本年上半期は、全事業で増収を果たしたことに加えて、収益構造改革の着実な進捗などにより、決算としては、計画を上回る増収・増益で折り返すことが出来ました。
各事業の進捗としては、酒類事業では、国産ウィスキーや輸入ワイン、ビールテイスト飲料などが計画を上回り、総合酒類企業としてのブランド基盤を拡大しました。また、海外では、成長カテゴリーの強化や統合シナジーの拡大などにより、オセアニア事業の構造改革が着実に進展しました。
一方で、競争環境が厳しさを増すなか、主力のビール類や飲料事業におけるミックス改善が未達となり、海外では、インドネシアの成長戦略が遅れているなど、各事業で課題も残しています。
また、事業基盤の強化では、ワイン専門商社「エノテカ」の株式取得や、大塚グループとの自動販売機の提携をスタートしました。加えて、グループ内では、飲料や食品会社の事業再編を進めるなど、次期中計を見据えた事業構造の改革にも積極的に取り組んでます。
さらに、中期計画の最終年度においてKPIの達成確度を高めるため、5月から200億円の自社株買いを実施するなど、最適な資本政策も実行しました。
こうした上半期の進捗を受けまして、通期の事業方針としては、激化する競争環境の変化にも柔軟に対応しながら、先ずは年初の計画を着実にやり切り、中期計画の目標達成を目指します。
その上で、各事業の課題解決に取り組みながら、持続的な成長を目指したブランド投資やグローバルな成長基盤を強化していく方針です。
また本年は、次期の中期経営計画の策定を進めており、現在、最終的な議論を詰めている段階ですが、引き続き、「企業価値の向上」を重視した現中期計画の方針を踏襲しながら、更なる経営改革を推進します。
本年6月から「コーポレートガバナンス・コード」が適用されるなど、日本企業の経営スタイルの進化が求められる中、引き続きROEを基軸として「稼ぐ力」の強化と最適な資本政策を両立した改革を進めます。
売上高については、各事業の主力ブランドを中心とした売上拡大に加えて、酒類事業では3月末に株式を取得したエノテカ社、国際事業では昨年下期より連結したエチカ社が上乗せとなり、トータルでは、前期比456億円増収の8,568億円となりました。
営業利益については、増収効果に加えてシナジーを含めた収益構造改革を推進したことなどにより、全ての事業で計画を上回り、トータルでは、前期比36億円増益の473億円となりました。
営業外損益については、受取配当金などの増加に伴う金融収支の改善や持分法投資損益の増益などにより、トータルで67億円の改善となりました。
尚、持分法投資損益については、康師傅飲品社やインドネシア販社の減益要因はあったものの、3月3日に開示しています、伊藤忠商事株式会社の頂新ホールディングの株式保有形態の変更に伴う利益95億円を計上したことなどにより、前期比61億円の改善となりました。
この結果、経常利益は、前期比103億円増益の517億円となり、計画比では52億円の超過達成となりました。
特別損益については、主に、頂新ホールディングの持株会社の連結子会社化に加えて、6月末に韓国のロッテアサヒ酒類を子会社化したことに伴い発生した株式評価差益を、関係会社関連損益に45億円計上したことなどにより、トータルでは前期比44億円の改善となりました。
その結果、当期純利益は、前期比201億円増益の395億円となり、計画比で90億円の超過達成となりました。
売上高については、引き続き、各事業における主力ブランドの強化などによる売上拡大に加えて、6月末に子会社化したロッテアサヒ酒類も含めた酒類・国際事業の新規連結会社の上乗せ効果などにより、前期比745億円増収の1兆8,600億円を見込んでいます。
営業利益については、上期の進捗を受けて、主にインドネシアの業績を見直した国際事業を下方修正していますが、酒類、食品事業でカバーし、トータルでは、前期比67億円増益の1,350億円と年初計画の達成を目指していきます。尚、上期の営業利益は、計画を43億円上回りましたが、カルピス社やアサヒフードアンドヘルスケア社の上期実績には、経費の期ズレが含まれていることに加えて、ビール類の販売数量動向や海外子会社の為替変動による調達コスト増加のリスクなどを踏まえて、年初計画を据え置いています。
