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ステークホルダー・ダイアログ2016 ステークホルダー・ダイアログ2016

ステークホルダー・ダイアログ2016

社会的価値の向上に向けて、アサヒグループが取り組むべき重点テーマとは

アサヒグループでは、社会情勢の変化に対応し、経営に根ざしたより戦略的なCSR活動を行っていけるよう、CSR活動領域と重点テーマの見直しを進めてきました。その過程において、ステークホルダー視点での評価を取り入れるため、2名の有識者をお迎えし、役員とのダイアログを開催。アサヒグループのCSR活動領域と重点テーマで重視すべき点や、今後の取り組みに寄せる期待など、幅広い見地からご意見をいただきました。
(2016年1月実施)

役員とのダイアログを開催

参加者

有識者(順不同)

  • 足立 直樹氏

    (株)レスポンスアビリティ
    代表取締役 足立 直樹氏

  • 河口 真理子氏

    (株)大和総研 調査本部
    主席研究員 河口 真理子氏

アサヒグループホールディングス(役職は開催当時)

  • 泉谷 直木

    アサヒグループホールディングス(株)
    代表取締役社長 兼 CEO 泉谷 直木

  • 川面 克行

    アサヒグループホールディングス(株)
    代表取締役副社長 川面 克行

  • 橋 勝俊

    アサヒグループホールディングス(株)
    常務取締役 兼 常務執行役員 橋 勝俊

  • 池田 史郎

    アサヒグループホールディングス(株)
    常務取締役 兼 常務執行役員 池田 史郎

  • 奥田 好秀

    アサヒグループホールディングス(株)
    常務取締役 兼 常務執行役員(CFO)奥田 好秀

アサヒグループの経営環境を取り巻く国内外の変化

泉谷 本日は、私を含め当社グループの役員5名が出席しておりますが、経営者の仕事は財務的価値と社会的価値という2つの側面から企業価値を高めていくことだと認識しています。そのために、何に重点を置きどのように取り組んでいくべきかという妥当性・客観性を、社外の方にもご参加いただき議論するのは、非常に意義の大きいことと考えています。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

足立 よろしくお願いいたします。今回、アサヒグループでもCSR活動領域と重点テーマを見直されるように、企業を取り巻く環境は、昨今大きく変化しています。2015年秋には国際的な目標として「持続可能な開発のためのグローバル目標」(SDGs)が採択されたほか、COP21では世界中のすべての国が協調して気候変動問題に取り組み、最終的には温室効果ガスをゼロにすることを定めたパリ協定が採択されました。2016年以降はそれらを実行に移すステージを迎えています。ただ、全体として日本企業はまだ当事者意識が乏しく、世界的な流れに乗り遅れている印象があります。

河口 日本と世界との温度差は確かにありますね。ESG投資をめぐっても、2014年には世界で2,600兆円の市場規模がある中、日本のESG投資は1兆円に届きませんでした。しかし、2014年以降、日本でもスチュワードシップ・コードとコーポレートガバナンス・コードが発表され、またGPIFが責任投資原則に署名するなど、変化が起きてきています。機関投資家の姿勢が変わり、企業もそれに合わせて対応を始めています。

池田 私は昨年までCSR担当役員を務めていましたが、環境側面では国内においても、この数年で消費者の間で少しずつ意識が変わってきているのを感じます。商品における省エネルギー・省資源やごみの削減といった要素がお客様の意思決定に影響を与えてきているのです。新しい価値提案として、アサヒグループでも社会・環境に配慮した商品を発信するなど、取り組みを強化していければと思います。

 ひとつ気になるのは、日本ではそうした「環境へのやさしさ」をめぐる取り組みが一時期ブームのように盛り上がるものの、長続きしない傾向にあるのではという点です。企業側の責任でもあると思いますが、取り組みを定着させていくためには、最大のステークホルダーであるお客様に、本質的な意義を理解してもらえるよう働きかけていくことが必要なのだと感じます。

