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ニュースリリース

アサヒグループホールディングスのニュースリリース

ニュースリリース

2016年1月28日
アサヒグループホールディングス株式会社

アサヒグループの研究成果
血中アルコール濃度の低下作用に新たな発見
〜野菜・果物に含まれる主に食物繊維や増粘多糖類が血中アルコール濃度を低下させる〜


 アサヒグループホールディングス株式会社(本社東京、社長 泉谷直木)の「イノベーション研究所」は、野菜や果物に含まれる主に食物繊維(水不溶性成分)や、食品のとろみ等に使用されるキサンタンガムなどの増粘多糖類にアルコールを保持する性質があることを解明し、それによりアルコールの吸収が穏やかになることで血中アルコール濃度を低下させることが明らかになりました。
 この研究内容について2016年1月22日・23日開催の第35回アルコール医学生物学研究会学術集会にて発表しました。

①研究の背景

 アサヒグループでは、適正飲酒推進に向けた取り組みの基本方針として、酒文化の健全な発展を目指すとともに、アルコール飲料の特性を認識し、適正飲酒の推進に組織的かつ継続的に取り組むことにより社会的責任を果たし、人々の健康で豊かな社会の実現に努力して取り組んでいます。イノベーション研究所では、その中の行動指針の一つとして「アルコールと健康」に関する医学的研究の推進に取り組んでいます。そして、これまでに“食べながら飲むと酔いがまわりにくい”ことを飲酒試験により立証したことなどを発表しています。

②研究概要

【研究Ⅰ】 本研究は実験動物(ラット)を用いて行ないました。ラットにアルコールを経口投与すると、ヒトと同じく、その量に依存して酩酊が生じて動けなくなり、自発運動量が低下します。
自発運動量とは、ラットが赤外線モニターを設置した飼育ケージの中で、自発的に動き回る行動量を数値化したものです。通常、ラットは餌等を求めて探索的に行動しますが、アルコールを投与すると酩酊状態になって動けなくなるため自発運動量の数値が低下します。(図1)
図1.アルコール投与量別のラット自発運動量の経時変化(左図)および15時間後の自発運動量(右図) ※0時間〜12時間は暗期、12時間〜15時間は明期として計測。ラットは夜行性のため明期では運動量は低下します。

 次にアルコールによる酩酊状態(自発運動量の低下)を抑制するような食品素材を60種類以上の市販素材・成分(タンパク質、炭水化物、野菜・果物類、食品機能性素材等)から探索した結果、トマトに強い抑制作用のあることが分かりました。そこで、トマトのどのような成分に効果があるのかを調べるため、トマトジュースを遠心処理によって水溶性成分と不溶性成分に分けてそれぞれラットに投与しました。その結果、水溶性成分ではなく、主に不溶性の食物繊維が含まれた成分の方に強い抑制効果が見られました。(図2)

図2.アルコール(4.0g/kg体重)投与15時間後におけるラット自発運動量

 次にラットにトマトジュースの水溶性成分と不溶性成分を投与し、その30分後にアルコールを投与しました。その2時間後に血液と胃を全摘出して血中アルコール濃度と胃内アルコール残存量を調べたところ、不溶性成分を投与したラットは血中アルコール濃度が顕著に低下しており、且つ、投与したアルコールの約52%が胃内に残存していました。一方、水溶性成分を投与したラットでは対照(水を投与)と同じアルコール濃度および残存量でした(図3)。これより、トマトの不溶性成分は、胃の中にアルコールを長く留めてアルコールが小腸から吸収されるスピードを抑え、血中アルコール濃度を低下させていると考えられます。

図3.アルコール(4.0g/kg体重)投与した2時間後のラット血中アルコール濃度ならびに胃内アルコール残存率
【研究Ⅱ】 トマトの不溶性成分がアルコールを胃の中に長く留める理由を調査するため、アルコール水溶液中に各野菜・果物(一部穀類・豆類含む)の不溶性成分を加えて撹拌した後、ろ過を行ないました。その結果、トマト不溶性成分を加えたアルコール水溶液はろ過液の落ちるスピードが顕著に遅く、アルコール水溶液を保持する効果が強いことが分かりました。また、トマト以外でもマンゴー等に強い効果が認められました(図4)。
図4.各野菜・果物の不溶性成分を含む15%アルコール水溶液のろ過液量(5分後測定) 各素材の不溶性成分が0.5%になるように15%アルコール水溶液を均一に混ぜてろ過。トマト不溶性成分はアルコール水溶液を吸い込んで保持し、ろ過液がほとんど落ちてきませんでした。
【研究Ⅲ】 ラットにこれらの不溶性成分とアルコールを投与して4時間後の血中アルコール濃度を測定し、研究Uで調べた、ろ過液量との相関を調べてみました。すると、両者には強い相関が認められ、ろ過液量が少ない、すなわちアルコールを保持する効果が強い素材ほど血中アルコール濃度が低いことが分かりました(図5)。各野菜・果物類の不溶性成分の血中アルコール濃度低下作用は、そのアルコール保持能に依存していると考えられ、特にトマト、マンゴー等に強い効果が認められました。
図5.各素材による15%アルコール水溶液のろ過液量(5分後測定)と4.0g/kgアルコール投与4時間後のラットの血中アルコール濃度の相関
【研究Ⅳ】 本研究で明らかとなった野菜・果物の不溶性成分の効果は食物繊維によるものと考えられることから、市販の各種食物繊維・増粘多糖類にも同様の効果があるのか調べてみた結果、増粘多糖類の一つであるキサンタンガムやジェランガムに強いアルコール保持能ならびに血中アルコール濃度低下作用のあることが分かりました。難消化性デキストリンやポリデキストロース等には効果は見られませんでした(図6)。
図6.市販食物繊維・増粘多糖類素材による15%アルコール水溶液のろ過量(上図)ならびに4.0g/kgアルコール投与4時間後のラット血中アルコール濃度(下図) 各素材が0.01%になるように15%アルコール水溶液を均一に混ぜてろ過すると、幾つかの増粘多糖類に保持能が認められました。また、これらの素材を0.7%含む液をラットに投与すると、アルコール保持能の強かったキサンタンガムとジェランガムに血中アルコール濃度の低下が見られました。このように、様々な加工食品や健康食品に利用されている増粘多糖類の中にもトマトやマンゴーの不溶性成分と同様の効果を示すものがあることが分かりました。

③結論

 野菜・果物に含まれる不溶性成分(主として食物繊維)や増粘多糖類といった非(あるいは低)カロリー性の成分が、胃内でアルコールを保持することでアルコールの吸収を抑え、血中アルコール濃度を低下することを明らかにしました。その中でも特に効果が強い野菜・果物素材としてはトマトやマンゴー、また増粘多糖類としてキサンタンガムが挙げられます。飲酒時に食物を一緒に摂ることで血中アルコール濃度が低下することは以前から良く知られていましたが、今回の研究で、これまで世の中に全く知られていなかった、食物繊維(増粘多糖類含む)のアルコールに対する有益な効果が初めて明らかになりました。
 飲酒時に繊維質の多い野菜・果物を摂取することでアルコールの吸収が穏やかになり、血中のアルコール濃度が急激に上昇するのを抑えることで身体への負担が和らぐことが期待されることから、適正飲酒を心掛けた飲酒習慣の推進に取り組む企業として、野菜・果物の積極的な摂取を推奨します。

④今後の展望

 アサヒグループは、今後も「食」を通じてお客様の生涯にわたる健康的な生活に貢献することを目指し、食とアルコールについての研究を継続して参ります。