経常利益と当期純利益については、上期には、営業外損益や特別損益に、頂新ホールディングの株式保有形態の変更に伴う利益や関係会社の株式評価差益などを計上しましたが、通期については、それぞれ、年初の予想を据えて置いています。
その考え方について説明します。
先ず、営業外損益については、主に持分法投資損益が82億円増加する一方で、「その他収支のその他」が87億円減少する見込みとしております。
持分法投資損益については、上期の実績に、青島ビール社と康師傅飲品社の前年下期の実績を織り込んだ上で、円安による為替影響15億円の押し上げ効果などを反映しています。
一方で、中国経済減速による持分法適用会社の減益や円高による為替差損の発生など、現時点で確定できないリスクに対応する原資を「その他収支のその他」の中に一部見込んでいます。
さらに、特別損益についても、上期に計上している関係会社関連損益などの増益要因がありますが、下期には、事業再編費用や次期中計から導入を予定している国際会計基準を見据え、資産効率化の取り組みを強化する方針であり、その原資を「その他特別損益」の中にも見込んでいることにより、経常利益と当期純利益を年初計画のまま据え置いています。
営業外損失や特別損失の具体的な内容や費用が現時点で確定している訳はありませんが、オセアニアにおけるSCMの統廃合や組織統合の一部前倒しや飲料・食品事業の再編関連費用に加えて、生産設備の除却の前倒しなど、固定資産の圧縮を中心に検討していく方針です。
本年は、中期経営計画2015の最終年度となるので、目標である当期純利益750億円の必達を目指すと共に、来期以降の資産効率の向上や利益成長を促進する施策を推進していきたいと思います。
中期経営計画の定量目標の進捗と事業毎のガイドラインについて簡単にご説明します。
こちらは、上半期に実施した200億円の自社株買いと業績修正を反映した表となります。
ポイントとしては、年初計画をきちんとやり切ることで、中期経営計画のKPIを着実に達成し、次期の中期経営計画に繋げていくことになります。
一方、ガイドラインにおいては、本業の成果であるEBITDAの成長率や トータルの営業利益率が未達となっていることが課題であり、下方修正している項目や事業については、その課題を明確にして、次期中計の戦略に活かしていく必要があります。
今後も持続的にROEやEPSを向上させていくためには、事業利益の成長によって実現していくことが最優先課題となります。
各事業の、これまでの進捗を踏まえながら、その課題や今後の方針についてポイントをご説明します。
こちらの表には、事業別の営業利益率の推移を掲載しています。
まず、酒類事業からご説明します。
上半期のビール類市場全体は、昨年の消費税増税の反動などがあったものの、1–6月累計では1~2%の減少となり、ほぼ想定ラインで推移したと見ています。
そうした中、当社は、主力ブランドにおける機能性カテゴリーの強化などにより、発泡酒や新ジャンルでは計画を上回りましたが、ビールでは、プレミアム市場全体の成長が想定を下回る中、限定商品を中心とした競争が激化したことなどにより、トータルでは計画未達となりました。
一方で、国産ウィスキーや輸入ワイン、ビールテイスト飲料などにおいて、「竹鶴」「アルパカ」「ドライゼロ」といった、カテゴリートップが見えてきているブランドが多数育ってきています。
下期以降も、総合酒類企業として、各カテゴリートップクラスのブランドの育成に注力すると共に、課題となっているプレミアム市場のテコ入れなど、ミックス改善に向けた取り組みを再構築していきます。
ビール類の上半期の販売実績と年間計画をまとめています。
具体的に「ドライプレミアム」については、引き続き業務用の開拓を進めながら、9月からは、消費者ニーズに基づいて味やパッケージを刷新するとともに、来年に向けて、市場創造型の新たな展開も検討していく方針です。
プレミアム市場自体は、今後大幅な拡大は期待できないかもしれませんが、 デフレ脱却の流れや酒税改正などを踏まえると、市場全体のカテゴリーミックスは改善していく可能性が高いと見ています。
本年は、競争環境が激化していますが、短期的なシェアの変動に左右されることなく、中長期的な視点で、強いブランドの育成に注力すると共に、市場全体のプロフィットプールの拡大につながる、業界の健全化に対してもリーダーシップを発揮していきたいと考えています。