河口 消費者が自分の購買行動に社会的な責任を持つことは極めて重要で、そうした消費者層を育てる役割も企業には期待されています。最近では、若い世代を中心にエシカル消費への感度は高まってきていますので、取り組みを的確にアピールできれば、以前より理解は得られやすいでしょう。

川面 エシカル消費のような消費スタイルが注目されてきている一方で、価格を重視した消費行動も衰えを見せません。こうした消費スタイルの二極化の溝はなかなか埋まらないようにも見えますが、最近生じている食品の安全性に関する問題などを通じて、普段手にする商品がどのようにつくられているか、価格だけではない側面に消費者が目を向ける機運は確実に高まっていると思います。企業としてもそれを後押していかなければいけません。

サプライチェーン全体で社会・環境課題をとらえ、対応する

 足立さんには、2015年度より当社グループの水リスクについての調査を依頼しています。当社の重点テーマの一つにもなっていますが、持続可能な水資源の重要性は増すばかりです。ただ、当社が単独で水の有効利用に取り組んでいても、製品の製造に使う水より、原材料の農作物をつくるために畑で使う水の方がケタ違いに大きいのが実情です。調達元を含めたサプライチェーン全体を見る視点が欠かせません。

足立 おっしゃる通りです。特にモルトやオレンジ、コーヒーに関しては、今後は水の問題により現在の産地で同じ価格・品質で調達できなくなる可能性が高まっています。そのとき、単に「より水リスクが低い代替原産地へと乗り換えていく」というのでは、社会からの信頼を得ることはできません。それぞれの産地での水リスクを踏まえつつ、まずはより少ない水でいかに効率的なものづくりをするかを考える姿勢が問われます。

河口 米国の食品メーカーなどでは、気候変動に伴って自社の調達先が受けるリスクをあらかじめ開示する例もありますね。

足立 ええ。また、水リスクによって企業が受ける財務的な影響は外部からもある程度推定でき、現に欧州の投資家はそれを踏まえた投資判断を行っています。「当社は水問題に対し、このようにリスクを認識し、管理している」という開示ができれば、それは十分にポジティブな評価につながります。

奥田 当社では5,6年前からSR(シェアホルダー・リレーションズ:株主対応)活動に注力していますが、対話の場ではガバナンスに関する質問が多く寄せられます。業績についての数値は財務情報を見ればわかることであり、それよりも予測の難しい将来の業績を担保するものとしてガバナンスが注視されているのだと思います。またサプライチェーンについては何社からも質問を受けます。自社グループだけでなく、サプライチェーンまでさかのぼって見たときに調達先に環境問題がないか、それを含めたリスクが問われているのだと思います。

河口 サプライチェーンをめぐっては、最近ではアニマルウェルフェア(動物福祉)も注目されていますね。
欧米ではマクドナルドやサブウェイなどの大手がゲージ卵を禁止したり、牛への抗生剤の投入量も厳しく問われてきています。さらに、日本ではまだ認知度が低いですが、英国で2015年に制定された現代奴隷法なども注視が必要な動きです。

奥田 現代奴隷法については、現在当社では、アサヒビール(株)欧州統括支店が対象となり、対応につき検討を開始しています。サプライチェーン上の強制労働や人身取引などの人権侵害は、企業にとって大きなリスクとなります。

足立 現代奴隷法は、日本でも本来であれば政府主導で整備されるべき法律です。国際的に人権への取り組みが進む中、日本では国としての対応が遅れている以上、グローバル市場に挑んでいくためには企業は自社でアンテナを立てて取り組んでいくしかありません。
現代奴隷法(Modern Slavery Act 2015):サプライチェーンにおける強制労働の防止についての取り組みの年次報告の公表を企業に求める英国の法律。

グローバルで成長を果たすために不可欠な事業地への貢献

池田 海外事業地に目を移したときに必要だと思うのは、各国の個別性を勘案した対応です。私はインドネシア事業を担当していますが、現地でCSVを重視した商品が求められるようになるにはまだ時間がかかるように感じています。たとえば、環境保全という概念自体がまだ浸透しきっていない、慣習としてごみを川に捨てているような地域において、環境配慮を訴えた商品で人々の心を捉えるのは時期尚早でしょう。

