小学校で「菌とリサイクル」に関する出前授業を実施

[研究開発]

 6月上旬、北九州市にある花房小学校で「環境」と「食育」に関する授業が行われた。教壇に立ったのは学校の先生ではなく、アサヒカルピスウェルネス社の社員。小学校から依頼を受けて、4年生を対象に出前授業を行ったのだ。  アサヒカルピスウェルネス社は、2016年1月にアサヒグループが行った事業再編により誕生した新しい会社。カルピス社の健康食品・機能性素材事業と畜産用の飼料事業を受け継ぎ、乳酸菌や酵母などの有用な微生物を活用する技術を通して、人々と動物の健康的な暮らしと、生活の質の向上に貢献することを目指している。  なぜ、一般企業の社員が授業を行うことになったのか。出前事業を担当している飼料事業部の安田源太郎に話を聞いた。

教壇に立つ、アサヒカルピスウェルネス社
安田 源太郎

―小学校への出前授業を行うことになった経緯を教えてください。

 安田:実は今回が初めてではなく、カルピス社として2年前から小学校への出前授業を行っています。最初は東京・昭島市の小学校で実施し、今回の北九州市の小学校は2例目となります。
 きっかけは、弊社が「サーベリックス」という堆肥化促進剤を使った循環型農業プロセスを開発したことです。これは、食品廃棄物を微生物の力で分解して堆肥にし、その堆肥を使って農作物を作る仕組みです。この仕組みにより、食品廃棄物の減量化や、堆肥を利用した有機農業が推進され、地球規模の循環型社会形成に大いに貢献できるのです。それが昭島市の小学校の給食調理室に導入されたことがご縁となって、先生から「ぜひ食育と環境をテーマに授業をしてほしい」とご要望を頂いたのです。北九州市については、企業による小学校への出前授業を支援している地元の団体を通じて依頼を受けました。

―その循環型農業の仕組みについて、詳しく教えてもらえますか。

 安田: もともと私たちの会社では、家畜の飼料に使う「カルスポリン」という生菌剤を作っていました。これは家畜が食べるサプリメントのようなもので、動物たちの腸内に有用な菌を増やし、健康を維持する効果が期待できます。
 それを使ったお客様から「カルスポリン」が入ったエサを食べた動物の排泄物を使うと良質な堆肥ができるとお聴きしたのです。これはきっと菌の力だと考え、さまざまな菌を調べた結果、「枯草菌C-3102株」が最も効率よく発酵熱を生み出し、良質な堆肥を作ることがわかりました。その「枯草菌C-3102株」を含んだ堆肥化促進剤として商品化したのが「サーベリックス」です。
 ちょうどその研究をしていた頃、カット野菜の製造販売を手がける会社から「工場から大量に出る野菜くずを堆肥にし、それを使って自社商品用の野菜を栽培したい」と相談を受けました。そこで「サーベリックス」がお役に立てるのではないかと考えたのです。「枯草菌C-3102株」は、発酵により食品廃棄物の量を減らす率が他の菌より高く、ゴミ処理のコストを削減できます。また、「サーベリックス」を含む堆肥を使うと、野菜の収量が40%増えることも実証されています。よってカット野菜の製造メーカー様と野菜を作る農家の方たち双方にメリットがあり、「循環型農業」を実現するにはぴったりだと考えました。
 ただ、堆肥にするには専門の装置が必要です。そこで、堆肥化装置を製造販売する会社(株式会社メリーズ・ジャパン、楽しい株式会社)と協力して、この循環型農業システムをカット野菜の会社に導入しました。現在では、他の大手外食チェーンの工場でも活用して頂いています。
 こうした取り組みの中で、各地の学校給食センターでも堆肥化装置を設置して頂く機会が増えてきました。それが小学校への出前授業につながったのです。

堆肥化センターに設置されている
堆肥化装置

―授業では、どんなことを教えるのでしょう?

 安田: 「菌と食べ物のリサイクル」というテーマで、「自分たちが食べた給食の残りは、どのように処理されているんだろう?」「そこにはどんな問題があって、どうやって解決すればいいのだろう?」と子どもたちに考えてもらいます。給食という身近な問題から入れば、子どもは興味を持ちやすいからです。そこから「給食ごみを何かに利用できないかな?」「給食ごみを燃やして捨てると、何か問題はないかな?」と問いかけながら、「有害な煙が出たりエネルギーをたくさん使うと、地球にとって良くないかも」と気づくきっかけを提供して、最終的には社会や地球全体に関わる大きな課題に関心を持ってもらえるように工夫しました。

授業の様子

―子どもたちの反応はいかがでしたか。

 安田:思った以上に活発な意見が出て、楽しく進められました。顕微鏡で実際に菌を見てもらったのですが、「1gの堆肥に菌が100億個以上いるんだよ」と言ったら、びっくりしていましたね。堆肥の実物も見せたのですが、「全然においがしないんだね」「普通の土みたい」と口々に感想を言っていました。そこで「食べ物だったものが、どうして土みたいになるんだろう?」と疑問が湧くので、「菌が分解してくれるからだよ」と教える。こんなふうに、自分の目で確かめながらリサイクルの仕組みを理解してもらうようにしました。
 普段の生活では菌は目に見えませんが、実は私たちの身近なところで活躍しています。悪い菌は人や動物を病気にさせることもありますが、良い菌は薬になったり、エネルギーを作ったり、環境を良くしたりする。菌をうまく活用すれば、人にも環境にも良いことがたくさんあって、みんながハッピーになれることを子どもたちにぜひ伝えたい、そう考えました。
 授業後にアンケートを記入してもらったのですが、「菌が人の役に立つことを初めて知りました」「ジュースやお酒にも菌が使われていて驚きました」といった感想が書かれていたので、私の伝えたいことがちゃんと子どもたちに届いたのだと嬉しくなりました。

―企業が子どもたちの教育に関わる意義や価値を、どのように考えていますか。

 安田:授業で学んだことを教室の中だけで終わらせず、「勉強」と「社会」がつながっていることを具体的に教えられることが、企業の強みではないでしょうか。例えば菌が存在することは理科の授業で習っても、実際にどのようにして社会の役に立ち、人々の仕事につながっているかを子どもたちが知る機会は少ないはずです。
 それに弊社のように環境事業に取り組む企業があることを知れば、子どもたちが将来の進路を考えるヒントになるかもしれない。「働くなら環境にいいことをしている会社がいいよね」「自分も環境に関わる仕事がしたいな」などと考えるきっかけになればいいですね。
 私たちはメーカーですから、ものを製造して販売するのが仕事です。それが環境に良い商品なら、ビジネスをしながら同時に社会貢献もできる。それは素晴らしいことだと感じています。今後も地球環境に優しい商品を開発していくことが、企業としての使命だと思っています。

左:共に出前事業を実施している
楽しい株式会社 竹村 優さん
右:アサヒカルピスウェルネス社
安田 源太郎

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