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ニュースリリース

アサヒグループホールディングスのニュースリリース

ニュースリリース

2017年2月27日
アサヒグループホールディングス株式会社

ビール醸造副産物「ビール酵母細胞壁」の有効活用による
新規事業会社を設立し、持続可能な社会への貢献を目指す!
〜アサヒグループ中期経営方針〜
「サステナビリティの向上を目指したESGへの取り組み強化」に向けて

アサヒグループホールディングス株式会社(本社 東京、社長 小路 明善)は、ビール醸造の副産物である酵母細胞壁を有効活用し、環境保全型農業の構築、温室効果ガス排出削減などの環境・社会的課題の解決を通じ、持続可能な社会の実現に貢献することを目指し、新規事業会社「アサヒバイオサイクル株式会社」を設立します。

アサヒグループは「中期経営方針」で掲げる3つの重点課題の一つとして、「サステナビリティの向上を目指したESGへの取り組み強化」を掲げています。ESGへの取り組みに関しては「アサヒグループCSR基本方針」に基づき、テーマを「社会的価値の創造」、「社会からの期待への対応」、「企業としての土台」の3つの要素に分類して整理しています。具体的には、本事業のほかに、健康価値を提供する商品の開発、新規技術の導入によるCO2排出量削減などに取り組んでまいります。

【ビール酵母細胞壁の研究背景】

世界の人口は2050年までに90億人を突破し、現在の1.5倍の食糧が必要になると予想されています。また、バイオ燃料の発展や異常気象などの影響により、今後、ますます人類の食糧確保が重要になっていくと考えられます。アサヒグループでは、「世界の人々の健康で豊かな社会の実現に貢献する」ことを経営理念に掲げており、アサヒグループでは、ビール醸造工程で取り除かれるビール酵母の高い栄養価に早くから着目し、胃腸・栄養補給薬「エビオス錠」(指定医薬部外品)や、調味料の原料である「酵母エキス」、家畜の飼料など、人々の健康や豊かな食生活に貢献する商品として活用してきました。

その後、「ビール酵母」の細胞壁がもつ植物の免疫力を引き上げる力に着目し、食品由来の安全・安心な資材の開発を2004年より進めてきました。開発した資材は、農産物収量の増加や品質の向上、およびゴルフ場や公園施設等の芝の品質の向上を実現できるものであり、これまでの農業や芝管理に携わる方々と連携して取り組むことで新たな技術革新になると考えています。本資材を用いた技術革新により水田転作地や耕作放棄地を活用し、地域振興を含めた新たな取組を目指していきます。芝管理では食品由来の資材を使用することで施設を管理する方のみならず、施設を利用する全ての人々への安全・安心に貢献できると考えています。

また研究成果として既に水稲収穫量当たりのCO2排出量を約29%削減する効果がわかっており、2015年に国際LCA学会で発表しています。地球温暖化防止へ貢献することが大いに期待できると考えています。

今後、アサヒバイオサイクル株式会社は、「ビール酵母細胞壁を用いた農業資材」の展開を通じ、日本のみならず東南アジアをはじめとした世界規模での持続可能な社会への貢献を目指していきます。

アサヒグループは、「アサヒらしい取り組み」を通じ「中期経営方針」の重点課題の一つ「サステナビリティの向上を目指したESGへの取り組み強化」を実現させていきます。

1.新会社概要

社名 アサヒバイオサイクル株式会社
事業内容 1.肥料の製造・販売
2.微生物利用製品、生物化学利用製品の製造販売
設立 2017年3月1日
事業開始 2017年4月1日
2.酵母を活用した資材の製造から販売まで
3.ビール酵母細胞壁を用いた農業資材製造方法

ビール酵母を酵素分解や高温高圧で処理し、植物が吸収しやすいように低分子化し製造。 製造法については特許取得済(特許4931388、特許5555818、特許5715044)

