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研究レポート

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たかが味噌汁、されど味噌汁、フリーズドライ技術の蓄積

近年、フリーズドライ食品は、忙しい時の手軽な食事として、また、災害備蓄食として需要が伸び、市場規模が急速に拡大しています。常温での長期保存が可能で栄養が摂れるだけではなく、軽くて持ち運び易く、お湯を注ぐだけですぐに食べられることから、旅行やキャンプ、登山など様々なシーンでの活用も広がっています。

フリーズドライ食品開発の歴史

食品中の水分は、微生物の繁殖や、風味劣化の原因となるため、食品を常温で長期間保存できるようにするには、水分を少なくすることが重要です。フリーズドライは、食品を乾燥させる方法の一つで、食品を凍結(フリーズ)したあと、真空に近い状態で氷が気化するのに必要な最小限の熱を与えることで乾燥(ドライ)させる製法です。熱風で乾燥させるエアードライなどの乾燥法に比べて、お湯をかけたとき、食感や風味の戻りが良く、また、栄養分が損なわれにくいという特徴があります。

世界では、1890年から医療分野を中心にフリーズドライの研究が進められてきましたが、日本では、1960年代前半に初めてフリーズドライ設備が導入されました。その後、1970年に発売された世界発のカップラーメンに、フリーズドライの“具”が採用されたことをきっかけに、カップラーメンの大ヒットとともに、フリーズドライの技術は日本独自の進化を遂げてきました。

アサヒグループでは、1968年に天野実業株式会社(現在のアサヒグループ食品株式会社)がフリーズドライ設備を導入し、先述のカップラーメンの具の開発に始まり、独自に研究を進めてきました。それまでに蓄えた技術やノウハウをもとに、1982年に「フリーズドライ味噌汁」を開発、翌年に発売しました。その後、スープや、粥、カレーなど様々なフリーズドライ食品の開発に取り組んでいます。

フリーズドライの原理

通常の気圧下では、氷(固体)を加熱すると、水(液体)を経て水蒸気(気体)になりますが、圧力が一定値以下になると、氷は水を経ずに、直接、水蒸気になる“昇華”という現象が起こります。フリーズドライ食品は、この“昇華”を利用して、食品中の水分を限りなくゼロに近い状態まで減らします。

フリーズドライ食品をつくるには、まず、調理した食品を-30℃〜-40℃程度で凍らせます。次に、真空に近い状態まで一気に減圧します。その後、昇華に必要な熱を加えることで、氷が水蒸気となって抜け出ていきます。氷が気体として抜け出た後は、スポンジ状に穴が開いている状態になります。お湯をそそぐと、この穴に再び水分が入り込み、フリーズドライ前の状態に戻ります。

凍結工程の速度と温度の重要性

風味や食感を保ち、またお湯を注いだときの戻りが速いフリーズドライ食品をつくるためには、凍結工程の管理がとても重要です。凍結速度が速いと、氷の結晶は小さく、遅いと氷の結晶は大きくなりますが、なるべく小さい方が食感の低下や栄養の喪失を少なくすることができます。しかし、氷部分が抜けた空間は水蒸気の通り道になるため、小さすぎると水蒸気の通り道が狭くなり、発泡が起きてしまったり、特にフリーズドライ食品の代表格ともいえる味噌汁の場合、お湯を注いだときの復元性が低下することも分かっています。

また、食品中の塩分や糖分などの濃度が高いと、凍りにくくなるため、食品の特性に合わせて適切な冷却温度を設定をする必要があります。例えば、味噌汁を凍結させる際は、一般に塩分や糖溶液が完全に凍結する温度をもとに、味噌の成分を考慮して何℃まで冷却するかという条件設定をおこないます。凍結が十分にできていないと、その後の減圧時や加熱時に、“昇華”ではなく“溶解・沸騰”が起こり、形状が崩れたり、風味や食感が変質したりして、商品としての価値が損なわれてしまいます。

風味豊かなフリーズドライ味噌汁への
こだわり

味噌汁の凍結工程における条件設定の難しさから、一般に売られているフリーズドライの味噌汁の中には、味噌の量を減らすことで対処しているものもあります。アサヒグループでは長年の技術と経験の蓄積により、その製品に使用する味噌の成分や具材に応じて、最適な凍結乾燥条件を見出すことで、具材にあわせて最も相性のよい味噌とだしをたっぷりと使った風味豊かな味噌汁をつくりだすことに成功しています。さらに、味噌汁で培った技術を活かし、スパイスの風味が効いたカレーや、1分で復元が可能なパスタ、近年では、お湯を注いでも衣のサクサクとした食感が感じられるカツカレーなど、新たなフリーズドライ食品の開発に挑戦し続けています。

まとめ
 フリーズドライ食品をつくるには、凍結・乾燥の製造設備だけではなく多くの技術や経験の蓄積が必要です。アサヒグループでは、天野実業株式会社から始まり、長年培ってきたフリーズドライ技術により、食品本来の風味や食感の復元にこだわったフリーズドライ味噌汁の開発に取り組んでいます。
 これからも、フリーズドライ食品の利点である「長期保存が可能」「軽量」「お湯を注ぐだけですぐに食べられる」「食品の色・味・食感や栄養が損なわれにくい」ことに加え、おいしさにこだわり、驚きと感動を与えるフリーズドライ食品の開発にチャレンジし、豊かな食生活の実現に貢献してまいります。

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