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シナリオ分析(TCFD) シナリオ分析(TCFD)

シナリオ分析(TCFD)

TCFD提言への取組み深化

アサヒグループは、気候変動によるリスクと機会に関連する事業インパクトの評価および対応策の立案が、持続可能な社会の実現および事業の持続可能性に不可欠であると認識し、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明しています。
2019年にビール事業、2020年には飲料事業およびビールを除く酒類事業に対象を拡大してシナリオ分析を行いました。2021年には食品事業を含め主要事業を対象にシナリオ分析を実施する計画で進めています。気候関連問題の事業インパクトを明確化し対応策に取り組むことで、事業の持続性向上を図るとともに、投資家との対話により企業価値向上につなげていきます。

ガバナンス

アサヒグループでは、気候変動をサステナビリティの重要課題として捉え、CEOが委員長となる「グローバルサステナビリティ委員会」において戦略を構築するとともに、取締役会に報告し、取締役会の監督の下でPDCAの強化を図っています。2020年12月に実施した「グローバルサステナビリティ委員会」において、各Regional HeadquartersのCEOを含むメンバーで2030年のグループのCO2排出量削減目標について活発な議論を行いました。その結果、目標値の上方修正を決定し、積極的な取組みの推進にコミットしています。

関連情報

戦略

シナリオ分析の結果概要

アサヒグループでは、2019年に実施したビール事業に加え、2020年には飲料事業およびビールを除く酒類事業を対象に気候変動リスク・機会による事業インパクト、対応策の検討に向けて、シナリオ分析を実施しました。なお、この分析は、国連気候変動に関する政府間パネル(以下、IPCC)によるRCP2.6(2℃未満シナリオ)、RCP8.5(4℃シナリオ)および国際エネルギー機関(以下、IEA)によるシナリオを参照しています。

<2019年の分析結果>

2019年はビール事業のシナリオ分析を実施しました。気候変動により、事業に重要な原料である農産物の収量減や炭素税の導入にともなう製造コストの上昇、農産物生産地や製造拠点の水ストレス・洪水リスクの増大などの大きな影響が明確になりました。一方、対応策を検討する中で、緩和策や適応策を強化することにより、以上の大きな影響を低減し機会を獲得できる可能性も見えてきました。

<2020年の分析結果>

2020年は飲料事業およびビールを除く酒類事業に対象を拡大しました。さらに2019年に実施したビール事業での分析を深化させ、気候変動による事業影響評価および対策検討を行いました。

2020年のシナリオ分析取組み全体概要

2020年のシナリオ分析取組み全体概要

シナリオ分析の詳細

酒類事業および飲料事業(農産物原料と製品のバリューチェーン全体)における気候変動リスク・機会による事業インパクト、対応策の検討に向けて、以下のステップでシナリオ分析を実施しています。

シナリオ分析のステップ

シナリオ群には、IPCCによるRCPシナリオRCP2.6(2℃未満シナリオ)、RCP8.5(4℃シナリオ)およびIEAによるシナリオを参照
出所:IPCC第5次評価報告書制作決定者向け要約(図SPM.7)をもとに当社にて作成

STEP 1:リスク重要度の評価

気候変動にともなう移行リスクや物理的リスクなど、さまざまなリスク・機会がある中で、アサヒグループの酒類事業、飲料事業にとって重要なリスク・機会を以下のとおり特定しました。

リスク分類 事業リスク・機会 重要なリスク・機会とした理由
政策/法律 炭素税 生産
(自社操業)
リスク 「アサヒグループ環境ビジョン2050」において、バリューチェーン上におけるCO2排出量ゼロを目指す「アサヒ カーボンゼロ」に取り組んではいるが、国・地域によって状況は違うものの、炭素税導入については財務インパクトが大きいと想定される。
プラスチック
(PET)
リスク 飲料事業の主要容器であるPETボトルは化石燃料を原料に製造されているため、炭素税が導入された場合、調達コストへの影響が大きいと想定される。
水使用に関する規制 リスク 原料生産・操業の双方において水は必要不可欠であるため、事業継続および財務インパクトが大きいと想定される。
市場変化/
技術変化
顧客行動の変化 機会リスク 環境配慮意識の高まりに伴うリスク・機会が、売上高に影響する新たな要因となりうる。
物理的リスク 原料価格の高騰 リスク 原料価格の高騰やそれにともなう代替原料への転換が必要となった場合、財務インパクトが大きく、事業継続に関わると考えられる。
平均気温の上昇 機会 夏季のビール・飲料の消費量は、気温の上昇による影響が大きいと想定される。
降水パターンの変化 リスク 深刻な水不足により農地や生産拠点が影響を受け、事業継続が難しくなる可能性がある。
異常気象の激甚化 リスク 近年多発している豪雨や台風の被害がさらに深刻化した場合、バリューチェーンが甚大な被害を受け、事業継続が難しくなる可能性がある。

