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ビール混濁乳酸菌のホップ耐性機構に関連する長年の研究で平成19年度「日本醸造学会奨励賞」を受賞

「ビール混濁乳酸菌のホップ耐性機構に関する研究」が、日本醸造協会より平成19年度「日本醸造学会奨励賞」を受賞いたしました。今回の受賞は「ビール混濁乳酸菌におけるホップ耐性遺伝子の発見とその水平伝播仮説」「乳酸菌のビール混濁性を正確に判定できる方法の提唱」「難培養乳酸菌検査培地の開発」など、ビール混濁乳酸菌に対する12年間にわたる長年の研究成果が高く評価されたものです。さらに、これらの研究は世界をリードするもので、ビール産業における品質保証技術ならびに醸造微生物学の進展に大きく寄与するものです。

分析技術研究所 主任研究員 鈴木康司が長年取り組んできた「ビール混濁乳酸菌のホップ耐性機構に関する研究」が、日本醸造学会より平成19年度『日本醸造学会奨励賞』を受賞しました。平成19年9月4日〜5日に東京都内で開催された平成19年度日本醸造学会の大会で、授賞式及び受賞講演が行われました。

日本醸造学会は、「醸造に関する学術研究の向上を図ること」を目的として昭和62年に設立され、醸造の範囲は酒類・味噌・醤油・食酢・その他の発酵調味料に関係する分野と多岐にわたります。「奨励賞」は、醸造に関する研究及び技術の開発に優れた業績をあげた学会員に対し、毎年1名に授与されるものです。

受賞者の鈴木康司は、120年の歴史があり醸造関連で世界最大の研究誌「Journal of the Institute of Brewing誌」の編集委員に現在日本人で唯一選抜されています。今回の受賞も、「ビール混濁乳酸菌におけるホップ耐性遺伝子の発見とその水平伝播仮説」「乳酸菌のビール混濁性を正確に判定できる方法の提唱」「難培養乳酸菌検査培地の開発」など、世界をリードするそのビール混濁乳酸菌に対する長年の研究成果が高く評価されたものです。

乳酸菌は、ヨーグルトに代表される整腸作用など健康的な機能を発揮する一方、ビールの世界では、微生物品質事故における過半数の原因微生物といわれています。そのようなビールを混濁させる乳酸菌とは、300種以上いるとされる乳酸菌の中でも天然由来の抗菌成分であるホップに対して耐性を有する、ごく少数の菌種が該当します。そのため、検出菌が有害菌種であるか否かを正確に判定する検査法を構築し、ビール工場環境および製品から有害微生物を発見しては駆逐する地道な微生物管理法が、世界でも類を見ない日本のビール産業の“生ビール”製造技術を支える一つの要素となっています。
「有害」という表現は、ビールに生育し「液が混濁する」「味が変る」「臭いがつく」ことにより“商品としての価値を失う”という意味で使用しています。「お腹をこわす」等、人体にとって健康を害するような影響を及ぼすことを意味するものではありません。また、ビールにおいて健康を損なう微生物が生育しないことは一般的に 知られており、当社の調査でも確認しています。
このように世界をリードする日本の微生物管理手法の開発および有害微生物の研究分野においても、有害微生物を漏れなく検出し、その混濁性を正確に評価する検査法には従来より大きな課題が三つありました。
一つ目は、有害菌種とされる中にも、強いビール混濁性を示す有害株と全く示さない無害な株が混在する点です。二つ目は、未知の有害菌種も当然存在する中、従来の有害菌種特定検査法では、限定された既知の有害菌種にしか対応できていない点です。三つ目は、多くの品質事故が既存の微生物検査培地では検出できない、いわゆる難培養のビール混濁乳酸菌により発生する点にありました。
こうした背景の中、ビール産業で長い間“謎”とされてきたビール混濁乳酸菌のホップ耐性機構について、鈴木をはじめとした分析技術研究所がその解明に挑戦し、12年間にわたる研究過程で以下のような成果をあげてまいりました。
(1)
世界で初めてホップ耐性遺伝子の発見に至り、ビール混濁乳酸菌のホップ耐性機構を解明した。
(2)
ホップ耐性遺伝子はコンピューターウィルスを連想させる感染型遺伝子であり、無害な乳酸菌が有害な乳酸菌に変貌する「ホップ耐性遺伝子の水平伝播仮説」を世界で初めて提唱した。
(3)
ホップ耐性遺伝子をマーカー(目印)にして、これまでの菌種という既成概念では対応できなかった乳酸菌のビール混濁性を正確に判定できる方法を提唱。既知の有害菌種だけでなく、未知の有害菌種にも対応できることを示した。
(4)
多くのビール混濁乳酸菌が実は「ビール環境に何百年あるいは何千年と棲息するうちに、ビール環境に極度に順応し、当該環境以外では棲息できない微生物となってしまった」ことを提唱し、ビール産業を苦しめ続けた難培養乳酸菌検査培地の開発につながった。
現在、日本のビール市場は“生ビール”が主流であり、お客様はビールの「鮮度」に対して多くの関心を寄せる傾向があります。このような中、熱殺菌を行わない“生ビール”を商業規模で製造できる技術は、日本が先行しており、他の国ではほとんどの場合何らかの形で加熱殺菌が施されています。広大な製造設備に、液体を酵母以外の雑菌が生育しない状態で1〜2ヶ月かけて発酵・熟成し、さらに大量の製品を無菌的に充填することを可能にした微生物管理技術は、“生ビール”を愛する日本のお客様の厳しい目に鍛えぬかれて大成したものといえます。

鈴木をはじめとした分析技術研究所は、検査技術と衛生管理を進化させ、品質保証の土台を支えていくとともに、研究内容を広く公開し、世界の情報発信基地となっていくことで、ビール業界の発展に貢献していきたいと考えます。また有害微生物の研究分野で世界をリードし、また、品質保証に関わる最新の微生物検査法を世界の標準法に高めるべく、今後も研究活動を継続していきます。
●主な学術論文・学会発表
(1)
鈴木康司, 浅野静, 飯島和丸, 栗山英俊, 北川泰
難培養ビール混濁乳酸菌検出培地の開発
日本乳酸菌学会誌、18(2):75 (2007)
(2)
鈴木康司, 飯島和丸, 浅野静, 栗山英俊, 北川泰
乳酸菌のビール混濁性判定マーカーhorAおよびhorC遺伝子の有用性評価
日本醸造学会誌 102、314-322 (2007)
(3)
鈴木康司, 飯島和丸, 坂本幹太, 佐見学, 山下博
ビール混濁乳酸菌のホップ耐性に関する研究
日本醸造協会誌、101、94-103 (2006)
(4)
SUZUKI K, IIJIMA K, SAKAMOTO K, SAMI M, YAMASHITA H
A review of hop resistance in beer spoilage lactic acid bacteria
Journal of the Institute of Brewing、112(2)、173-191 (2006)
(5)
SUZUKI K, IIJIMA K, OZAKI K, YAMASHITA H
Isolation of hop-sensitive variant from Lactobacillus lindneri and identification of genetic marker for beer spoilage ability of lactic acid bacteria
Applied and Environmental Microbiology、71(9)、5089-5097 (2005)