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小学校の社会科見学のように、工場やインフラ設備、史跡などを見学する活動が、写真家の小島健一さんが主宰する「社会科見学に行こう」。小島さんの呼びかけは大人の知的好奇心を刺激し、今やmixiのコミュニティには6800人近くが登録し、新聞やテレビでもたびたび紹介されて、ちょっとしたブームになっています。普通に暮らしていれば、決して見ることのない壁の向こう側を訪ねる体験には、どのような面白さや刺激が潜んでいるのでしょうか。
意外と身近に存在する非日常を訪ねて
目撃する楽しさが最大の魅力
「社会科見学に行こう」とは、一体、どのような活動なのでしょうか。
ふと考えると、身の回りは疑問だらけですよね。たとえば、道路やトンネルは当たり前に存在するけど、どのように造られるのかを訊かれたら答えられない。頭で考えても分からないから、実際に現場を訪ねて疑問を解決しようというのが、「社会科見学に行こう」の目的です。行き先は、まさに興味の赴くまま。土木工事の現場やインフラ設備、メーカーの工場、史跡など、2004年6月にスタートしてから、既に100ヶ所以上を訪ねました。個人的に見学した場所を含めると、僕自身は200ヶ所以上を見学していますね。参加者は30代を中心に、20代から60代までさまざま。「勉強したい」「知りたい」という意識の人もいれば、写真撮影が目的の人、また「何となく面白そうだから・・」という人まで、目的もいろいろです。今は大体、月1、2回、関東地方を中心に見学会を開いており、毎回5〜50人が参加しています。参加資格は20歳以上で、最低限のマナーを守っていただける人であれば、どなたでも歓迎です!
この活動が多くの人をひきつけるのは、どのような理由だと考えていますか。

江戸川に排水している「首都圏外郭放水路」
壁一枚を隔てた場所に、意外な世界が広がっているのを知る面白さでしょうね。「目撃する楽しさ」と言いますか。たとえば、埼玉県の春日部市に「首都圏外郭放水路」という地下施設があります。その地域には小さな河川が多く、大雨が降ると氾濫するおそれがあるため、地下に数100トンの水を貯められるようにしているんです。これが実に異様な空間なんですよ。奥行きが150メートル以上、高さ10数メートルという巨大な空間に、大きな柱がボンボンと立っている。そんな空間、地上にはあり得ませんよ。人々が普通に暮らす地下に、こんな設備があるのかと本当に驚きました。それから個人的には製鉄所の見学も大好きです。2000度くらいに熱されて真っ赤になった熱が時速100キロくらいの速さで轟音とともに駆け抜けていくんです。大量の赤外線を放っているから見学中はすごく暑くて、匂いも独特。鉄製の設備で鉄が造られている光景はまさに「鉄の王国」という言葉がぴったりで、とても刺激的な空間ですよ。
気軽な思い付きで始めたつもりが
意外にも同じ興味を持つ人がたくさんいました
そもそも、「社会科見学に行こう!」を始めたきっかけは?

「首都高・山手トンネル」のシールド切断
2004年4月、Webの制作会社に勤めていた頃、有給休暇を取って、「東京ジオサイトプロジェクト」という日比谷の共同溝の見学会に参加しました。特にそういう設備に興味があったわけではなく、「はてなダイアリー」というブログに巨大建築愛好会というグループがあり、そこにプロジェクトの記事がアップされていたのを、たまたま読んだのがきっかけで。共同溝とは何かをまったく知らずに見学したのですが、霞ヶ関の地下40メートルで、こんな設備が東京を支えているのかと、びっくりしました。シールドマシンというトンネルを掘る鉄製の巨大ドリルも印象的でした。普通に暮らしていたら、トンネルの掘り方なんて考えませんからね。――と、このプロジェクトで目にした光景に衝撃を受けて、色々な現場を回りたいと思うようになりましたが、個人で見学できる場所は限られている。それなら人を集めればいいと思い付き、周りの5人くらいに声をかけたのが始まりでした。ちょうどその頃、mixiを始めたので、「社会科見学に行こう」というコミュニティを登録したら意外にも同じ興味を持つ人がたくさんいました。さらに2005年くらいから活動が新聞やテレビで取り上げられたことで、あれよあれよという間にコミュニティは6800人にまで膨らみました。
見学したいけど、見学できない場所ってあるのでしょうか。

今、最も見学したい場所のひとつが原子力発電所。PR施設は見せてもらえますが、施設の中には入れてもらえないんですよ。それから、食品工場では、見学者用に特別の施設を設けている企業以外は、衛生管理を理由に断られることが多いですね。普段、見学先はネットで探すことが多いのですが、活動を続けるうちに業界団体に知り合いができて、特別に見学させてもらえることも増えました。企業が見学を募集しているケースではPR目的が多いのですが、公共施設の場合、情報公開的な意味合いがあるほか、「実はこんな取り組みをしています」というアピールが含まれている場合があります。たとえば、2007年に開通した首都高の山手トンネルは、吸収した排気ガスをクリーンな空気に変えて外に出している。そういうことは、説明されないと分からないですからね。
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