「ビール醸造工程における酵母スラリー※撹拌システムの開発」 が「令和元年度 化学工学会技術賞」を受賞
-高品質・安定的なビール製造のための酵母ハンドリングの技術開発-
アサヒグループホールディングス株式会社(本社 東京、社長 小路明善)の独立研究子会社であるアサヒクオリティーアンドイノベーションズ株式会社(社長 佐見学)の技術開発成果である「ビール醸造工程における酵母スラリー撹拌システムの開発」(代表者 アサヒクオリティーアンドイノベーションズ(株)シニアエキスパート 川村公人)が、「令和元年度 化学工学会技術賞」を受賞しました。
なお本研究は、株式会社神鋼環境ソリューション(本社 兵庫、社長 粕谷強)と共同で実施しました。
化学工学会は、化学工学の学術的水準の進展を支え、人材を育成し、それらの成果を社会に有機的に還元するための、中心的学会として活動することを目的に設立された学術団体です。技術賞は、化学工学に関する技術、または化学関連産業の技術、またはシステム開発に関して特に顕著な功績のあった研究に対して贈られる賞です。
【技術開発概要】
ビール醸造で最も重要な発酵工程を担う酵母は、温度や酸素量といった周囲の環境変化や、物理的なストレスに敏感に反応します。ビールの香りや味わいを構成する成分の多くは酵母がつくりだしているため、酵母にストレスがかかり発酵に影響が生じると、目指すビールの香味をつくりだすことが困難になります。そのため、高品質なビールを安定的に製造するには、常に酵母を適切にハンドリングし、安定した発酵工程を実現するための技術が欠かせません。
そこで今回、一度発酵を終えて回収した酵母の懸濁液(以下、酵母スラリー)を再度利用するまで保管する工程において、酵母の活性を維持しながら濃度を均一に保つことで安定した発酵を促す技術を開発し、多くの工場へ展開・実装しました。
通常、酵母は保管中に凝集する傾向があり、タンクの上下で濃度の差が生じます。すると次に利用する際に酵母の濃度にばらつきができ、発酵工程が不安定となるため、保管している間も撹拌操作などで濃度を均一にする必要があります。以前からいくつかの酵母撹拌機が開発されてきましたが、均一な状態になるまで強い力で撹拌すると酵母が大きくダメージを受け、逆に弱い力だと充分に撹拌することができず、最適なハンドリングが求められてきました。
そこで技術開発の際、まず撹拌による物理的な力と温度などの環境条件が、酵母の活性にどのように影響するかを詳細に解析し、「低温かつ短時間であれば、撹拌の際に酵母が受けるダメージを最小化できる」という仮説をたてました。そしてタンク内全体を混合できる装置を試作し、実際に酵母スラリーを撹拌することで仮設を検証しました。さらに実際の工場へ導入できるよう、低温のタンク内での撹拌の様子をコンピュータでシミュレーション・調整を繰り返しながら、酵母へのダメージを最小限に抑えられる撹拌システムを開発しました。
アサヒグループホールディングスについて
アサヒグループホールディングス株式会社は、ビールを中心とした酒類、飲料、食品で多様なブランドを世界で展開するリーディングカンパニーです。『期待を超えるおいしさ、楽しい生活文化の創造』をグループ理念のミッションとし、企業活動の根幹に据えています。
1889年に日本で創業して以来、数百年にわたる歴史と伝統をもった世界各地の醸造所やブランドをグループに統合し、絶え間ない革新に挑戦してきました。Asahi Super Dry、Peroni Nastro Azzurro、Kozel、Pilsner Urquell、Grolschといった独自価値をもつプレミアムビールをグローバルブランドとして展開しています。アサヒグループは、コーポレートステートメント「Make the world shine “おいしさと楽しさ”で、世界に輝きを」のもと、商品やサービスを通じて、人と人・自然・コミュニティ・社会とのつながりを生み出し、そのつながりで世界の今と明日を明るく輝かせることを約束しています。事業規模としては、年間100億リットルを超える酒類および飲料を世界中のお客さまに提供し、売上収益は2.7兆円を超えています。日本、欧州、オセアニア、東南アジアを中心に、世界各地で事業を展開する当社は、日本に本社を置き、東京証券取引所(プライム2502)に上場しています。