参考情報

【酵母細胞壁に関する研究結果】
発根促進効果について

ビール酵母細胞壁は、植物の根において、成長促進因子(オーキシン*1)の合成を活性化するとともに、成長抑制因子(サイトカイニン*2)の合成を抑制することにより、根の成長を促すことがわかりました。また、ビール酵母細胞壁が、植物の免疫に関わる物質(アゼライン酸)の合成を活性化し、植物の免疫力を高めることがわかりました。ビール酵母細胞壁には、植物の病原菌と類似の成分が含まれていることから、根や葉に付着することで、植物が病気に感染したと勘違いして、このような反応が起きると考えられます。

【試験方法・結果】

(1) イネの根をビール酵母細胞壁溶液に浸し、7日間栽培しました。その後、根の重量(乾燥)を測定したところ、通常栽培したイネと比較して、有意に増加していることがわかりました(図1,2)。
また、植物中の成長促進因子(オーキシン)のおよび成長抑制因子(サイトカイニン)の濃度を部位別に測定したところ、それぞれ、増加・減少しており、根の成長を促すように作用していることがわかりました(図3,4)。

試験方法(2) シロイヌナズナの葉にビール酵母細胞壁溶液を5日間、1日おきに3回散布しました。その後、植物の免疫力に関わる各種物質の濃度を測定したところ、通常栽培したシロイヌナズナと比較して、植物の免疫力における主要な関与物質の一つとされているアゼライン酸が増加していることがわかりました(図5)。

【考察・まとめ】

今回、ビール酵母細胞壁が、オーキシンやアゼライン酸など植物の成長や病気への耐性に関与する成分の生合成に影響を与えることがわかりました。病気への耐性を向上させる反応は、ビール酵母細胞壁に含まれる成分が植物の病原菌がもつ成分と類似しているため、その成分に触れたときに植物が病気に感染したと勘違いするためと考えられます。

<用語解説>
*1 オーキシン:植物の成長を促す植物ホルモンの一つです。
*2 サイトカイニン:植物の成長を抑制する植物ホルモンの一つです。
温室効果ガスの排出削減等への貢献

アサヒグループホールディングス株式会社では、これまでもビール醸造から発生する酵母の細胞壁を応用した農業資材(肥料)を開発し、これが作物の生産を飛躍的に向上することを確認してきました。しかし副産物をもとに製造された肥料は、作物の生産性向上に加え、GHG(温室効果ガス)の排出削減等への貢献も期待されるものの、これまで十分な検討が行われてきませんでした。そこで、アサヒグループホールディングス株式会社と農研機構中央農業研究センターは、上述の農業資材を利用することが、農業の生産性向上とライフサイクルでの温室効果ガス排出量削減にどの程度の貢献をするかを明らかにするため、LCA(ライフサイクルアセスメント)をベースとした評価の枠組みを新たに開発し、本農業資材を用いた稲作の総合的な評価を行う事としました。

【アサヒグループのLCA】
【試験結果】

新たに開発した農業資材を用いた稲作は、従来の方法と比べ、収穫量あたりの温室効果ガス排出量が大きく減少すると計算されました。これは、単位面積あたりで比較した場合に、新たな稲作では収穫量が大幅に増えるにもかかわらず(対照の施肥に比べると17〜37%の増収)、温室効果ガスの排出量はわずかな増加にとどまるためです。またこのことは、新たな農業資材を利用するために少額の追加的コストを支払うことにより、相対的に大きな成果が得られることを示しています。本農業資材は、稲作が中心である東アジア・東南アジアにおいて、食糧の増産、持続可能性の向上に大きく貢献できる可能性を秘めていると考えられます。

今後、この新たに開発した農業資材を用いたフィールド試験での詳細な解析、及び、他の作物での効果の検証を進め、持続可能な様々な農業生産システムを提案し、世界的な食糧問題の解決、及び持続可能な社会の実現のために貢献して参ります。

【収穫量当たりのCO2排出量】