STEP 3:事業インパクト評価

2019年に引き続き、2020年も抽出した重要リスクの中でも、農産物原料の収量減少による原料価格の高騰と炭素税の導入によるコスト増加が特に大きな影響をおよぼす可能性があることを認識し、以下の分析・事業インパクト評価を実施しました。

<主要項目>

  1. 1. 農産物原料影響調査
    1. ① 主要農産物原料の収量変化予測
    2. ② 飲料事業の高リスク農産物原料の財務影響額試算
  2. 2. 炭素税導入による財務影響額試算
    1. ① 生産(自社操業)
    2. ② PETボトル(バリューチェーン)

1. 農作物原料収量への影響調査

① 主要農産物原料の産地別収量変化予測

初年度の2019年は、ビール事業(海外含む)で使用する主要農産物原料(大麦、ホップ、トウモロコシ、コメ)の気候変動影響について分析し、気候変動により収量が減少するリスクがあることを把握しました。2020年は、飲料事業(炭酸飲料、乳性飲料、コーヒー飲料など)、ビールを除く酒類事業(洋酒、焼酎など)の主要原料となるコーヒー、乳、砂糖の起源原料も対象に加えました。そして、2050年収量予測について、気候変動による農産物影響に関する複数の文献を分析し、農産物の種類別のみならず生産エリア別に試算することにより、きめ細かな収量の変化を確認しました。その結果、特にトウモロコシとコーヒーにおいて4℃シナリオの場合、複数の産地で大幅に収量が減少することがわかりました。

2050年時点におけるシナリオ別収量予測(現在収量比)

② 飲料事業の高リスク農産物原料の財務影響額試算

飲料事業における高リスク農産物原料となるコーヒーとトウモロコシを対象に、将来の価格を推定し、財務影響額を試算しました。
現在の飲料事業(海外含む)における原料購入金額をベースに価格影響額を試算した結果、トウモロコシ関連で19.7億円、コーヒー関連で約26.6億円のコスト上昇の可能性があることがわかりました。

2050年時点におけるシナリオ別収量予測(現在収量比)

金額算出根拠:過去の価格推移から、変動要因(生産量・消費量のバランス、一人当たりGDP、相場前年価格、エタノール原料への投入割合(トウモロコシのみ))を抽出し、回帰分析を用いて過去の価格を再現する計算式を導き出しました。その計算式に将来の生産量と消費量、一人当たりのGDP、エタノール原料への投入割合(トウモロコシのみ)の予測値を入力し、将来の価格を推計しています。

2. 炭素税導入による財務影響額試算

① 生産(自社操業)

生産段階におけるCO2排出量から影響額を算出

炭素税が導入された際の生産に関わる2030年、2050年の事業インパクトを算出しました。2030年は炭素税価格を100ドル/t、2050年は144ドル/tと見込み試算した結果、2030年は酒類事業、飲料事業の合計64.7億円、2050年は64.3億円と試算されました。2050年は、再エネの普及により電気由来のCO2排出量がゼロになることが見込まれますが、炭素税価格の上昇により炭素税の総額はほぼ同額となる見込みです。

金額算出根拠:製造段階におけるCO2排出量から影響額を算出しています。Scope2排出係数は、IEA World Energy Outlook2020によるものです。炭素税額は、IEA World Energy Outlookの予測値から独自に推計し、2050年時点(144ドル)、2030年時点(100ドル)と設定しています。

② PETボトル(バリューチェーン)

PETボトル(バリューチェーン)

