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高バイオマス量サトウキビを用いたバイオマスエタノール製造の実証研究

九州沖縄農業研究センターとサトウキビを原料としたバイオマスエタノール製造普及に向けた共同研究に関して、平成18年1月より沖縄県伊江島で高バイオマス量サトウキビ栽培・収穫からバイオマスエタノールの製造、そしてガソリンに3%混合したE3ガソリンを自動車用燃料として実際に使用するまでの工程全般を通じた実証実験を開始いたします。

 技術開発研究所と九州沖縄農業研究センターでは、通常のサトウキビよりもバイオマス収量が格段に高い、高バイオマス量サトウキビを原料として、通常の単位面積あたりの砂糖生産量は維持したうえで、残存分からエタノールを高効率で製造することで、単位面積あたりのバイオマス活用度の最大化を図り、国産サトウキビを使って経済性を満たすバイオマスエタノール製造モデルの開発研究を進めています。

 これまで両者では、高バイオマス量サトウキビの開発、そのサトウキビを原料としたベンチプラントレベルでのエタノール製造研究を行ってきました。 平成16年より開始したベンチプラントでの試験により、最適な発酵・蒸留等の要素技術の開発やプロセス実証の知見が得られたため、今回、第2段階として、サトウキビ栽培から最終的なE3ガソリンとしての利用まで一貫した実証研究をスタートさせることにしたものです。

 実証試験を行う、沖縄県・伊江島は、沖縄本島北部の西方に位置し、周囲22.4キロメートルの離島です。サトウキビや葉タバコ、畜産などの農業が基幹産業です。一島一村で、村の人口は約5,300人となっています。

 今回両者は、伊江村、JAおきなわ伊江支店等を実施主体とする「伊江島バイオマスアイランド構想」の一環として、実証研究を行います。「伊江島バイオマスアイランド構想」は、高バイオマス量サトウキビ栽培とそれを原料とする砂糖及びエタノール製造を中心に、畜産や葉タバコ栽培など伊江村の主要産業である農業と関連させながら、バイオマス資源が島内で有機的に循環する、持続的に発展可能な地域モデルを実現させようというものです。

 両者は、伊江村など地域の協力を得て、高バイオマス量サトウキビ等を作付面積約50アールで試験栽培し、高バイオマス量サトウキビの収穫物調査ならびに育成系統の生産力評価と品種候補系統の選定を行います。さらに、本年中に、サトウキビ処理能力30トン/年のパイロットプラントを島内に建設し、栽培した高バイオマス量サトウキビを原料として、明年初めからパイロットプラントでの製糖及びエタノール製造試験を開始します。計画では、50アールから年間30トンのサトウキビを収穫し、砂糖約2トンとバイオマスエタノール約1キロリットルを製造します。バイオマスエタノールは、ガソリンと3%の割合で混合し、敷設するガソリンスタンドでE3ガソリンとして伊江村の公用車で利用されます。

 また、高バイオマス量サトウキビから製糖の副産物として出るバガス(蔗汁を搾ったあとの搾りかす)は、製糖・エタノール製造における熱源として利用するとともに、余剰分は畜産の敷料にしたうえで最終的には村の堆肥センターで堆肥化し、葉タバコなどの商品作物栽培の肥料として活用することも検討中です。 (参考図 - 伊江島における実証試験)

 伊江島における実証研究では、こうした資源循環型かつ高効率の製造プロセスを実地で行いながら検証するとともに、各工程での効率向上のための研究を進めることで、複数年後に、国産サトウキビを原料としながら経済性あるバイオマスエタノール製造の事業モデルを確立することを目指します。

 「将来に向け、持続的に発展可能な資源循環型社会を築く」という観点から、太陽光や風力などの自然エネルギーとともに、バイオマス(量的生物資源)エネルギーは、再生可能エネルギーとして、その普及が期待されています。政府は、平成14年12月に「バイオマス・ニッポン総合戦略」を閣議決定し、国家プロジェクトとして、その普及を推進する方針を示しました。生物資源を原料としたエタノールである、バイオマスエタノールは、ガソリンに混合して自動車用燃料に使用することが検討されています。化石系燃料から発生する二酸化炭素排出量を抑制できることから、政府はバイオマスエタノール混合ガソリンの実証試験を推進しています。

今回始める実証研究については、農林水産省、経済産業省、環境省、内閣府の一府三省との連携プロジェクトとして進めていきます。伊江島での実証試験における高バイオマス量サトウキビ栽培、品種開発については、農林水産省の委託研究「農林水産バイオリサイクル研究プロジェクト」の一部として実施します。高バイオマス量サトウキビから原料糖蜜を作るエタノール製造前工程部分の研究には、農林水産省の「バイオマスの環づくり交付金」の一部が活用されます。エタノール発酵・精製等のエタノール製造後工程部分の研究は、NEDO技術開発機構「バイオマス等未活用エネルギー実証試験事業」との共同研究として行われます。製造されたエタノールのガソリン混合(E3製造)、公用車による走行試験に関する部分は、環境省「地球温暖化対策技術開発事業」の補助金を活用して進められます。
高バイオマス量サトウキビの特徴
1.
高いバイオマス生産量
高バイオマス量サトウキビは、従来種より一株あたりの茎の数が極めて多く、株の再生力が旺盛であるため複数年の連続株出し栽培では単位面積当りのバイオマス生産量が従来種の2倍以上となる。そのため、単位面積あたりの蔗糖量が従来種より多くなり、また、燃焼エネルギー源として利用可能なバガスの生成量も従来種の3倍以上と大きく増加する。
2.
不良環境への強さ
乾燥や荒地、台風の影響など、食糧作物が栽培しにくい不良環境に、比較的強い。


実証研究を行う、エタノール製造プロセスの特徴
製造プロセス概念図
1.
環境に優しい
副産物のバガスの燃焼エネルギーで、砂糖とエタノールの生産に必要な全エネルギーを賄う設計となっている。したがって、化石燃料に由来するエネルギーの使用はなく、原料だけでなく製造エネルギーもバイオマスに由来する、完全に“カーボンニュートラル”な製造プロセスとなる。
2.
エタノール生産と砂糖生産との共存
従来種よりバイオマス生産量が高いため、蔗糖含有率は低いが、従来の砂糖生産量を維持しても、蔗糖分が多く余ることになる。その余剰分をエタノール製造の原料として利用することで、砂糖生産に影響を与えずに、エタノール製造が可能になる。
3.
安価な製造コストを実現する効率の高さ
上述の通り、製造に関するエネルギーはバガスの燃焼エネルギーで賄うため、エタノール製造のために外部からエネルギーを供給する必要がなく、エネルギーコストは不要になる。更に余剰エネルギーは売却することも可能である。また、従来の砂糖製造量を確保したうえで、残糖量の多い糖蜜を原料としてエタノールを製造し、その収量を高めることを目指す。その結果、単位面積あたりのエタノール生産量は、従来のサトウキビで作った場合に比べて3倍以上に増加する。


(注)伊江島における実証研究では、地域の産業と融合した資源循環型モデルを検討するため、バガスは、燃焼エネルギーとしての利用のみならず、畜産用敷料、堆肥などへの利用を想定している。また,サトウキビ梢頭部(葉の部分)については飼料としての利用も検討している。