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ニュースリリース

アサヒグループホールディングスのニュースリリース

ニュースリリース

2016年4月18日
アサヒグループホールディングス株式会社

ビール酵母細胞壁が植物の成長や
免疫力を向上させるメカニズムを解明

アサヒグループによる環境保全型農業支援に向けた取り組み
日本農芸化学会2016年度大会にて発表


 アサヒグループホールディングス株式会社(本社 東京、社長 小路 明善)は、独自技術*1により開発したビール酵母細胞壁*2を用いた農業資材が、イネの根張りや免疫力を向上させる効果*3について、メカニズムの一部を解明し、この研究結果を日本農芸化学会2016年度大会(3月27〜30日/札幌)にて発表しました。
 本研究成果を含むビール酵母細胞壁を用いた農業資材開発の取り組みは、農薬や化学肥料の使用回数の低減や安定した農作物の生産などを通して、地球温暖化防止や循環型社会の実現に貢献する取り組みとして評価され、「第25回地球環境大賞」」(主催:フジサンケイグループ 後援:経済産業省、環境省、文部科学省、国土交通省、農林水産省、一般社団法人 日本経済団体連合会)にて「農林水産大臣賞」を受賞しています。

【研究背景・目的】

 世界の人口は2050年までに90億人を突破し、現在の1.5倍の食糧が必要になると予想されています。また、バイオ燃料の発展や異常気象などの影響により、今後、ますます人類の食糧確保が重要になっていくと考えられます。
 アサヒグループでは、『世界の人々の健康で豊かな社会の実現に貢献する』ことを経営理念に掲げており、ビール醸造副産物である「ビール酵母」を活用した農業資材開発を2004年より進めています。これにより、農産物収量の増加や、低農薬など人や環境への影響が少ない農業への貢献、および地球温暖化防止への貢献を目指しています。

【研究結果・考察】

 ビール酵母細胞壁は、植物の根において、成長促進因子(オーキシン*4)の合成を活性化するとともに、成長抑制因子(サイトカイニン*5)の合成を抑制することにより、根の成長を促すことがわかりました。また、ビール酵母細胞壁が、植物の免疫に関わる物質(アゼライン酸)の合成を活性化し、植物の免疫力を高めることがわかりました。ビール酵母細胞壁には、植物の病原菌と類似の成分が含まれていることから、根や葉に付着することで、植物が病気に感染したと勘違いして、このような反応が起きると考えられます。


【試験方法・結果】

(1)イネの根をビール酵母細胞壁溶液に浸し、7日間栽培しました。その後、根の重量(乾燥)を測定したところ、通常栽培したイネと比較して、有意に増加していることがわかりました(図1,2)。
また、植物中の成長促進因子(オーキシン)のおよび成長抑制因子(サイトカイニン)の濃度を部位別に測定したところ、それぞれ、増加・減少しており、根の成長を促すように作用していることがわかりました(図3,4)。

(2)シロイヌナズナの葉にビール酵母細胞壁溶液を5日間、1日おきに3回散布しました。その後、植物の免疫力に関わる各種物質の濃度を測定したところ、通常栽培したシロイヌナズナと比較して、植物の免疫力における主要な関与物質の一つとされているアゼライン酸が増加していることがわかりました(図5)。

【考察・まとめ】

 今回、ビール酵母細胞壁が、オーキシンやアゼライン酸など植物の成長や病気への耐性に関与する成分の生合成に影響を与えることがわかりました。病気への耐性を向上させる反応は、ビール酵母細胞壁に含まれる成分が植物の病原菌がもつ成分と類似しているため、その成分に触れたときに植物が病気に感染したと勘違いするためと考えられます。
 本研究からメカニズムが明らかになった、ビール酵母細胞壁による植物の根の成長促進効果は、気象や土壌などの悪環境下での安定した農作物の生産を可能にすることが期待されます。また、植物に備わる免疫力を向上させることで、化学農薬の使用回数を削減し、安心安全かつ持続可能な農作物の生産が期待されます。今後、ビール酵母細胞壁を用いた農業資材を、日本のみならず東南アジアをはじめとした世界規模での展開を目指し、推進してまいります。

