「香りに優れたグラスの形状設計手法の開発」が 平成30年度日本包装学会論文賞受賞
~アルコールの動きを特殊カメラとCAE※技術を活用して解析~
- CAE(Computer Aided Engineering)とは、“ものづくり”における研究・開発工程で従来行われていた試作品による検証や実験のかわりに、コンピュータ上の仮想的な試作品を用いてシミュレーションし、分析する技術。
アサヒグループホールディングス(株)(本社 東京、社長 小路明善)傘下のアサヒクオリティーアンドイノベーションズ(株)(以下、AQI社)の研究者が発表した「香りに優れたグラスの形状設計手法の開発」(著者:AQI社プロセス開発研究所 佐藤英明)に関する研究開発論文が、「平成30年度日本包装学会論文賞」を受賞しました。表彰式は、7月12日(金)に東京大学にて行われます。
日本包装学会は、包装に関する全ての分野の技術及び科学の発展を図ることを目的に設立された学術団体です。論文賞は、その年の日本包装学会誌に掲載された論文の中から、独創性や有益性などの観点から最も優れた研究者を選定し、贈られるものです。
酒類及び飲料で使用されるグラスの形状は、設計段階では香りの拡散や残留を予測することが難しく、仮説をもとに試作品を作成し、パネリストによる官能評価をもって最適な形状を決定しています。また、設計者の勘に頼った形状設計となることが多く、一つの課題となっていました。
今回受賞した「香りに優れたグラスの形状設計手法」は、CAE技術の活用により開発されました。アルコールの香りはグラス内の空気層に含まれることから、特殊な赤外線サーモグラフィーカメラによってアルコールガスの流れを可視化し、その動きと拡散する流れをCAEによって解析しました。これをもとに、より香りの拡散が高まる形状を割りだし、グラス設計に取り入れました。
2017年末には、『ブラックニッカ リッチブレンド』のグラス付セット商品として開発した「香りに出逢うグラス」の設計において、同技術を取り入れました。ウイスキーそのものの香りを、より豊かに感じていただけるグラス形状が好評をいただきました。
コンピュータの膨大な処理能力を活かすことで、注目している事象について多角的に漏れなく実証することができます。また、開発初期からCAEを導入することで、試作や実証実験にかかるコスト・時間を大幅に削減できるうえ、目視では捉えることのできない構造物内部の状態や、地球上の環境では再現できない現象まで模擬できることが大きなメリットです。
CAE技術の導入はものづくりにおいて大幅な効率化をもたらす一方、扱いには高度な専門性が必要なうえ、課題によって解析に必要な知識が異なるため、それぞれの分野に特化した専門家が対応するというのが一般的です。そのため導入コストや人材面のハードルが高く、食品企業などではCAEの活用事例が多くありません。
アサヒグループでは今後、これまで取り組んできた分野横断的な課題解決のノウハウを活かし、グループ外の課題解決にも貢献することを目指しています。
そこで2019年7月より、アサヒグループの独立研究子会社「アサヒクオリティーアンドイノベーションズ株式会社」は、CAEソフトウェア分野の商品販売およびエンジニアリングサービスにおいて国内大手である「サイバネットシステム株式会社(※)」と共同で、医薬品・食品業界向けのCAE技術支援サービスを試験的に開始します。開発や生産現場での様々な課題とご要望をヒアリングし、最適なシミュレーション方法を両社が検討、実際にCAEを用いてシミュレーションを実施したうえで、解析結果や改善の方法などをご提案します。
まずは本サービスを試験的に開始することで、医薬品・食品業界におけるCAE技術の活用可能性を検証します。
- サイバネットシステム株式会社について
サイバネットシステム株式会社は、科学技術計算分野、特にCAE関連の多岐にわたる先端的なソフトウェアソリューションサービスを展開している企業です。電気・輸送用機器、機械、医療など様々な分野におけるソフトウェア、教育サービス、技術サポート、コンサルティングを提供するとともに、企業のIT資産管理ツールやITソリューションも提供しています。
詳しい情報については、Webサイトをご覧ください。https://www.cybernet.co.jp/