発泡酒、新ジャンルの販売動向他をまとめています。
ビール類以外のカテゴリーについて、まとめています。
続いて飲料事業についてご説明します。
上半期の飲料市場全体は、ほぼ前年並みで推移する中、当社の販売数量は、計画を上回る3.6%の増加となり、営業利益においても、カルピス社の製造益の上ブレなどにより、飲料事業トータルでは計画を超過達成しました。
但し、アサヒ飲料社については、競争環境の激化などにより、販売経費が増加したことに加えて、炭酸やコーヒーが計画に届かず、ミックス改善に課題を残す結果となりました。
下期も、引き続き厳しい競争環境が想定されますが、主力ブランドを中心として、商品やチャネルミックスを重視した販売戦略とコスト全般のコントロールを徹底し、飲料事業トータルで年初計画の達成を目指します。
また飲料事業では、来年1月よりアサヒ飲料社とカルピス社を完全統合します。既に営業統合を行い、計画を上回るシナジーを創出していますが、 完全統合により、間接コストの効率化や研究開発などにおいて、更なるシナジーを発揮できる体制が整います。
競争環境が厳しさを増す飲料業界において、持続的に消費者やチャネルの支持を拡大しミックスを改善するには、商品の差別化が重要なポイントとなります。
飲料事業では、今年の計画をやり切ると共に、統合により両社が持つ健康志向に対応した技術の融合など、研究開発からマーケティング全般のイノベーションを推進していくことにより、中長期的な成長基盤を強化していく方針です。
アサヒ飲料社の業績推移や販売動向について、まとめております。
食品事業では、上半期は、主にアサヒフードアンドヘルスケア社の主力ブランドを中心とした売上拡大と全社の効率化の進展により、事業トータルで計画を上回り、売上・利益共に年間計画を上方修正しました。
下期以降も、引き続き主力ブランドの強化に注力していくことに加えて、飲料事業と同様に、来年の1月からは3社を統合し、「アサヒグループ食品」として食品事業の再編を進めていきます。
事業統合による間接コストの効率化はもちろん、食品事業全体のポートフォリオを俯瞰した選択と集中を図ります。加えて、研究開発の強化、人材の流動化など、中長期的な成長を目指した事業基盤を再構築していくことで、食品事業の収益性をさらに高めていく方針です。
国際事業の上半期の総括ですが、東南アジア事業がインドネシアの成長戦略の遅れにより計画未達となりましたが、構造改革が進んでいるオセアニア事業や中国事業でカバーし、事業トータルの営業利益は計画を超過達成しました。
但し、年間見通しとしては、上期の進捗を受けてインドネシア事業を下方修正したことに加えて、豪ドル安など為替の影響を加味し、営業利益を5億円下方修正しました。
オセアニア事業については、飲料と酒類の両事業において、成長カテゴリーでのブランド育成が進んでおり、さらにSCM全般や組織統合におけるシナジーの拡大により計画を超過達成しました。
今後も引き続き、各事業において、国内で培ったノウハウを活かしたブランド強化と収益構造改革により、オセアニア事業の持続的な成長を図っていきます。
一方、課題となっているインドネシアにつきましては、当社の専用工場が稼働したものの、市場が想定よりも減速する中、インドフード社との合弁による販売ルートの開拓が遅れているなど、製造数量が計画に達していないことが主な未達要因となっています。
こうした課題の解決に向けて、既にインドフード社側とも協議を重ね、営業体制の強化などに着手しています。業績貢献には多少時間を要することになりますが、オセアニア事業と同様に、これまで培ってきたノウハウを活かしながら、インドネシアでの中期的な成長基盤を強化していきたいと思います。
オセアニア事業の現地通貨ベースの実績と総括をまとめています。
オセアニア事業の業績と事業別の商品構成比等をまとめています。
オセアニア事業における成長分野での取り組みをまとめています。
東南アジア事業の総括と方針をまとめています。
中国事業と「スーパードライ」のグローバル展開をまとめています。
最後に、次期の中期計画を見据えた経営改革の方向性ついてご説明します。
次期の中期計画でも、引き続き「企業価値の向上」を重視した経営を継続していく方針です。
