東日本大震災復興プロジェクトからクラフトビールが誕生!

[サステナビリティ]

 2016年10月13日、アサヒグループのクラフトビール醸造所「隅田川ブルーイング」において、"仕込み式"が行われた。大きな仕込槽に投入されたのは、宮城県東松島市で栽培した大麦。アサヒグループが東北復興支援の取り組みとして続けている「希望の大麦プロジェクト」で2015年に収穫した大麦を使い、クラフトビールを醸造することになったのだ。完成したクラフトビールは「希望の大麦エール」と名付けられ、11月1日より首都圏や近畿、東北のアサヒグループの外食店舗15店で限定販売する(なくなり次第終了)。このビールを注文すると、1杯につき100円が東松島市の復興活動のために寄付される。

 「希望の大麦プロジェクト」は、震災の津波によって被災した土地を活用して大麦栽培を行うことで、地元に「なりわい」と「にぎわい」を取り戻すことを目的としている。(これまでの歩み)仕込み式には、アサヒグループと協働でプロジェクトに取り組む一般社団法人みらいとし機構(HOPE)の専務理事である大村道明氏や東松島市長の阿部秀保氏が出席。テレビ局や新聞各社の取材陣も大勢詰めかけて、東北の復興に多くの人が関心を寄せていることが伝わってきた。

―あの日から5年7ヶ月。東松島市長が語る被災地の"今"

 仕込み式にあたり、まずは阿部市長から東松島市の復興の状況について説明があった。

 「東日本大震災から、5年7ヶ月が経過しました。復興はまだ道半ばですが、私たちがここまで歩んで来られたのは、国内外から多くの方たちにご支援を頂いたおかげです。そのことに改めて感謝を申し上げます。東松島市では、震災で亡くなった方といまだ行方不明の方を合わせて1134人の尊い命が失われました。自宅を失われた方も3000世帯に上ります。ですから、生活や住宅の再建は最重要課題ですが、同時に重要なのが産業の再生です。東北であれば、農業や漁業の六次産業化を進めることが不可欠になります。この復興は、行政だけでは進められません。いかに産学官民が連携できるかが重要になると考えております」

 そして、「希望の大麦プロジェクト」への期待とアサヒグループとの連携についてこう話した。

 「高台への移転と住宅再建が進むと、あとには津波で浸水した土地が残ります。東松島市には、こうした跡地が約200haあります。では、この土地をどう活用するか。この大きな課題をアサヒグループさんとHOPEが議論し、被災した土地での大麦栽培というプロジェクトが始まりした。東松島市の外郭団体として設立したHOPEには、アサヒグループさんから社員を派遣して頂き、東松島市が目指す『環境未来都市構想』と『復興まちづくり計画』を推進する上で、大きな力になってくださっています。これまで支援して頂いた方たちに、『応援してよかったな』と思ってもらえるような復興を成し遂げることが、私たちから皆さんへの恩返しになると考えておりますので、これからも見守って頂ければ幸いです」

復興が進む東松島市(東松島市より提供)

 続いて、アサヒグループホールディングス取締役の加賀美昇より、アサヒグループが「東北復興応援『ともに未来あしたへ~2020~』」というテーマのもと、2020年まで継続して東日本大震災の復興支援に取り組む方針であることが改めて説明された。また、本日の仕込み式が行われる「隅田川ブルーイング」の醸造設備では、20年以上前からクラフトビール作りが行われていることも伝え、「私たちの持つ技術が復興に貢献できることは大変嬉しく、アサヒグループにとっても非常に大きな意義を感じている」と述べた。

 次に、HOPEの大村専務がマイクを握った。大村氏は東北大学大学院の助教授でもあり、農学者としての目線も交えてプロジェクトについて語った。

 「『希望の大麦プロジェクト』では、まず2014年から小さい面積で大麦の試験栽培を行いました。そもそも東松島市の土地で本当に大麦が育つのか、確認する必要があったからです。2015年からは、実際に津波被災した1.5haの土地を使い、より大きな面積で栽培を開始しました。ここは運動公園だった場所ですが、その地盤の上に他の場所から運んで来た土を敷いて、大麦を栽培したのです。これは従来の農業の常識では考えられない、相当にチャレンジングな栽培方法です。農作物の栽培にとって土壌は極めて大事な要素で、例えば稲であれば、さまざまな有機質を含んだ一定条件を満たす土がなければ育ちません。しかし結果的には、農業関係者も驚くほど出来のよい大麦を収穫することができました。」

―手塩にかけた東松島産大麦を投入し、"仕込み式"が完了

 また、ともにプロジェクトに取り組むアサヒグループに対しては、こんなメッセージを寄せた。

 「東日本大震災だけでなく、近年は日本各地で災害が頻発しています。災害発生直後は、がれきの撤去や住宅の片付けなど体を使ったボランティアが必要ですが、復興期に求められるのは"知恵"です。アサヒグループさんは、企業の中でもいち早くこの点に取り組まれてきました。今は被災地だけでなく、どの地方も少子高齢化と人口減少に直面しています。アサヒグループさんはこの東松島市の事例を始め、各地で支援活動を続けておられますから、そこで得た知恵の蓄積を生かし、今後も日本社会や地域の課題解決に取り組んでくださるものと期待しております」

 スピーチが終わると、いよいよ仕込み式が行われた。阿部市長と大村専務、加賀美取締役と「隅田川ブルーイング」を運営するアサヒフードクリエイト(株)社長の松井直樹が、東松島市で収穫した大麦をそれぞれ手にし、一人ずつ仕込み槽へ投入。プロジェクト開始から長い歩みを経て迎えた記念すべき瞬間に、阿部市長や大村専務も喜びの笑顔を見せた。

「希望の大麦」の麦芽を手にする関係者
(左から 一般社団法人東松島みらいとし機構 大村道明専務理事、宮城県東松島市 阿部 秀保市長、アサヒグループホールディングス(株)取締役 加賀美 昇、アサヒフードクリエイト(株)代表取締役社長 松井直樹)

 アサヒビールからHOPEへ派遣され、2015年から東松島市で「希望の大麦プロジェクト」に取り組んでいる宇野由希子は、「こうして東松島市の市長から、東京で地元の復興について語る機会を作れたのは素晴らしいことだと感じています。私も微力でも東松島市のお役に立てていれば嬉しく思います。東松島市で栽培した大麦は、本プロジェクトにご賛同頂いた宮城県の地ビール醸造所や県外の菓子製造業者の方による商品化が進んでいますが、これを地元農家の収入につながるビジネスとして確立させるのがプロジェクトの責務だと思っています」と話した。

 被災地から生まれた商品を買ったり食べたりすることも、立派な復興支援になる。ぜひ皆さんも、11月から販売される「希望の大麦エール」を飲んで、おいしくお酒を楽しみながら東北の地にエールを送ってはいかがだろうか。

宇野由希子 「希望の大麦」圃場にて

「希望の大麦エール」販売店一覧

「希望の大麦エール」販売店一覧

  • ・販売期間:11月1日(火)~ ※なくなり次第終了
  • ・販売価格:580~680円 ※店舗により異なる

 以上15店舗