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ニュースリリース

アサヒグループホールディングスのニュースリリース

ニュースリリース

2016年11月9日
アサヒグループホールディングス株式会社

乳酸菌が小腸のM細胞から取り込まれ免疫細胞に
渡されることを世界で初めて実証
そのメカニズムの一つとして菌体成分「SlpA」が関与
していることを発見
〜乳酸菌の機能性研究の発展や、免疫領域における薬の開発への活用の可能性も〜

近年、乳酸菌が人の免疫にはたらきかけ、風邪などの感染症の予防やアレルギーの改善に役立つことが明らかになってきています。しかし、“乳酸菌と免疫”の関係は、未だに謎が多く、乳酸菌が生体内にどのように取り込まれ、免疫細胞にアプローチするのかについても解明されていません。今回、アサヒグループホールディングス株式会社(本社 東京、社長 小路明善)コアテクノロジー研究所*1は、国立研究開発法人理化学研究所 粘膜システム研究グループとの共同研究により、“乳酸菌と免疫”に関する新たな知見を得ることに成功しました。この研究成果を、日本乳酸菌学会2016年度大会(2016年7月9日〜10日、東京)で発表し、優秀発表賞を受賞しました。(※2016年7月時点当社調べ)

【研究成果】

当社保有の乳酸菌「ラクトバチルス・アシドフィルスL−92株」*2(以下、「L-92株」)を用いた実験により、以下のことを実証・発見しました。

1.乳酸菌が小腸の表面にあるM細胞*3から取り込まれて免疫細胞に渡されることを世界で初めて実証(図1)

2.乳酸菌の表面タンパク質の一つである「SlpA*4」が、M細胞からの取り込みの促進に関与することを発見

【まとめ】

今回、“乳酸菌と免疫”との関わりを解明する上で重要な「小腸における乳酸菌の取り込みのメカニズム」について、新たな知見が得られました。本成果は、乳酸菌と免疫との関わりにおいてより優れた乳酸菌を選抜する方法の一つとして役立つと考えています。また、薬を運ぶキャリアとして「SlpA」を利用することで、効率的に免疫細胞に働きかける新薬の開発につながるなど、幅広い研究領域への応用が期待されます。さらに、これまでの研究で、殺菌した乳酸菌(死菌)でも、「SlpA」が保持されていることがわかっており、本メカニズムを介して免疫にはたらきかける乳酸菌は、生菌・死菌に関わらずその機能を発揮する可能性があることも示されました。当社では今後も、乳酸菌を通じて健康に貢献する研究を積極的に進めてまいります。

【研究概要】

“乳酸菌と免疫”の関わりを調べる上で、菌体が体内に取り込まれる過程で最も重要な場所の一つといわれる小腸内の表面にあるM細胞に着目し、乳酸菌が体内に取り込まれる仕組みを、当社が保有する乳酸菌「L-92株」を用いて調べました。

【研究成果の詳細】
1.乳酸菌が小腸の表面にあるM細胞から取り込まれて免疫細胞に渡されることを世界で初めて実証

口から摂取した、あるいは腸内にいる乳酸菌が、免疫細胞に働きかけるメカニズムの一つとして、「小腸の表面にあるM細胞から取り込まれ」、免疫細胞に渡されることが仮説としては提唱されていましたが、これまで実証されていませんでした。今回、免疫に働きかけることを特徴とする当社保有の「L-92株」を用いて実験を行い、乳酸菌がM細胞から取り込まれて免疫細胞に渡されることを視覚的に実証しました。

2.乳酸菌の表面タンパク質の一つである「SlpA」が、M細胞からの取り込みの促進に関与することを発見

これまでの研究から、「L-92株」は菌体表面に「SlpA」と呼ばれるタンパク質をもっていることが明らかになっています*5。「SlpA」をもっている「L-92株」と、「SlpA」をほとんどもたない乳酸菌でM細胞からの取り込まれやすさを比較したところ、「L-92株」の方が、M細胞から多く取り込まれる傾向があることがわかりました(図3)。このことから、「SlpA」が乳酸菌のM細胞からの取り込みの促進に関与にしていることがわかりました。

【用語説明】
  • *1 コアテクノロジー研究所:2016年1月よりアサヒグループの既存研究所に、旧カルピス株式会社発酵応用研究所が加わり、乳酸菌、腸内フローラ、酵母の研究領域を柱とするコアテクノロジ―研究所を2016年4月に発足しました。
  • *2 「ラクトバチルス・アシドフィルスL−92株」:インフルエンザの感染予防や花粉症、アトピー性皮膚炎などのアレルギーの症状の改善など免疫にかかわる機能をもつことを特徴とする乳酸菌です。
    関連情報はこちらhttp://asahigroup-holdings.com/research/region/lab/l92_hlt01.html
  • *3 M細胞(Microfold cell):小腸には消化吸収の他に、高度な免疫機能が備わっています。M細胞は、小腸内側の表面に点在する細胞で、M細胞を隔てて腸壁内には多くの免疫細胞が集まっています。病原菌などを管腔側から免疫細胞が集まる側へと取り込む入り口として知られていますが、これまで、乳酸菌の取り込みにおいて、M細胞が関与しているかどうかは、明らかにされていませんでした。
  • *4 SlpA:乳酸菌の菌体表面を構成するタンパク質の一つです。乳酸菌の種類によってその量は異なります。
  • *5 関連論文:Journal of Bioscience and Bioengineering Vol.119, No.5, 521-525, 2015