一方で、ROEやEPSの向上については、資本政策に依存するのではなく、課題となっているEBITDAの成長率など、従来も増して「稼ぐ力」の強化に重点を置く必要があると考えています。
そのためには、国内3事業の収益基盤の盤石化と国際事業の成長ドライバー化が柱となりますが、合わせてM&Aにより成長基盤を拡大することで、持続的な成長に対する期待値が高いグループを目指していく方針です。
次期中計では、先ず数値目標ありきといった計画ではなく、きちんと目指すべき方向性を示しながら、数値目標のみに縛られない、より柔軟な成長戦略を推進していく方針です。
また本年は、「中長期的な企業価値の向上」を目指した取り組みの一環として、上半期に「統合報告書」と「コーポレートガバナンス・ガイドライン」を策定しました。
それぞれのポイントについてご説明したいと思います。
○統合報告書の作成
当社としては初めて、アニュアルレポートとCSRレポートを融合した「統合報告書」を作成しました。
統合報告書は、「国際統合報告評議会」が公表するフレームワークに基づいて、財務情報と非財務情報をまとめた統合的コミュニケーションツールとして編集しています。「統合報告書」を作成する意義としては、これまでは、各ステークホルダーに対してバラバラに発信してきたビジョンや戦略などの非財務情報を、先ずは一元的に整理することにあります。
これにより、「持続的な企業価値の創造」に向けて、グループ全体、社員全員のベクトルを合わせていくこと、また、社外に対しても、一貫した分かりやすい情報整備で透明性を高め、ステークホルダーとの対話を深めていくことを目指しています。
さらに、統合報告が求める「統合思考」の経営では、財務的価値だけでなく、人材やブランドなど「見えない資本」を含めた全ての資本の高度化により、 「広義の企業価値の向上」を目指した経営が求められています。右下にいくつかのロゴを掲載していますが、当社は2013年には「なでしこ銘柄」、また本年は「健康経営銘柄」「攻めのIT経営銘柄」などに選定されており、ダイバーシティや活き活きとした職場作りの推進、IT投資による知的資本の高度化などの観点でも、投資対象として一定の評価を頂いています。
今後は、こうした人材投資、IT投資などを更に強化し、例えばITインフラの高度化をビジネスモデル全般の進化に繋げるといったイノベーションが、 持続的な成長には大変重要になってくるものと思います。短期的な業績だけでなく、「中長期的な企業価値の創造」に向けて、あらゆる資本の高度化、そのための経営資源の配分といった視点も踏まえて、次期の中期計画では、具体的な変化事実を積み上げていく方針です。
○コーポレートガバナンス・ガイドラインの策定
策定時期が前後したため、統合報告書には盛り込んでいませんが、コーポレートガバナンスの一層の強化を図るため、7月に新たなガイドラインを策定し、コーポレートガバナンス・コードに対する取組方針を公表しました。
当社は従来から、経営と執行の分離や複数の社外取締役の選任などに加えて、積極的な情報開示と建設的な対話を深めることにより、コーポレートガバナンスの強化に取り組んできました。
今後も、対話を踏まえて策定してきたビジョンなり経営計画を着実に実行し、一層の経営改革を推進するには、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行う「攻めのガバナンス」が不可欠であると認識しています。
ガイドラインに関しては、更なるガバナンスの充実には、経営陣のサクセッション・プランやパイプラインの充実、また、取締役会の実行性の分析・評価など、さらに具体化していくべき課題もあります。
また、ガバナンスは、あるべき形を作るということだけでなく、そこには役員をはじめ社員にも腑に落ちる「魂」を入れていくことが大切であり、そのために経営陣や社員の評価基準や報酬体系の見直しなども検討していく方針です。
こうした取り組みの積み重ねが、経営陣と社員が一体となって、「持続的な成長」と「中長期的な企業価値の向上」をより強く意識して業務に取り組む「企業風土」を醸成していくものと認識しています。
ガバナンスの改革には終わりは無く、大切なことは、統合報告書と同様にこうしたガイドラインを示しながら、より建設的な対話を深めていくことだと考えています。
これ以降、参考資料となります。