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アサヒグループの研究成果 ビール酵母細胞壁を用いた農業資材の
葉面散布によるバレイショの増収効果を
北海道大学との共同研究で証明

2018年3月7日
アサヒバイオサイクル株式会社

アサヒバイオサイクル株式会社(本社 東京、社長 御影 佳孝)は、北海道大学農学研究院基盤研究部門(教授 松浦 英幸)との共同研究においてビール酵母細胞壁を用いた農業資材をバレイショの葉面に散布することによる増収効果について証明しました。本研究は3月15日〜3月18日に行われる日本農芸化学会2018年度大会(ホテルナゴヤキャッスル、名城大学で開催)で発表します。

研究背景

世界の人口は2050年までに90億人を突破し、現在の1.5倍の食糧が必要になると予想されています。また、バイオ燃料の発展や異常気象などの影響により、今後、ますます人類の食糧確保が重要になっていくと考えられます。アサヒグループでは、『世界の人々の健康で豊かな社会の実現に貢献する』ことを経営理念に掲げており、ビール醸造副産物である「ビール酵母」を活用した農業資材開発を2004年より進めています。これにより、農産物収量の増加や、低農薬など人や環境への影響が少ない農業への貢献、および地球温暖化防止への貢献を目指しています。

研究目的

酵母の細胞壁は植物病原菌の細胞壁に類似した構造を有しています。よって、酵母の細胞壁を用いた農業資材を葉面散布することで植物の防御応答を誘導し、ジャスモン酸(JA)※1などの蓄積を促すことが期待できます。また、北海道大学の研究ではJA 類によるバレイショの塊茎誘導活性が報告されています。そこで、酵母細胞壁を用いた農業資材のバレイショへの葉面散布はバレイショ塊茎の増収につながるのではと想定しました。これを証明するために以下の実験を行いました。

ジャスモン酸(JA):植物ホルモンの一種。環境ストレスへの耐性誘導ホルモン。

研究方法・結果

圃場をA、B、C の三つの区画に分け、それぞれの区画に無散布用と処理用のバレイショを10株ずつ植えました。処理を施したビール酵母細胞壁を用いた農業資材を200倍に希釈し葉面散布しました。葉面散布の回数は地上に葉部が現れた生育初期、開花直前、塊茎収穫予定日の約3 週間前の3 回としました。バレイショの収量調査を行ったところ、無散布区と比べて顕著な増収効果が確認できました(図)。さらに、バレイショ表皮に含まれる植物ホルモンの分析から、ジャスモン酸および12-oxo-phytodienoic acid (OPDA)※2の含有量が、葉面散布のバレイショ塊茎において有意に上昇していることがわかりました。また、葉面散布により、地上部葉内のOPDA 含量が有意に上昇していることもわかりました。以上の実験からバレイショへの葉面散布はバレイショ塊茎の増収につながることが考察されました。

OPDA:ジャスモン酸の前駆体。

図 バレイショの収量の比較
図 バレイショの収量の比較

アサヒグループは「中期経営方針」の重点課題の一つとして「ESGの取り組み強化」を掲げており、企業価値の向上を目指した取り組みを行っています。2017年3月には、本研究で培った知見を活かし、ビール醸造の副産物である「ビール酵母細胞壁」を有効活用し、環境保全型農業の構築、温室効果ガス排出削減などの環境・社会的課題の解決を通じ、持続可能な社会の実現に貢献することを目指した新規事業会社「アサヒバイオサイクル株式会社」を設立しました。

アサヒグループは、今後も「アサヒらしい取り組み」を通じ「サステナビリティの向上を目指したESGへの取り組み強化」を実現させていきます。

酵母細胞壁の研究についてはこちらもご参照ください。

微生物と発酵のチカラを学ぶ研究情報誌「Kin’s」Vol.20
https://www.asahigroup-holdings.com/research/report/kins/pdf/kinsvol20view.pdf

研究レポート
https://www.asahigroup-holdings.com/research/group/report/report38.html

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