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ニュースリリース

アサヒグループホールディングスのニュースリリース

ニュースリリース

2016年10月28日
アサヒグループホールディングス株式会社

健康で豊かな社会実現を目指すアサヒグループの乳酸菌研究
発酵乳由来成分「ラクトノナデカペプチド」※1
中高齢者の認知機能が改善する可能性を確認
〜疾病モデルマウスを用いた試験でアルツハイマー型認知症予防の可能性も示唆〜

アサヒグループホールディングス株式会社(本社 東京、社長 小路明善)コアテクノロジー研究所は、発酵乳由来成分「ラクトノナデカペプチド」を含む発酵乳の摂取により、物忘れを自覚する中高齢者の認知機能が改善する可能性を確認しました。さらに、疾病モデルマウスを用いた実験で「ラクトノナデカペプチド」の摂取により、アルツハイマー型認知症を予防する可能性があることを確認しました。本研究成果を第6回日本認知症予防学会学術集会(2016年9月23日〜25日、仙台)にて発表しました。

【研究背景】

少子高齢化が加速的に進む日本では、高齢者がいつまでも健康で社会に参加できる「健康寿命」※2への関心が高まっています。健康寿命の延伸を阻む主要な要因のひとつとして認知症が挙げられますが、日本では、2025年までに65歳以上の約5人に1人が認知症患者となると予測されています(出典:厚生労働省「認知症施策推進戦略(新オレンジプラン)」)。しかし、認知症の根本的な治療方法はまだ確立されておらず、その予防に主眼を置いた対策が急がれています。
 アサヒグループでは、旧カルピス社から続く長年にわたる発酵乳の機能性研究の中で、当社独自の発酵乳がマウスの記憶力改善に役立つことを確認しました。さらに、発酵の過程で乳酸菌が作り出すある種のペプチドがその関与成分であることを明らかにし、それを「ラクトノナデカペプチド」と名付けました。今回、この「ラクトノナデカペプチド」のヒトへの有効性の検証と、マウスを用いてアルツハイマー型認知症予防の可能性の検証を行いました。

【研究成果の概要】
1.「ラクトノナデカペプチド」を含む発酵乳の継続摂取により、物忘れを自覚する中高齢者の認知機能が改善することを確認しました。 2.アルツハイマー型認知症モデルマウスにおいて、「ラクトノナデカペプチド」の継続摂取により、記憶障害が予防され、そのメカニズムとしてBDNF※3量の増加が関係している可能性を確認しました。

【まとめ】

「ラクトノナデカペプチド」に関するこれまでの知見※4と本結果より、「ラクトノナデカペプチド」を継続して摂取することで、ヒトの認知機能が改善する可能性が示されました。また、疾病モデルマウスを用いた実験からアルツハイマー型認知症を予防する可能性が示されるとともに、そのメカニズムの一端が明らかとなりました。アサヒグループでは、本研究成果の食品分野での活用を目指し、健康寿命延伸に貢献していきたいと考えています。

【研究の詳細】
1.「ラクトノナデカペプチド」を含む発酵乳の継続摂取により、物忘れを自覚する中高齢者の認知機能が改善を確認しました。 <試験内容>

物忘れを自覚する50〜70歳の健康な中高齢者男女計60名を2グループに分け、一方のグループには「ラクトノナデカペプチド」を含む乳酸菌発酵乳飲料(2.4mg配合)を、もう一方のグループには含まない乳飲料(プラセボ)を、それぞれ8週間飲んでもらいました。飲用前と8週間飲用後の認知機能をアーバンス神経心理テスト※5を用いて評価しました。

図1 中高齢者の認知機能に与える影響 <結果>
 「ラクトノナデカペプチド」を含む発酵乳飲料を摂取したグループでは、飲用前と比較して、飲用後に、認知機能の総合評価、集中力、短期記憶において、有意な改善が認められました。プラセボを摂取したグループでは、改善は認められませんでした。

2.アルツハイマー型認知症モデルマウスにおいて、「ラクトノナデカペプチド」の継続摂取により、記憶障害の発症が予防され、そのメカニズムとしてBDNF量の増加が関係している可能性を確認しました。


試験方法<試験内容>
 正常なマウスに「ラクトノナデカペプチド」(0.1mg/kg)または水を15日間経口投与しました。投与を開始して8日目にアルツハイマー型認知症の原因物質と考えられるアミロイドβを投与しました。15日間の投与終了後、マウスの記憶力をY字迷路試験※6を用いて評価しました。また、脳海馬内のBDNF遺伝子の発現量を調べました。

<結果>

 「ラクトノナデカペプチド」の継続摂取により記憶障害が有意に抑制されました。このことから、「ラクトノナデカペプチド」にはアルツハイマー型認知症を予防するはたらきがある可能性が示されました。また、脳海馬内のBDNF遺伝子の発現量が増えていることが分かりました。

図2 記憶力に与える影響 図3 BDNF遺伝子発現量に与える影響

<有識者のコメント>


横越 英彦 氏の写真 中部大学 応用生物学部教授
横越 英彦 氏

 脳の記憶や認知の仕組みは非常に複雑なため、認知症の発症や進行について多くは解明されていません。そのため、予防という観点での対策も必要です。
 今回の研究は、日常で摂取できる食品を用いたヒトの集中力・記憶力の改善を示しており、画期的な研究成果であるといえます。また、アルツハイマー型認知症モデルマウスを用いた試験では、記憶障害予防の可能性が示されており、今後の研究を期待しております。

【用語説明】
※1 「ラクトノナデカペプチド」
  アミノ酸が数個つながった状態のものをペプチドといいます。「ラクトノナデカペプチド」は、アサヒグループ独自の発酵乳の中から見つかったアミノ酸が19個つながったペプチドです。
※2 健康寿命
 2000年にWHO(世界保健機関)が提唱した概念で、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間のことをいいます。
※3 BDNF(脳内神経栄養因子)
 脳神経の新生・成長・維持や記憶の形成に関与するタンパク質で、アルツハイマー型認知症における脳の委縮を抑制する可能性が考えられています。
※4 発酵乳から見つかったペプチド(「ラクトノナデカペプチド」)に記憶力を向上させる作用があることを、マウスを用いた試験で確認しております。 (http://www.asahicalpis-w.co.jp/company/press/2015/201210_02/ ※5 アーバンス神経心理テスト
 高次脳機能障害等を短時間で簡便に評価できる神経心理テストで、認知症の診断等に用いられます。即時記憶、空間認知、言語、集中力、短期記憶の5つの認知領域について検査できます。加齢に伴って、即時記憶、集中力、短期記憶が著しく低下することが報告されています。

Y字迷路 ※6 Y字迷路試験
 マウスには、探索行動をとるという性質があります。そのため、Y字迷路を歩かせる と、直前に選択したルートを記憶していた場合、直前とは異なるルートを選択します。この性質を利用して、短期記憶を評価する試験方法で、マウスの記憶力を評価する方法のひとつとして一般的に用いられています。