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“ホップポリフェノール”の歯垢付着抑制効果をヒト臨床試験で確認

ホップの苞(ホウ)から抽出される新たな天然素材“ホップポリフェノール”の機能性研究として、東京医科歯科大学大学院・川口陽子教授(健康推進歯学)のグループと共同で行っていた研究により、ヒトでの臨床試験でホップポリフェノールが歯垢付着の抑制に強い有効性を持つことを確認しました。
このR&D本部の研究成果は、第52回日本口腔衛生学会総会(平成15年9月25日〜27日)において発表いたしました。

 歯垢は、ミュータンスレンサ球菌などのむし歯菌が、糖を原料として作り出すもので、むし歯や歯周病など歯科疾患の原因となります。歯垢の中のむし歯菌は他の細菌と共に定着、増殖します。これらの菌が増殖する際、糖を分解して酸を生成し、その酸が歯のカルシウムを溶かすことによってむし歯が発生すると考えられています。

 これまで行ってきた研究により、アサヒビール鰍ナは、平成8年に、ホップポリフェノールに「歯垢付着抑制作用」があることを試験管レベルで確認し、その作用について特許を取得しています(特許登録第3254553)。

 また最近では、国立保健医療科学院口腔保健部・花田信弘部長の研究グループとの共同研究により、ウシの歯片を用いた人工口腔装置での試験においてホップポリフェノールがむし歯菌による口腔内のpHの低下、歯垢の形成、ならびに歯のエナメル質の脱灰を抑制することを解明し、平成15年6月に行われた第81回国際歯科研究学会(開催:スウェーデン)で成果を発表しています。

 今回、ヒト臨床試験により、実際のヒトの口腔内においてもその作用に高い有効性が認められたことにより、ホップポリフェノールを、歯科疾患の予防に臨床応用するほか、機能性素材として食品に応用することへの可能性が大きく広がりました。

 ホップポリフェノールは天然由来の安全性の高い素材です。アサヒグループでは、今後、洗口液や、歯垢付着抑制・むし歯予防機能をもつ食品等の素材としての利用を目指し、応用研究を進める考えです。

 未来技術研究所において、酒類事業における原料・素材研究から派生した有望な機能性素材として、ホップポリフェノールの食品や飲料への応用研究を行っています。同素材については、今回の「歯垢付着抑制効果」のほか、「出血性大腸菌O−157のベロ毒素の毒性中和作用」など、多様な有効性を確認しています。
東京医科歯科大学とR&D本部の研究チームは、今回の研究において、ヒトを対象としてホップポリフェノールの歯垢形成抑制効果に関する臨床試験を実施し、同素材に歯への歯垢付着を抑制する効果があることを、確認しました。

臨床試験は、研究協力の同意を得た20〜30歳代の男性29名を被験者として行い、二重盲検法(注1)および、被験者を2群(A、B群)に分け同一被験者がホップポリフェノール試験液(0.1%水溶液)および対照液で洗口を行うクロスオーバー試験(注2)を用いました。
図1 歯垢抑制臨床試験の試験方法
 試験開始前に、口腔内診査を行うとともに、歯面研磨により歯垢を除去しました。その後3日間歯磨きを中止し、その3日間は毎食後、試験群はホップポリフェノール試験液を、対照群は食用色素で色調を合わせた対照液を使って洗口するだけとしました。そして、3日後の歯垢付着状態を評価しました(前期試験)。

  次に、2週間の間隔をあけ、試験液と対照液を交換し、同様の試験を実施し、歯垢付着状態の評価を行いました(後期試験)。歯垢付着状態は上下顎28歯の表側、裏側を1歯面0〜5点で評価し、集計および統計的解析を行いました。
(注1)
二重盲検法:試験を行う評価者と試験対象者に対して、試験群か対照群かを知らさないことにより、評価者と試験対象者の意識的及び無意識的な評価に対する偏りを無くす試験法。
(注2)
クロスオーバー試験:試験対象者を「前半が試験群、後半が対照群」と「前半が対照群、後半が試験群」の2群に分けて、試験を行い、順序効果と個人差を無くす方法。
図2は、前期試験でホップポリフェノール試験液と対照液、それぞれで洗口を行った結果を示しています。3日間洗口後の歯垢付着は上顎表側、下顎表側、上顎裏側、下顎裏側いずれの部位においてもホップポリフェノール試験液で洗口した人が、対照液の人より有意に歯垢付着が少ない結果となりました( p<0.01 )。
図2 歯垢の付着状態(前期試験)
図3は、後期試験の結果を示しています。3日間洗口後の歯垢付着は、前期試験と同様に、上顎表側、下顎表側、上顎裏側、下顎裏側のどの部位においてもホップポリフェノール試験液で洗口した群が対照液の群より有意に歯垢付着が少ない結果となりました( p<0.01 )。
図3 歯垢の付着状態(後期試験)
 前期試験と後期試験の結果、ホップポリフェノール試験液で洗口した試験群は、前期、後期とも対照群に比べ歯垢付着が有意に少ないことが判明しました。

 この臨床試験結果について、研究グループの東京医科歯科大学大学院・川口陽子教授は「これまで、各種ポリフェノールのう蝕予防効果が報告されているが、ホップポリフェノールは、むし歯原因菌による歯垢形成の抑制効果が特に強く、またヒトの口腔内でも有効であることが確認できた。その特性は、歯科疾患の予防において臨床応用できる可能性が高い。」として、今後の応用に期待をしています。