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ニュースリリース

アサヒグループホールディングスのニュースリリース

ニュースリリース

2019年7月2日
アサヒグループホールディングス株式会社

「香りに優れたグラスの形状設計手法の開発」が
平成30年度日本包装学会論文賞受賞
〜アルコールの動きを特殊カメラとCAE技術を活用して解析〜

※:CAE(Computer Aided Engineering)とは、“ものづくり”における研究・開発工程で従来行われていた試作品による検証や実験のかわりに、コンピュータ上の仮想的な試作品を用いてシミュレーションし、分析する技術。

アサヒグループホールディングス(株)(本社 東京、社長 小路明善)傘下のアサヒクオリティーアンドイノベーションズ(株)(以下、AQI社)の研究者が発表した「香りに優れたグラスの形状設計手法の開発」(著者:AQI社プロセス開発研究所 佐藤英明)に関する研究開発論文が、「平成30年度日本包装学会論文賞」を受賞しました。表彰式は、7月12日(金)に東京大学にて行われます。

日本包装学会は、包装に関する全ての分野の技術及び科学の発展を図ることを目的に設立された学術団体です。論文賞は、その年の日本包装学会誌に掲載された論文の中から、独創性や有益性などの観点から最も優れた研究者を選定し、贈られるものです。

2017年に開発した「香りに出逢うグラス」

2017年に開発した「香りに出逢うグラス」

酒類及び飲料で使用されるグラスの形状は、設計段階では香りの拡散や残留を予測することが難しく、仮説をもとに試作品を作成し、パネリストによる官能評価をもって最適な形状を決定しています。また、設計者の勘に頼った形状設計となることが多く、一つの課題となっていました。
 今回受賞した「香りに優れたグラスの形状設計手法」は、CAE技術の活用により開発されました。アルコールの香りはグラス内の空気層に含まれることから、特殊な赤外線サーモグラフィーカメラによってアルコールガスの流れを可視化し、その動きと拡散する流れをCAEによって解析しました。これをもとに、より香りの拡散が高まる形状を割りだし、グラス設計に取り入れました。

2017年末には、『ブラックニッカ リッチブレンド』のグラス付セット商品として開発した「香りに出逢うグラス」の設計において、同技術を取り入れました。ウイスキーそのものの香りを、より豊かに感じていただけるグラス形状が好評をいただきました。

■平成30年度日本包装学会論文賞

受賞者 佐藤英明(さとう ひであき)
所属 アサヒクオリティーアンドイノベーションズ(株)
プロセス開発研究所
表彰式 2019年7月12日(金)9:30-10:30
東京大学弥生講堂にて開催
論文名 香りに優れたグラスの形状設計手法の開発(執筆者:佐藤英明)
掲載誌 日本包装学会誌 Vol.27 No.6 (2018)425-434
主な特許 特願2016-155839 飲用容器の形状決定方法およびプログラム
意匠登録1587163 蓋付き飲用グラス

【ご参考】
■CAEとは

Computer Aided Engineering(CAE)は、“ものづくり”における研究・開発工程で、従来行われていた試作品による検証や実験のかわりに、コンピュータ上の仮想的な試作品を用いてシミュレーションし、分析する技術です。
特に一点の試作規模が大きい航空・自動車業界をはじめ、建築、機械メーカーなどで広く用いられています。

■CAEを利用するメリット

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コンピュータの膨大な処理能力を活かすことで、注目している事象について多角的に漏れなく実証することができます。また、開発初期からCAEを導入することで、試作や実証実験にかかるコスト・時間を大幅に削減できるうえ、目視では捉えることのできない構造物内部の状態や、地球上の環境では再現できない現象まで模擬できることが大きなメリットです。
 CAE技術の導入はものづくりにおいて大幅な効率化をもたらす一方、扱いには高度な専門性が必要なうえ、課題によって解析に必要な知識が異なるため、それぞれの分野に特化した専門家が対応するというのが一般的です。そのため導入コストや人材面のハードルが高く、食品企業などではCAEの活用事例が多くありません。

■アサヒグループでのCAE活用事例

アサヒグループは、食品業界では先駆けて約10年前にCAE技術を導入し、今回の受賞技術をもとに設計した「香りに出逢うグラス」をはじめ、様々な商品開発や研究に役立ててきました。

a) 容器開発の高効率化

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環境負荷低減のため、缶を薄肉化することで使用する資材量の削減に取り組んでいます。しかし流通中は缶の温度が高くなり、同時に内部の圧力が上昇するため、あまり薄い缶では変形する場合があります。そのため都度缶を試作し、実験により評価する必要がありますが、試作と評価には数週間の期間を要します。そこでCAEを活用し耐圧シミュレーションモデルを作成しました。これにより一つのケースを数分で評価できるようになり、より効率的で高精度な容器開発が可能となりました。

b) 殺菌条件の最適化

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チューハイの製造では、微生物の増殖等を防止するため、加熱殺菌することが一般的です。しかしあまり高い温度をかけると風味の劣化につながるため、商品の特長(アルコール濃度、炭酸の強度など)に応じて必要最低限の殺菌温度を都度検証する必要があります。これまで蓄積されてきた商品特徴と殺菌温度の関係を示すデータを用い、CAEでシミュレーションすることで、アルコールと炭酸の強度に応じて最適な殺菌温度を算出できる、数式モデルを作成しました。

c) 飲み込みやすい形状設計

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より「飲み込みやすい」錠剤を開発するため、どのような形状の場合に飲み込みやすくなるか予測し、設計する手法を構築しました。
 錠剤の嚥下(食物などを飲み込むこと)試験を実施し、錠剤形状(錠剤の直径、錠剤の厚み、曲率半径)と飲み込みやすさの関係性を表した「嚥下性マップ」をCAEにより作成しました。このマップの活用により、単純に錠剤の厚みや直径が小さいものが嚥下性に優れるわけではないことや、錠剤の体積に応じて、それぞれ飲み込みやすい形状も異なることが新たに分かりました。この成果はアサヒグループのサプリメント商品に活用されています。

■アサヒグループにおけるCAE技術の今後の展望

アサヒグループでは今後、これまで取り組んできた分野横断的な課題解決のノウハウを活かし、グループ外の課題解決にも貢献することを目指しています。
そこで2019年7月より、アサヒグループの独立研究子会社「アサヒクオリティーアンドイノベーションズ株式会社」は、CAEソフトウェア分野の商品販売およびエンジニアリングサービスにおいて国内大手である「サイバネットシステム株式会社(※)」と共同で、医薬品・食品業界向けのCAE技術支援サービスを試験的に開始します。開発や生産現場での様々な課題とご要望をヒアリングし、最適なシミュレーション方法を両社が検討、実際にCAEを用いてシミュレーションを実施したうえで、解析結果や改善の方法などをご提案します。
まずは本サービスを試験的に開始することで、医薬品・食品業界におけるCAE技術の活用可能性を検証します。

※サイバネットシステム株式会社について

サイバネットシステム株式会社は、科学技術計算分野、特にCAE関連の多岐にわたる先端的なソフトウェアソリューションサービスを展開している企業です。電気・輸送用機器、機械、医療など様々な分野におけるソフトウェア、教育サービス、技術サポート、コンサルティングを提供するとともに、企業のIT資産管理ツールやITソリューションも提供しています。
詳しい情報については、Webサイトをご覧ください。https://www.cybernet.co.jp/