飲料事業のサプライチェーン全体の中で、炭素税導入の影響が大きいものとしてPETボトルが特定され、アサヒグループが使用しているPETボトルに対して炭素税が導入された場合の影響額を試算しました。原料の採掘からペット樹脂製造に係る炭素税の影響をすべて購入価格に転嫁されたと仮定した場合、62.3億円のコスト増となる試算結果となりました。

金額算出根拠:炭素税額は、IEA World Energy Outlookの予測値から独自に推計し、2050年時点(144ドル)と設定しました。

STEP 4:対応策の検討

1. 農産物収量減に対する対応策の方向性

アサヒグループは主要農産物の収量減のリスクに対して、以下の施策に取り組んでいきたいと考えています。

① サプライヤーとの協働

農産物に関するリスクをサプライヤーへ共有し、気候変動に対応可能な品種の改良や、現在使用している素材の代替品の開発を検討しています。また今後、アサヒグループとサプライヤーとの協力関係を強化し、これまで以上に将来的な収量減に対応するための各施策の実行を進めていきます。

<重要原料の環境リスク(気候変動、水、生物多様性)調査結果の共有・対策>

アサヒグループでは、「環境ビジョン2050」の取組みの一つとして「持続可能な原料使用」を掲げ、原料の持続可能性について取組みを進めています。その中で、主要な農産物原料について、気候変動、水、生物多様性の観点からリスク調査を行っており、その調査の結果、将来的なリスクが発見された場合、サプライヤーとその結果を共有し、対策を検討する取組みを2020年から開始しています。

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② 農家支援

アサヒグループはイタリアにおいて製品の原料となる大麦の農家を支援したり、チェコにおいてホップ栽培のスマート農業化を進めるパイロット試験に取り組むなどしています。

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③ 自社技術の活用

酵母細胞壁活用による発根促進

酵母細胞壁活用による発根促進

アサヒグループは、「ビール酵母細胞壁」を活用した農業資材を開発しています。同資材は植物の発根を促進させる効果があり、これを活用することで農産物の気候変動による環境変化への対応力向上が期待できます。すでにさまざまな農産物で実績があり、今後この農業資材の活用を拡大するとともに、応用研究を進めていきます。

2. 炭素税導入による生産コスト増加への対応策の方向性

アサヒグループは、既にCO2排出量削減に向けた高い目標を掲げて野心的に取り組んでいます。

① 2030年CO2排出量削減目標を上方修正

2050年のCO2排出量ゼロの達成に向けて取組みを加速させるために、2030年の目標値を従来の30%削減から50%削減に上方修正しました。これにより、2030年には取り組まなかった場合と比較して22.3億円、2050年には64.3億円全額の削減効果があることを確認しています。アサヒグループが現在取り組んでいる戦略は気候変動によるコストの上昇への耐性が高く、レジリエンスの観点からも適切と認識しています。

② 自社技術の応用

アサヒビール(株)茨城工場のバイオメタンガス燃料電池発電システム

アサヒビール(株)茨城工場のバイオメタンガス燃料電池発電システム

脱炭素に向けた取組みとして、CO2排出量削減の新たなモデルとなりうるビール工場排水由来のバイオメタンガスを利用した燃料電池による発電の実証事業を、アサヒビール(株)茨城工場にて開始しています。

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3. 炭素税導入によるPETボトル価格転嫁への対応策の方向性

アサヒグループは、グループ全体で「3R+Innovation」の目標を掲げ、リサイクルPETボトル比率を上げるなどの容器包装による環境負荷低減に取り組んでいます。

① リサイクルPETへの切替え

すでにオーストラリアにおいてリサイクルPET100%のミネラルウォーター『Cool Ridge』を発売しています。日本では、2019年7月から『カルピスウォーター』などでリサイクルPETの使用を開始しています。今後も3Rの取組みに加え、他社とのアライアンス強化により、マイナス影響を極小化していきます。

② PETボトルの軽量化

リサイクルPET

アサヒグループの事業会社では、継続してPETボトルの軽量化に取り組むとともに、代替容器の検討やバイオマス素材のPETボトルの採用拡大についても検討を進めています。

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まとめ:重要リスクへの対応策および機会

重要リスクへの対応策については既存の取組みを継続・加速するとともに、以下の方向性についても経営課題として取り組んでいきます。また、機会についても検討していきます。