足立 確かに、発展段階でのニーズの違いはあり、日本と同じアプローチではうまくいかない場合もあります。ただ、事業を展開する国や地域が抱えるさまざまな問題を、どういう切り口で解決していくかを考えることは、ビジネスイノベーションのきっかけになります。また長期的に見れば、そうした社会基盤の整備は、将来の自社のビジネスのやりやすさにもつながってくるでしょう。

河口 従来、日本企業は「良い商品ができたから市場を求めて海外にも売りに行く」というスタイルで事業を展開する傾向が強かったのですが、まずは事業地で信頼され、愛される企業となった上で商品を広げていくという発想も大切です。
そのためには、現地の事情を鑑みた社会貢献が欠かせません。環境面では、日本も公害の時代を乗り越えてきた歴史があるので、「このような方法を採れば問題を解決していける」など経験に基づいた提案で、日本らしい貢献ができると思います。

泉谷 長期的視野から、人々の健康や教育、インフラ整備などに積極的に協力した上で、将来のお客様になっていただくというのはビジネスとしても有効だと私は考えています。経済力が上がり、成熟社会を迎えれば当社商品の市場も育ちます。少し視点が変わりますが、東日本大震災後、当社では被害の大きかった地域の一つ、宮城県の東松島で大麦を植え、地ビールメーカーがビールを製造して販売するというプロジェクトを進めてきました。これは震災の復興支援の一環としての取り組みですが、土地に根ざした取り組みとして、このような事業のグローバル版も考えられるのかもしれません。

価値創造という視点から戦略的CSRを展開する

川面 グローバルでは、南北問題の解消など難しいテーマがあります。途上国の立場からすると先進国だけが先に利益を得てきたような感があるのではないでしょうか。途上国のために譲るべきものは譲り、社会、環境の修復や発展に貢献できるよう、ある程度制度化して取り組んでいくことは欠かせないのでしょう。

泉谷 世界人口の増加と、それにともなう食糧やエネルギーの不足など、私たちが未来に向けて抱える課題には国境がありません。日本が年間1,900万トンの食糧を廃棄している一方で、飢餓に苦しむ国々があります。さらに、世界で拡大し続ける水問題など、将来的にはさまざまな資源が限界を迎えます。広く社会と連携し、何にどう取り組むか、企業は常に考えていく必要があります。それは、業績が良ければ行い、悪くなれば止めるなどといった性質のものであってはならないのです。2016年度からの新中期経営方針でも、そうした考えを全面的に盛り込み、「持続的成長を目指した“企業価値向上経営”」を掲げています。

河口 素晴らしいですね。地球というバウンダリーがこれ以上広がることがない以上、全人類は限られた資源のもとで共生していくしか道はありません。相手を倒すまでの激しい競争ではなく共存を考え、モノの増大ではなく、質の発展という方向で進化を目指せば、企業がより大きな価値を生み出すことは必ずできます。

足立 御社のCSR活動領域と重点テーマは、カバーすべき領域を的確に押さえており、方向性には間違いがないと思いますので、今後はそれを具体的な計画に落とし、目標達成につなげていっていただきたいと願います。社会や環境はさまざまな課題を抱えていますが、それを制約ではなく、新しいものを生み出すチャンスとして考えることで違った世界が見えてきます。
アサヒグループは、サステナビリティへの考え方がすでに取締役の皆さんに根付いた先進的企業だと思います。だからこそ、グループのトップが前面に出て、そうした考え方を直接社会に発信していくことが重要です。

泉谷 従来を超えた一歩踏み込んだ取り組みが、今まさに求められているのだと感じます。「企業の責任論」としての対処にとどまらず「価値を生み出す」という視点に立つ必要がありますね。社会・環境課題への対応を経営戦略の中に組み込んで、企業経営そのものをサステナブルにすることで、しっかりと推進してまいりたいと思います。本日はありがとうございました。

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