【学会発表の概要】

2016年3月27〜30日に開催された「日本農芸化学会2016年度大会(札幌)」にて、以下3件の発表を行いました。

■ビール酵母由来の多糖によるシキミ酸経路の代謝変化と、イネにおける根の生育促進効果との関連性
<共同研究者>京都大学大学院農学研究科応用生命科学専攻、東果大阪株式会社

■ビール酵母由来の細胞壁成分によるイネの根張り向上効果と植物ホルモン応答性遺伝子の挙動
<共同研究者>京都大学大学院農学研究科応用生命科学専攻、東果大阪株式会社

■酵母細胞壁が誘導する植物の病害応答機構の生物有機化学的研究
<共同研究者>北海道大学大学院農学研究院

【共同研究者からのコメント】

京都大学大学院農学研究科
応用生命科学専攻
教授
森 直樹 氏

ビール酵母細胞壁資材の処理により、根部のオーキシン量の増加のほか、サイトカイニン量の減少という、成長促進に関わる複数の挙動が明らかになっており、これらが側根の成長を促進させるメカニズムと考えています。そのほかにも、植物に対して様々な生理活性を示す可能性が示唆されています。世界の農業が抱えている様々な問題を解決し得る、非常に潜在能力の高い資材であると期待できます。

北海道大学大学院農学研究院
教授
松浦 英幸 氏

本研究は、ビール製造の副産物として得られるバイオマスを積極的かつ有効的に利用する新技術として注目に値します。特に、農業への応用が見込まれる点に優位性があり、今後の世界規模の技術展開が期待されます。

<参考資料>

■アサヒグループホールディングスの農業資材開発の歴史
 ビールの製造工程で、ビール酵母は麦汁の成分をもとにビール特有の複雑な味や香りを作り出します。ビール酵母は製造の最終工程で取り除かれますが、アサヒグループでは、この副産物として得られるビール酵母の高い栄養価に早くから着目し、胃腸・栄養補給薬「エビオス錠」(指定医薬部外品)や、調味料の原料である「酵母エキス」、家畜の飼料など、人々の健康や豊かな食生活に貢献する商品として活用してきました。
その後、ビール酵母細胞壁がもつ植物の免疫力を引き上げる力に着目し、2004年、JA長野八ヶ岳川上支所の協力の元、試験栽培を開始しました。細胞壁成分の植物への吸収性を向上させる技術を開発し、2005年、植物活性資材「豊作物語」をアサヒフードヘルスケア鰍謔阡ュ売、JA全農長野の「推奨資材」として認定されました。その後、さらに改良を重ね、新たなビール酵母細胞壁資材の開発に取り組んでいます。

■地球環境大賞について
 「地球環境大賞」は、1992年、「産業の発展と地球環境との共生」を目指し、公益財団法人世界自然保護基金(WWF)ジャパンの特別協力を得て創設され、環境保全に貢献する企業、団体等を対象とする顕彰制度です。本制度は地球温暖化防止や循環型社会の実現に寄与する新技術・新製品の開発、環境保全活動・事業の促進や、21世紀の社会システムの探求、地球環境に対する保全意識の一段の向上を目的とし、フジサンケイグループが主催、経済産業省、環境省、文部科学省、国土交通省、農林水産省、一般社団法人日本経済団体連合会が後援しています。第25回授賞式は2016年4月18日(月)東京・元赤坂の明治記念館にて執り行われました。

<用語解説>
*1 ビール酵母細胞壁を酵素分解、あるいは高温高圧処理技術を用いることで低分子化処理することを実現し、植物に吸収しやすい農業資材を開発しました。(特許4931388、特許5555818、特許5715044)
*2 ビール酵母細胞壁:ビール醸造後、ろ過した酵母から細胞壁成分を抽出し、さらに独自技術により可溶化したものです。
*3 植物の免疫力:植物には病害虫や細菌の感染から防御する仕組みが備わっています。
*4 オーキシン:植物の成長を促す植物ホルモンの一つです。
*5 サイトカイニン:植物の成長を抑制する植物ホルモンの一つです。