「若年層がお酒を飲みたくなるアプリ」をテーマにハッカソン開催

[グループ会社の取り組み]
アサヒビール

 皆さんは“ハッカソン”という言葉をご存知だろうか。これはIT業界で流行中のイベントで、一か所に集まった参加者たちが、一日から数日の短期集中で新たなサービスやプログラムの開発を行い、その技術やアイデアを競うというものだ。
 そんな中、5月22日から24日の3日間にかけて、新たなタイプのハッカソンが開催された。「AB会議ハッカソン」という名のこのイベントは、アサヒビール(株)と日経BP社が共同で運営するWebサイト「カンパネラ」の主催で行われた。ビアレストランで適量のお酒を楽しみながらアイデアを出し合うという、従来にないスタイルが注目を集め、40名の応募枠を大きく超える参加希望者から申し込みが殺到。当日も大いに盛り上がりを見せた。
 ビール会社が主催するハッカソンとしては日本初の事例となった今回のイベント。なぜアサヒビールが新たな取り組みにチャレンジしたのか、担当者に話を聞いた。

ハッカソン最終日
発表後の「カンパイ!」の様子

―そもそも、なぜ「カンパネラ」というサイトを立ち上げたのですか。

 馬場:私が所属するデジタル戦略部は、ITを活用した新たな取り組みを色々と行っていますが、そのひとつとして2014年7月に立ち上げたのが「カンパネラ」です。背景にあるのは、「お酒の需要全体を底上げする必要がある」という問題意識でした。少子高齢化などでお酒の需要が縮小する中、どの酒類会社も自社商品のPRに力を入れていますが、それだけではこの流れに歯止めがかからない。お酒を飲む楽しさを伝えたり、お酒文化そのものを普及することで、この問題を解決していく糸口になるのではと考えました。
 もうひとつは、弊社のイメージに関する問題意識です。一般のお客様には、「アサヒビールといえばスーパードライ」という印象をお持ちの方が多い。もちろん、強力なブランドを持つことは強みでもありますが、実際にはそれ以外にも多岐に渡る商品を扱っているわけです。ですから、私たちが従来にない取り組みをすることで、弊社に対して、消費者の皆様に新しいイメージを提示できるのではないかと考えました。

アサヒビール(株)
経営企画本部 デジタル戦略部
担当課長 馬場崇暢

―事業会社と出版社が共同でサイトを運営する事例は日本初だと聞きました。なぜ異色のタッグが誕生したのでしょう。

 馬場:自社で運営すると、どうしても「企業・商品」という切り口からの情報発信が多くなってしまいます。そこで、出版社というメディアの記者の方たちに、第三者的な目線からコンテンツを作って頂くことで、私たちアサヒビール側の立場に偏ることなく、フラットで読み物としても面白いものができるのではないかと考えました。そのほうが、読者の方たちもお酒に対してポジティブな印象を持ちやすいだろうと。そこで、企業色を前面に出さないことを逆に強みとするサイトにしたのです。
「カンパネラ」のコンセプトは2つあります。1つは「ビジネスパーソンに仕事のひらめきやヒントを与える」、もう1つが「お酒とコミュニケーションを通して人生を豊かにする」。飲酒をする人は、「お酒はコミュニケーションを媒介するものである」というのは当たり前のように実感していますが、お酒を飲まない人にもこうした良さを改めて伝えていきたいと思っています。

CAMPANELLA [カンパネラ]ビジネスパーソンにひらめきの鐘を

―Webサイトを運営するだけでなく、「AB会議ハッカソン」というリアルイベントを開催したのはなぜですか。

 馬場:「AB会議(アルコール・ブレスト会議)」というのは、もともと「カンパネラ」のコンテンツの1つなんです。これはお酒を軽く飲みながらディスカッションを進めるスタイルの会議で、ほろ酔いの状態だと既存の価値観や枠組みから脱して、クリエイティブな発想が生まれやすくなるというメリットがあります。「カンパネラ」でも弊社の若手社員5名に参加してもらい、実際にAB会議を開いて、その様子をサイト上で紹介しました。
 その時に、「AB会議」というコンテンツをもっと世間に広めたいと思ったのです。「お酒とコミュニケーション」というテーマに合致するのはもちろんですが、仲間内で飲みながら愚痴を言い合うようなネガティブなものではなく、お酒を楽しみながら会話をしてより良いアウトプットを出すという、前向きで発展的なところがすごくいいなと。「AB会議」というワードが一人歩きして広まっていけば、世間の人たちのお酒の飲み方を変えるかもしれない。居酒屋にホワイトボードやノートが置かれて、誰でも気軽にAB会議ができるようになるかもしれないわけですよね。これはお酒文化そのものを変えるだけの可能性を秘めたコンテンツだと直感しました。
 それで「AB会議」を広める方策についてあるITの専門家に相談したところ、「このスタイルでハッカソンをやったら面白いのでは」とアイデアを頂いたのです。そこで「お酒の需要を喚起する」という「カンパネラ」の当初からの目的を踏まえ、「若年層がお酒を飲みたくなるアプリの開発」をテーマにハッカソンを開催することにしました。

発表にむけ最終準備に真剣な参加メンバー

―実際にハッカソンを実施してみての感想はいかがですか。

 馬場:参加者の皆さんが楽しんでくださっている様子が印象的でした。話を聞いてみると、「ビール会社が主催するハッカソンは初めてだから、これまでにない面白いものが作れそう」と思ってくださった方が多いようです。もちろん、「ビールを飲めるのが楽しみ」という方もいましたが(笑)、遠方から来た方や夫婦で参加した方もいて、皆さんがアサヒビールの新たな取り組みに期待してくださっているのを実感しました。
 アサヒビールの社内だけで開発したら出て来なかったであろう斬新なアイデアもたくさん出されて、私たちとしても発見や気づきが多かったですね。普通なら「アプリはスマホで使うもの」という限定的な発想になりがちですが、参加者の方たちは他のデバイスと連動させたり、まったく別の技術を付加させたアプリを開発していて、私たちも勉強になりました。何より「お酒を飲みたくなるアプリ」というお題に対して、非常にレベルの高いアウトプットが多く、お酒文化を啓蒙していく立場の者としては収穫の多いイベントになったと感じています。
 今後もハッカソンに限らず、様々なリアルイベントに挑戦してみたいと思います。「カンパネラ」というプラットフォームができて、読者や消費者の方たちとのつながりが生まれたので、それをより強化できるような場を作っていきたいですね。

開発したアプリのデモンストレーション 最終日は、エプロン姿で参加者にビールを振る舞った馬場