • 3 . 自然資本コストの評価
  • 4 . 市場価格との比較

※1 ウォーターフットプリント:食料や製品の生産のライフサイクル全体で直接的・間接的に使用された水の総量。

「水リスク調査」から浮かび上がったモルトの調達リスク

「水リスク調査」から浮かび上がったモルトの調達リスク佐田 2014年の座談会において、足立さんからいただいたさまざまな投げかけを受けて、我々が事業で必要としている農作物をはじめとする原材料には「水」が絶対に欠かせないものだ、という認識を新たにしました。そこで、まず水リスクの現状を把握しようと考え、そのための調査を今回足立さんに依頼させていただきました。

足立氏 いま佐田さんがおっしゃった「原材料の調達上、水は重要だ」という考え方ですが、このことをきちんと認識されているということは、企業として非常に重要な姿勢です。というのは、飲料メーカーであれば「水」に対する重要性は認識されていて当然なのですが、その対象は飲料の中身である“詰めている水”だけになりがちです。
しかし実際には“詰めている水”よりも“原料である農作物を作る水”のほうがケタ違いに多いので、「水」の問題はバリューチェーンにまで対象を広げて考えることが非常に重要になります。そういう意味で、主要な原材料の調達過程における水リスクを把握し、課題解決に継続して取り組むことは社会からも評価される姿勢です。

佐田 ありがとうございます。それでは、今回の調査から浮かび上がった課題や取り組みの方向性についてお話しいただけますか。

足立氏 アサヒグループさんの主要な原材料を調査した結果、これはまだ分析の中間段階の結果ですが、主力製品であるビールやウイスキーに使われる「モルト」が一番、生産地における水リスクの影響を受け、価格が高騰する可能性が高いという結果が出ています。日本は、降雨量も多く、人口も減少傾向にあるため水のリスクはあまり認識されていませんが、多くの企業で原材料を海外から調達していることを考えると、調達における水リスクを考えることは今後事業上の重要なテーマになってくると思います。

ア田 「モルト」はアサヒグループで扱う原材料の中でも必要不可欠な主原料ですから、われわれ調達を担当している部署にとって、中・長期的な視野で最も危機意識をもつべき課題ですね。気候変動や新興国における原材料の需要増など、調達をとりまく環境は刻々と変化しています。そういった状況にある中、今回の調査でリスクを具体的・定量的に提示していただけたことで、「水」のコストや原材料調達のリスクを自身の感覚として把握できたと感じています。中長期的な視点でアサヒグループの調達の課題を認識できるきっかけになったことが、今回の成果の大きな一つですね。

佐田 原料調達だけでなく環境への負荷を減らすことについても中・長期的な方針や計画を立てていくことが重要ですね。

環境負荷低減のポイントはサプライチェーンに存在する

  

足立氏 また、これは日経225構成銘柄の企業で最も水使用量が多い6業種について、サプライチェーン全体における水使用量を「自社の操業」「1次サプライヤー」「その他サプライヤー」に分けて示したグラフです(グラフ参照)。「食品・飲料」のグループでは「1次サプライヤー」「その他サプライヤー」での水使用量の比率は98%にも上り、6つのグループの中の最高値となっています。自社の操業のための水使用量はたった2%しかなく、実はサプライチェーンにおける水使用量のほうが圧倒的に多い。もっと細かく分析すれば、どの調達先の水使用量が多いのか、サプライチェーンのどの段階で多く使用されているのかもわかります。このように実際に環境に大きな負荷を与えているのは調達先なので、CSR部門だけでは対応が難しく、調達担当部署と協力していくことが必要なのです。

日経225構成銘柄企業6業種の水使用量の内訳

環境負荷低減のポイントはサプライチェーンに存在する

出典:KPMGあずさサステナビリティ株式会社
「ピークウォーター:日本企業のサプライチェーンに潜むリスク」

ア田 われわれ調達部門は原材料の安定調達がミッションですが、源流までさかのぼってみると価格の上昇リスクがグループ事業に与える影響が大きいことがよく分かり、よりリアルにリスクを感じることができました。

佐田 調達先との関係構築は調達の実務と並んで重要な課題という問題提起をいただきましたが、この課題に取り組んでいくためにはアサヒグループホールディングスのCSR部門・調達部門に加え、グループ内の事業会社との連携が必要です。いまアサヒグループの社会的価値向上に向けた施策として経営ともコミットしながらCSR調達を進めていますが、今後は課題を整理して、事業会社に積極的に関わってもらいながら前へ進めていく必要がありそうですね。

ア田 調達部門にとって、10年後、20年後の安定調達をどう考えるのかということは、非常に重要な課題だと認識しています。そこで1年ほど前から、調達部門のメンバーでグループ事業の売り上げに大きな影響を与える原材料に関するスクリーニングを行い、主要な原材料の入手困難度のレベル分けによるリスクマッピングを行いました。このマッピングに基づき、リスク対応策を検討するなどして、この1年で問題意識の共有がかなり進みましたね。

