2014年決算説明会・2014年決算総括・2015年事業方針

エグゼクティブ・サマリー

2014年度の総括としては、消費税増税や最盛期の天候不順など厳しい事業環境の中、「強い」ブランド資産の最大化やミックス向上に加えて、シナジー等の収益構造改革を推進したことなどにより、全事業で増収増益を果たし、当期純利益は14期連続で最高益を更新しました。

また、昨年は、急速な株価の上昇を受け、ユーロ円CBの株式転換が進みましたが、適切な資本政策を実行したことなどにより、KPIであるROEやEPSの成長も計画達成ペースで進捗しています。

本年は、「中期経営計画2015」の総仕上げとして、引き続き「強み」に集中した事業戦略と資本政策の実行により、先ずはKPIの確実な達成を目指します。その上で、今後の持続的な成長を果たしていくために、チャンスを活かしたブランド投資やグローバルな成長投資も強化していく方針です。

さらに本年は、次期の中期経営計画の策定を進めていくことになりますので、持続的な企業価値の創造に向けて、一層の経営改革に取り組んいきます。

昨今のROE重視の風潮やコーポレートガバナンスコードの策定など、日本企業の経営スタイルの見直しが求められる中、当社としては、引き続きROEを基軸として、「稼ぐ力」の強化と最適な資本政策を両立した改革を進めていく方針です。

中期経営計画の定量目標の進捗

「中期経営計画2015」のKPIの進捗については、表面上のROEは急激な円安などにより未達ペースとなっていますが、そうした特殊要因を除いた「補正後のROE」では、利益率と資本効率の着実な向上により、本年は10%を超え、中期経営計画の目標を達成する見込みです。

また、もうひとつのKPIであるEPS の成長については、昨年は、CBの株式転換により前半は希薄化が進んだものの、当期純利益の増益に加えて、残存するCBの前倒し償還や500億円の自社株買いの実施など、適切な資本政策を実行したことにより、計画ラインの進捗に戻しています。

今期については、現時点では自社株買いを実施していないため、9%程度の成長率としていますが、利益の超過達成に加えて、資本政策を適切なタイミングで実行していくことで、目標の達成を目指します。

事業別営業利益率の進捗

「中期経営計画2015」では、酒類事業での大幅な利益率の向上は見込まず、ブランド資産の最大化に投資する方針を掲げています。進捗としては、利益率のガイドラインには若干届きませんが、中長期的な競争力に直結する「ブランド資産」の強化は着実に進んでいます。

また、2012年に収益性が低下した飲料事業と食品事業は、主力ブランドを中心とした売上の拡大とコストコントロールの両立により、利益率のガイドラインを前倒しで達成しています。

一方、国際事業につきましては、中国やマレーシアでは計画を上回っていますが、オセアニアにおける構造改革の成果が遅れたことなどにより、利益率のガイドラインに対して未達ペースとなっています。

『中期経営計画2015』事業別総括

「中期経営計画2015」の事業別総括と今後の方向性についてポイントは以下の通りです。

酒類事業については、「スーパードライ」を中心とした「強い」ブランド資産の最大化などでシェアを拡大すると共に、総合酒類企業として着実に競争力を高めています。今後は、デフレ脱却のチャンスや酒税改正なども見据え、ブランド力を活かしたミックス向上戦略を核として「稼ぐ力」を高めていきます。

飲料事業についても、引き続き、主力ブランドの強化や健康機能カテゴリーの拡充に加えて、一層のシナジー拡大に向けて、飲料事業一体となった事業構造改革も進めていくことで、業界トップクラスの収益性を目指していきます。

また、食品事業では、「ミンティア」や「ベビーフード」など、各社の「強み」を活かした売上の拡大に加えて、飲料事業同様に、食品事業一体となった収益基盤の改革にも取り組んでいきます。

国際事業については、課題を残したオセアニア事業において、成長カテゴリーへの一層のシフトや更なる統合シナジーの創出を中心として、先ずは、既存事業の収益性を着実に高めていきます。

その上で、引き続き「M&A」投資についても積極的なスタンスで臨んでいくことで、国際事業を中長期的な成長ドライバーに育成していく方針です。

今後は、国内3市場の収益基盤の盤石化と国際事業の成長ドライバー化を図り、「強い事業の集合体」に変えていくことで、グループ全体の「稼ぐ力」を高めていきます。

次期中期計画を見据えた経営改革

昨今の日本企業と資本市場を取り巻く潮流としては、ROEを重視した経営改革の加速に加え、「スチュワードシップコード」や「コーポレートガバナンスコード」による企業価値の向上を目指した「建設的な対話」や「日本型ガバナンスの見直し」が求められています。

当社は、2013年に発表した「中期経営計画2015」において、ROEとEPSをKPIに設定するなど、より「企業価値の向上」を重視した経営に転換しています。但し、今後もその持続性を高めていくためには、経営改革の更なる進化が必要だと考えています。

今後の方向性につきまして、大きく2つに分けて説明します。

一つ目は、「経営指標と資本政策の考え方」です。KPIであるROEとEPSの観点から説明します。

ROEの向上には、各事業の「稼ぐ力」が最も重要となりますが、これに加えて、より資本効率を重視した経営戦略と事業管理により、持続的なROEの向上に繋げていく方針です。

