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CO2排出量削減に向けた新たなクリーンエネルギーモデルの開発 ビール工場排水由来ガスによる固体酸化物形燃料電池試験で
2,000時間超連続発電に成功 −第25回燃料電池シンポジウム(5月17日/東京)にて発表−

2018年5月15日
アサヒグループホールディングス株式会社

アサヒグループホールディングス株式会社(本社 東京、社長 小路明善)は、ビール工場の排水処理工程から得たバイオメタンガス※1(以下、バイオガス)を、固体酸化物形燃料電池(以下、SOFC)※2発電に適した高純度なバイオガスに精製するプロセスを確立しました。また、本プロセスにより精製したバイオガスを用いて試験用SOFC発電装置による発電試験を行った結果、2,000時間超連続発電に成功しました。現在も発電は順調に継続しており、2019年4月までに10,000時間連続運転の達成を目指しています。本研究成果は、九州大学次世代燃料電池産学連携研究センター(NEXT-FC)(本部 福岡市、センター長 佐々木一成)との共同研究によるもので、詳細については第25回 燃料電池シンポジウム(2018年5月17日、東京都江戸川区)※3にて発表いたします。

今回、新たに開発したバイオガス精製プロセスは、高純度な精製を実現するとともに、低コストでの導入が可能な設計としています。今後事業実装プロセスとして確立できれば、ビール工場に限らず幅広い食品工場のほか、嫌気性排水処理設備を導入している多くの工場・施設でも排水由来のバイオガスを用いたSOFCの活用が可能となり、CO2排出量削減に貢献できる技術であると考えます。

アサヒグループでは、持続可能な地球環境の実現を目指し、更なるCO2削減に向けた新技術の開発に取り組んでまいります。

ビール工場排水を利用した燃料電池(SOFC)による発電モデル

ビール工場排水を利用した燃料電池(SOFC)による発電モデル画像

ビール工場排水由来ガスを利用した燃料電池(SOFC)試験の概要

環境に優しいバイオガスを、より効率よく活用するために

アサヒグループでは、国内ビール工場8拠点、国内飲料工場5拠点において嫌気性排水処理設備を導入しています。本設備は、製造工程で出る排水をメタン発酵法により処理し、そこで得られたバイオガスをボイラーなどで燃焼することで熱エネルギーとして再び利用しています。

一方、SOFCはエネルギー変換効率が高い発電手段として知られていますが、現在稼働しているSOFCのほとんどは、化石燃料由来の水素または都市ガスを利用しているため、CO2排出量削減への効果は限定的な状況となっています。

そこでアサヒグループでは、工場排水処理より得られるバイオガスを用いてSOFC発電を行い、効率よく電力を生成することで、さらなるCO2削減を目指すための研究をスタートしました。

バイオガスに含まれる不純物の除去プロセスを高精度かつ低コストで実現

排水から得たバイオガスを利用してSOFCを発電させるにあたり、最も大きな課題となるのは、ガス中に含まれる不純物の存在です。これらの物質がSOFCによる発電を阻害するため、安定的な発電を得るためには不純物を取り除く必要があります。また、社会実装を加速的に進めるためには、導入コストを抑えることが不可欠です。

そこでアサヒグループでは、ビール工場の嫌気性排水処理設備から得られたバイオガスに含まれる不純物を除去するための精製プロセスを新たに構築し、高純度かつ低コストで導入可能なシステムを開発しました。

ここで得られた精製バイオガスを用いて、アサヒグループと九州大学が共同で開発した試験用SOFC発電装置にて試験を開始した結果、今般、長期連続発電試験に成功したものです。

発電は現在までに2,000時間を超えて順調に継続しており、今回精製したバイオガスが発電を阻害する事象は確認しておりません。

今後は、精製バイオガスによる季節変動などの影響を評価するため、最長10,000時間の長期連続発電を目指します。

<用語解説>

バイオメタンガス(バイオガス)
バイオメタンガスは、家畜の糞尿や食品残渣などの有機性廃棄物が微生物の働きによってメタン発酵することで発生するガスのことです。植物(栽培作物)由来の原料を用いて得られたバイオガスは、植物の成長段階でCO2を吸収しており、燃焼時にCO2が排出されたとしても、全体でみるとCO2の量は増加しないことから、カーボンニュートラルという特性を持っています。アサヒグループのビール工場・飲料工場では主に植物由来の原料から製造を行っているため、そこで得られたバイオガスはカーボンニュートラルであるといえます。

固体酸化物形燃料電池(SOFC : Solid Oxide Fuel Cell)
燃料電池は、燃料が持つ化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換するため、高効率な発電技術として注目されています。今回の試験では、多様な燃料の使用が可能で高い発電効率が得られる固体酸化物形燃料電池(SOFC)(三菱日立パワーシステムズ社製)の3素子セルを用いて、アサヒグループと九州大学が共同で開発した試験用SOFC発電装置で試験を実施しました。

第25回 燃料電池シンポジウム
http://www.fcdic.com/2017/10/2580/

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