佐田 CSR部門においても安定調達という観点からの課題は非常に重要だととらえています。今後はこれをアサヒグループ内できちんとコミットして、経営トップも含めてグループの経営課題のひとつにしていくというのがわれわれアサヒグループホールディングス(株)の機能部門としての課題でもありますね。

「『グリーン』、『グループ』、『グローバル』で世界品質の調達を実現しよう」 ア田 アサヒグループの調達担当者で今後の調達戦略について考える「戦略分科会」を設け、2週間に1回の割合で議論をしています。この中で、グループの調達機能として共有すべきビジョンを議論し、短い言葉ではありますが、「『グリーン』、『グループ』、『グローバル』で世界品質の調達を実現しよう」というスローガンになりました。それをいま、海外のグループ会社も含めて英語に翻訳して展開を始めたところです。
また、グループ内だけではなく、調達先に対してもアサヒグループのCSRに関する方針・考え方や取り組みを理解していただくことも重要だと考えており、2014年末ごろからこれらに関する説明会を開くなどして、啓発活動を開始しました。
また、サプライチェーン全体でのリスクや課題を捉え、解決に向けて積極的に取り組むために、調達先・生産者の方々へのアンケートも実施しています。このアンケートを通して、調達先における環境負荷低減への取り組みをはじめ、CSRの観点からどのような取り組みを行っていらっしゃるのか、状況の把握に努めるとともに、連携して持続可能な調達活動を実現していくために、調達先・生産者との取り組みを強化していきたいと考えています。

「安定調達」を経営課題として捉えていくために

足立氏 アンケートやヒアリングの結果として、工場などのオペレーションに改善が必要な問題が出てくる場合があります。
一方的にルールを設けて厳守させる方法だと、反発されたり偽装されたりするリスクが出てきますから、調達先と協働して課題を解決するエンゲージメント型のほうが有効かもしれません。調達時に何か課題が浮かびあがった場合でも、取引をやめるのではなく、一緒になって解決するというスタンスで取り組む方が、時間はかかるかもしれませんが、最終的には調達先との強固な関係を構築し、安定調達につながると思います。

調達先と一緒にどのような取り組みをしていくのかア田 調達先と一緒にどのような取り組みをしていくのか、具体的なやり方が今後の調達活動における大きなポイントになってきますね。
アサヒグループでは多岐に渡る原材料を扱っていますので、それらのうちどの原材料に焦点を当てるべきか。また、ひとつの原材料でも、その生産者には大規模な農家もあれば小規模な農家もあります。
当然両者に対する支援の仕方は異なってしかるべきですので、やはり調達先の状況をこちらでもきちんと把握し、状況に合った打ち手を考えていくというプロセスが重要になってくると、改めて認識しました。

足立氏 今後はCSR部門と調達部門とで連携し、グループ内や経営にきちんと実情を伝えていくことが重要になりますね。調達リスクは円滑な事業活動の推進に大きな影響を与えますから、現在行っている調査の概要をきちんと分析し、また調達先へのアンケートの結果を精査することで、リスクと対策を適切に経営に提示していく必要があると思います。

佐田 われわれはどうしても部門ごとに今期の目標や戦略にとらわれがちで、せいぜい半年や1年という期間で業務を考えがちです。CSRや調達を通した取り組みは、もう少し先を見ながら情報収集して、3年先、5年先のリスクや課題を各部門や各グループ会社と共有できるようなコミュニケーションをとる必要がありますね。

足立氏 調達活動に必要なこととしてよく「QCD」※2という言葉が使われます。「QCD」は当然必要だと思いますが、これからはこの3つに加えて「P」、つまり「プロセス(Process)」が重要になってくると思っています。「QCD」の3つは調達したものを見れば見えるのですが、「P」は見えない。その見えないところが今、競争力になりつつあるのではないでしょうか。ぜひアサヒグループには、普通では見えない「P」の部分を見える化していただき、社会に対して自慢できるような「P」にしていただきたい、と思っています。

佐田 それでは最後に、足立さんからアサヒグループの調達活動におけるメッセージを頂戴できますでしょうか。

足立 2020年に東京オリンピック・パラリンピックがありますが、2012年のロンドン五輪は“持続可能なオリンピック”だったんです。選手村や会場で提供する飲みものや食べものから競技場の建材、入賞選手に渡す花束や入場チケットまで、すべて持続可能性を認証した原材料が使われていたんです。イギリス・ロンドンがここまで実現したわけですから、日本・東京はそれと同程度か、できればさらに上回るものにしてほしいと思います。それが国内外に大きなインパクトを与えるでしょうし、いち早くそういった商品を手がけた企業がアドバンテージを得ることにもなります。アサヒグループさんには、ぜひその基準をリードして実現していく取り組みを期待したいですね。

佐田 本日は、貴重なお話やご意見をありがとうございました。

※2 QCD:品質(Quality)、価格(Cost)、納期(Delivery)の頭文字をつなげた略語。

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