また、EPSについても、これまでは当期純利益の着実な向上に加えて、自社株買いなどの資本政策の実行により、着実な成長を果たしてきました。今後も、株主還元については、総還元性向の設定など、現中計の考え方をベースに検討していく方針ですが、株主還元の手法を含む資本政策については、株価のバリュエーションなども踏まえて検討していきます。

2つ目は、「新たな潮流を活かした経営改革」について、3点のポイントから説明します。

1点目は「ガバナンスコードへの対応と活用」であり、本年3月の制定に向けて原案が示されるなど、既に様々な側面から議論が進んでいます。

当社としては、こうした新しい動きに対して、受け身で対応するのではなく、「企業価値の向上」に向けて、アサヒならではの経営改革に活かしていくことだと認識しています。

2点目は「IFRSの導入とその活用」であり、次期の中期計画に合わせてIFRSの導入を視野に入れて準備を進めています。IFRSについても、単なる会計基準の変更ということではなく、先ずは、「比較可能性」を高めてグローバルな基準での対話を促進することにより「企業価値の向上」に繋げていきたいと考えています。

3点目は、「広義の企業価値」の向上を目指した取組みです。今回のガバナンスコードの策定やSRI系ファンドの拡大などを受けて、今後は、非財務情報の適切な開示やCSV経営の促進など、財務的価値だけでなく、「広義の企業価値」に対する関心はますます高まると考えています。当社は、「広義の企業価値」の持続的な向上を目指し、全てのステークホルダーの満足を追求した経営を推進していく方針です。

2014年決算概要

売上高は、国内3事業における主力ブランドを中心とした売上拡大に加えて、国際事業が、オセアニアなど既存事業の増収や新規連結会社の上乗せにより大幅な増収となったことなどにより、トータルでは、前期比712億円増収の1兆7,855億円となりました。

営業利益は、各事業の増収効果やミックス向上に加えて、シナジーを含めた収益構造改革を推進したことなどにより、全事業で計画を上回り、トータルでは、前期比108億円増益の1,283億円となりました。

営業外損益は、持分法投資損益の悪化や社債発行費用の増加などにより、トータルで13億円のマイナスとなりました。

持分法投資損益は、青島ビール社の前年に発生した特殊要因の反動やインドネシアの販社におけるマーケティング投資強化の影響などにより、前期比8億円の悪化となりました。

この結果、経常利益は、前期比96億円増益の1,332億円となり、計画比では17億円の超過達成となりました。

特別損益は、オセアニアでの訴訟に伴う受取和解金170億円や固定資産売却除却損益に含んでいる西宮工場跡地の売却益142億円などの特別利益を計上したことにより、それらを原資にオセアニア事業の「のれん」並びに「低稼働不動産」の減損などの前向きな財務処理を実施しましたが、トータルで91億円の改善となりました。

その結果、当期純利益は、前期比74億円増益の961億円となり、14期連続で過去最高益を更新しました。

2015年業績計画

売上高は、国際事業において、オセアニアでの成長カテゴリーの拡大や東南アジアでの新規連結効果を含めた増収を見込んでいることに加えて、国内3事業における主力ブランドの強化などによる売上拡大により、前期比645億円増収の1兆8,500億円を見込んでいます。

営業利益は、国内事業においては、原材料市況の上昇や円安によるコストアップなどのマイナス要因がありますが、ミックス改善やシナジーの拡大に向けた取組みなどにより、着実に収益性の向上を図ります。国際事業は、オセアニアにおけるSCMの高度化や事業統合などによるシナジー拡大と、東南アジアの増収効果などにより、大幅な増益を見込んでいます。

営業外損益は、持分法投資損益が19億円増加する一方で、前期に発生した為替差益などの反動などにより、トータルでは9億円のマイナスを見込んでいます。これにより、経常利益は前期比58億円増益の1,390億円を見込んでいます。

尚、持分法投資損益は、青島ビール社と康師傅飲品社の業績は従来通り前年並みとしていますが、為替のプラス影響12億円を加味した上で、インドネシアの合弁販売会社の業績回復などを織り込でんいることから、トータルでは、前期比19億円の増益計画としています。

特別損益では、前期に発生した特別利益が無くなるため、トータル110億円の悪化を見込んでいる一方で、税負担の軽減があることから、当期純利益では、前期比59億円増益の750億円を目指します。

酒類事業の総括と方針

以降、参考資料です。

ビール類販売実績と計画

「スーパードライ」ブランドの取り組み

発泡酒・新ジャンルの取り組み

その他酒類、ドライゼロの概況

飲料事業の総括と方針

アサヒ飲料社:販売実績と計画

アサヒ飲料社:収益構造の改革と協業シナジー

食品事業の総括と方針

国際事業の総括と方針

オセアニア事業の総括と方針(1)

オセアニア事業の総括と方針(2)

オセアニア事業の総括と方針(3)

東南アジア事業の総括と方針

中国ビール事業と『スーパードライ』のグローバル展開

中国持分法適用会社

<参考資料>

(参考)収益構造改革と酒類事業の広告販促費

(参考)中国持分法適用会社の四半期業績

(参考)為替影響一覧

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