リスク 既存の取組み 対応策の方向性 機会
原料価格高騰
  • 複数購買によるリスク分散化など
  • 農作物原料のリスク調査(気候変動、水、生物多様性)結果のサプライヤーとの共有およびリスク対応に向けてのコミュニケーション強化
  • 農家支援(イタリアの大麦、チェコのホップなど)
  • ビール酵母細胞壁による気候変動影響緩和機能の農作物原料への応用
  • サプライヤーとの協働による、環境変化対応新品種の評価・採用の継続検討
  • 原料の持続可能な調達に向けた支援先および規模拡大の検討
  • 安価で高品質な原料確保に向けた共同研究を含む研究開発の取組み開始
  • ビール酵母細胞壁の素材ビジネスの拡大
炭素税(生産)
  • 「アサヒ カーボンゼロ」の2030年目標値の引き上げ
  • RE100への参画
  • SBT1.5℃認証の取得
  • コージェネレーションシステムの導入
  • モーダルシフトの推進
  • ポーランド、オランダにおける風力発電による再生可能エネルギー導入
  • 高効率冷凍機の導入
  • さらなる再生可能エネルギーの導入・活用
  • メタンガスを利用した燃料電池発電技術の確立
  • メタンガス燃料電池の技術開発、および普及促進による、持続可能な地球環境の実現への貢献
炭素税
(PETボトル)
  • オーストラリアにおけるリサイクルPET100%のミネラルウォーター『COOL RIDGE』の発売
  • プラスチック方針「3R+Innovation」の制定
  • リサイクルPETボトル導入に向けたリサイクラーとの協働・JV
  • 容器包装指針の導入
  • リサイクルPET導入比率向上に向けたサプライヤーとの協働
  • PETボトル軽量化の取組み
  • さらなるリサイクルPET導入比率向上に向けた新規調達の取組み加速
  • 代替容器の検討
  • バイオ素材PETボトルの採用拡大検討
  • リサイクラーとの協働によるリサイクルPET調達コストの削減
水使用に
関する規制
  • 2050年までに持続可能な水資源利用100%を達成
  • 2025年までに日本国内ビール工場でウォーターニュートラルを達成
  • 水使用量の削減(洗浄・殺菌工程での水使用削減や回収水の有効利用)
  • 水使用のさらなる効率化(大規模リサイクルシステムの導入)
  • 主要原料産地における水リスクの把握および分析に基づく対応の検討
顧客行動の
変化
  • 『アサヒスーパードライ』350ml缶およびギフトセット、『アサヒドライゼロ』に「グリーン・エネルギー・マーク」を記載
  • オーストラリアにおける太陽光発電電力100%のビール『Victoria Bitter』発売
  • ポーランドにおける風力発電電力100%のビール『Lech』発売
  • エシカル消費拡大への対応(対応商品の開発、認証原料の使用など)
  • 『アサヒスーパードライ』など再生可能エネルギー100%の製品の販売拡大
異常気象の
激甚化
  • 『アサヒスーパードライ』など再生可能エネルギー100%の製品の販売拡大
  • 拠点の移転・新設時における中長期的な気候変動影響の考慮

リスク管理

アサヒグループは2020年に策定した「アサヒグループ リスクアペタイト ステートメント」の中で、自然環境に影響を与えるリスクを低減する取組みを進めることを宣言しています。
グループエンタープライズリスクマネジメント(以下、ERM)において「気候変動」をグループの主要リスクとして扱い、ERM体制下でPDCAサイクルを回しながら、2020年に刷新したサステナビリティ推進体制とERMを連動させることにより、グループ全体でのリスクマネジメントを行っています。

関連情報

指標と目標

2025年までにCO2排出量ゼロ

アサヒグループでは、気候変動への中長期目標「アサヒ カーボンゼロ」を設定しており、2050年にCO2排出量“ゼロ”を目指しています。この達成確度を上げるために、2020年12月に、2030年の目標を50%削減(2019年比)に上方修正するとともに、RE100への参画やSBT1.5℃認証の取得などロードマップを更新して取組みを進めています。そのほか、農産物原料・容器包装・水などの資源についても持続可能な利用を実現する施策を掲げ、取組みを推進しています。

関連情報

CSRマネジメント
環境
コミュニティ
健康
責任ある飲酒
データ集