1. トップページ
    2. 研究開発 
    3. 研究レポート
    4. 動物実験による乾燥ビール酵母の肥満予防効果

動物実験による乾燥ビール酵母の肥満予防効果

マウスを使用した動物試験を行った結果、乾燥ビール酵母は体重増加抑制の効果があることが確認されました。
この研究では、更に、乾燥ビール酵母が、マウス血液中のインシュリン濃度を適正に保つ上に、腸内の乳酸菌数を増加させることを確認いたしました。
この未来技術研究所の研究成果については、第57回日本栄養・食糧学会総会(平成15年5月17日〜19日開催)にて発表されました。

ビール酵母は、ビタミンB1・B2・B6など、人体の生理機能を調整するビタミンB群や、成長に欠かせない必須アミノ酸、ミネラル、食物繊維など、多様な栄養素をバランス良く含む、天然素材です。未来技術研究所では、酒類事業から派生した優れた機能性素材として、ビール酵母のもつ新たな健康機能の研究・解明、機能性食品素材としての応用研究を進めており、これまでにも整腸作用、鉄分吸収促進効果、抗潰瘍作用、糖尿病改善効果などについて検討し、研究成果を発表しています。
今回の発表も、そうした研究成果の一端であり、こうした研究活動の成果を、お客様の食を通じた健康増進に寄与する事業活動につなげることを目指します。
 この研究では、マウスに乾燥ビール酵母を含む飼料を長期間摂取させ、血液、内臓脂肪、腸内微生物等様々な項目について検査を行うことにより、ビール酵母の生理学的な影響を調べました。その結果、動物試験において、ビール酵母を継続的に摂取することにより血液中のインシュリン濃度が適値に維持され、過剰な体重の増加が抑制されることを確認したものです。
 研究では、雌雄のマウスを離乳直後の3週齢から人間の50歳前後に相当する16カ月齢まで、5%の乾燥ビールを添加した飼料で飼育し、ビール酵母を含まない通常の飼料で飼育した対照マウスと、いくつかの検査項目について比較を行いました。マウスには飼料を自由に摂食させており、試験期間を通じて酵母を与えたマウスと対照のマウスでは飼料の摂取量に差はなく、ほぼ同じカロリーのエネルギーを摂取したと考えられました。人間の身長に相当する体長は試験開始4ヵ月以降はほとんど変化しませんでしたが、生殖器周辺の内臓脂肪量はその後も増加を続け、体重は12ヵ月頃まで増え続けました。また血液中のインシュリン濃度も週齢とともに徐々に上昇するなど、人間の肥満症によく見られる生理学的な変化が観察されました。
そこでこれらの測定値に酵母の摂取がどのように影響するか調べたところ、メスでは試験開始2カ月頃より、オスでは4カ月頃より酵母を与えた群の体重増加が鈍化し、16カ月の試験期間平均で酵母を与えた群の平均体重は対照群に対して、メスでは9%、オスでは2.6%抑えられました(図表1)。メスにおいては2ヶ月目から4ヶ月目にかけての内臓脂肪量の急激な増加が酵母の摂取により軽減され、オスにおいても試験期間を通じて酵母摂取群の内臓脂肪量が低値で推移しました。
酵母を与えたマウス群、対照群とも体長はほぼ同等でした。また、血液検査においても酵母摂取群に異常は認められなかったことから、酵母の摂取による体重増加の抑制は、成長阻害のような好ましくない作用によるものではなく、過剰な体脂肪蓄積の予防という健全な体重調節の結果であることが示唆されました。

 血液を調べたところ、特にメスにおいて酵母を摂取したマウスのインシュリン濃度は、対照のマウスよりも試験期間を通じて低く推移しました(図表2)。 インシュリンは血液中の糖分や脂質を体細胞に取り込ませることで、血糖値や血液脂質を正常に保つ働きがある一方、肥満症やある種の糖尿病では高値となり、体脂肪の蓄積を加速させます。

 こうしたことから今回確認されたビール酵母の肥満予防効果には、血液中のインシュリン濃度を適正に保つ働きが関わっていることが示唆されました。さらにビール酵母を与えたマウスでは腸内の乳酸菌数が増加していることから、ビール酵母そのものだけでなく、増加した乳酸菌が体脂肪蓄積に影響した可能性も考えられます。

 乾燥ビール酵母は、アミノ酸、ビタミン、ミネラル、食物繊維等の栄養素を豊富に含んでおり、バランスのとれた天然の栄養補給剤として用いられています。今回の研究ではさらに肥満の予防効果が確認できたことから、ビール酵母は飽食の現代において栄養分の過剰摂取に対する緩衝剤としても期待されます。アサヒビール(株)R&D本部未来技術研究所では、肥満予防効果の機能メカニズムのさらなる解明を行い、新たな用途への応用につなげていく考えです。

図表1図表2
※マウスは各群30匹で飼育をはじめ、1カ月毎に6匹を解剖し、データを採取した。