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−青山学院大学陸上競技部員が効果を実証− 「ラクトバチルス・ガセリCP2305株」が
運動による心身両方の慢性的な疲労を回復させることを確認 第74回 日本体力医学会大会にて発表(2019年9月19日〜21日、茨城)

2019年10月4日
アサヒグループホールディングス株式会社

アサヒグループホールディングス(株)(本社 東京、社長 小路 明善)傘下で、アサヒグループの先端研究機能を担うアサヒクオリティアンドイノベーションズ(株)(本社 茨城、社長 佐見 学)のコアテクノロジー研究所乳酸菌技術部は、徳島大学大学院医歯薬学研究部病態生理学分野の西田准教授らと共に、アサヒグループが保有する微生物「ラクトバチルス・ガセリCP2305株※1」の摂取により、運動によってかかる心身両方への慢性的な疲労が回復することを確認しました。

試験は青山学院大学陸上競技部(神奈川県相模原市、部長 内山義英、監督 原晋)の協力のもと、日常的に強度な運動負荷がかかる長距離ランナーに対する効果を検証しました。本研究は、ヒト試験でラクトバチルス属の乳酸菌がアスリートの心身両方の慢性的な疲労を回復させることを、世界ではじめて明らかにしました。

2019年9月現在、当社調べ)こちらの研究成果は第74回日本体力医学会大会(2019年9月19日〜21日、茨城)にて発表致しました。また2019年6月にJournal of Functional Foodsに掲載※2されました。

研究背景

長距離ランナーは全身の持久力を高めるため、日々強度な負荷のかかるトレーニングが必要となります。また、大会での順位争いなど、精神的なストレス負荷も大きくなるうえ、ストレス抵抗性が低いとトレーニングの効率が落ちることも報告されているため、心身両方にかかる慢性的な疲労の回復が重要です。

一方アサヒグループ独自の微生物「ラクトバチルス・ガセリCP2305株」は、腸から脳への神経伝達を通じて中枢神経へ働きかけること(脳腸相関*3)で、整腸効果やストレス緩和効果などの機能をもつことが明らかになっています。また予備試験においてタンパク質合成遺伝子発現への影響など、肉体への効果ももつ可能性が示唆されていることから、今回「ラクトバチルス・ガセリCP2305株」が長距離ランナーの心身の疲労回復にどのような作用を示す

主な研究成果

「ラクトバチルス・ガセリCP2305株」の継続摂取により、長距離ランナーの心身両面の主観的疲労が有意に軽減しました。また一部の筋肉や骨の細胞増殖を促進する成長ホルモンも有意に増加しました。

主観的疲労感の変化グラフ、成長ホルモン濃度の変化グラフ

結論

今回の試験では、血中ヘモグロビンの濃度変化の抑制や、腸内フローラの占有率変化も確認されたことから、「ラクトバチルス・ガセリCP2305株」の摂取により、脳腸相関を介して全身のターンオーバーを促進して成長ホルモンや血中ヘモグロビンの産生に働きかけ、結果的に心身の疲労回復に効果を示す可能性があります。

アサヒクオリティーアンドイノベーションズ(株)は、「優れた健康素材を提供する研究開発」を推進し、お客さまの健康維持に貢献してまいります。

共同研究者からのコメント

徳島大学大学院医歯薬学研究部病態生理学分野

西田 憲生 准教授

本研究では、「ラクトバチルス・ガセリCP2305株」を含むスポーツ飲料の摂取が、腸内環境を改善し、成長ホルモンの分泌を促進することで、疲労回復を促す可能性が示されました。心身ともに強いストレス負荷がかかるアスリートに対して、ベストパフォーマンスを発揮するためのコンディションづくりに役立つことが期待されます。また、これまでにも、「ラクトバチルス・ガセリCP2305株」は、睡眠の質の改善効果やストレス緩和効果を持つことが報告されており、脳腸相関を介した新しい健康増進法として、幅広い世代に応用されることも期待できます。

ご協力いただいた青山学院大学陸上部からのコメント

青山学院大学体育会陸上競技部(長距離ブロック)

原晋監督
原 晋 監督

私は青山学院大学陸上競技部の駅伝チームを率いて今年で16年目のシーズンを迎えました。あらためて、長距離走は「無事これ名馬なり」の言葉があるように、年間を通じての継続的な練習消化はもとより、肉体的にも精神的にも鍛錬期であり例年3度延べ約30日行う夏合宿での走り込みを無事にこなすことがとても大切だと感じています。箱根駅伝出走選手の90%の選手が夏合宿練習消化率70%以上であるという裏付けデータもあります。

今回アサヒグループとの共同研究で判明した「ラクトバチルス・ガセリCP2305株」が運動による心身両方の慢性的な疲労を回復させることが確認できたことは、駅伝での復活優勝に向けチャレンジを進めていく青学大駅伝チームにとって大変に有益な事だと感じています。いち早く商品開発が行われる事を期待しています。

試験内容の詳細

実験方法

青山学院大学陸上競技部(長距離)の部員49名を2グループに分け、一方に「ラクトバチルス・ガセリCP2305株」を100億個含むスポーツ飲料を、もう一方に「ラクトバチルス・ガセリCP2305株」を含まないスポーツ飲料(コントロール)を1日1回200ml、毎日12週間継続して摂取してもらいました。摂取前、摂取6週間後、摂取12週間後に、心身の主観的疲労感のアンケート、血液分析、腸内フローラの網羅的解析を実施しました。

試験結果

1)心身の主観的疲労感の改善

主観的な疲労感の軽減
図1?主観的な疲労感の軽減*2)

摂取前後の主観的疲労感を比較した結果、「ラクトバチルス・ガセリCP2305株」摂取群では、コントロール群と比較して、心身両方の疲労感が有意に軽減しました(図1)。
(グラフは抗疲労臨床評価ガイドラインの、疲労感の主観指標として記載されているChalder Fatigue Scaleの総合得点を示しています)

2)血中の成長ホルモンの増加

血中成長ホルモンの増加
図2?血中成長ホルモンの増加*2)

血中の成長ホルモンは、肝臓に作用して骨格筋や骨など様々な部位の細胞増殖を促進する作用があります。またヘモグロビンは酸素を全身に運搬する役割を担っており、持久力のパフォーマンスの指標としても挙げられています。一般的に足底への衝撃が多いスポーツ選手では、赤血球が破壊され結果的にヘモグロビンの量が減少することが知られています。

摂取前後の血中の成長ホルモンの量を比較した結果、「ラクトバチルス・ガセリCP2305株」摂取群では、コントロール群と比較して、有意に増加しました(図2)。また血中ヘモグロビンについても、「ラクトバチルス・ガセリCP2305株」摂取群では、コントロール群と比較して、有意に変動を抑制しました。

3)腸内細菌叢の変化

糞便を採取し、抽出したDNAを次世代シーケンサーにより解析した結果、「ラクトバチルス・ガセリCP2305株」摂取群では、腸内細菌叢の多様性を有意に向上し、特に有用菌として知られるフィーカリバクテリウム属の占有率は有意に増加しました。フィーカリバクテリウム属の一部の菌は、酪酸産生菌として知られており、最新の研究で消化管の恒常性維持に重要な役割を果たすことが明らかになるなど、注目度が高まっています。

用語解説

「ラクトバチルス・ガセリCP2305株」
正式名称はLactobacillus gasseri CP2305株といいます。「ラクトバチルス・ガセリCP2305株」はアサヒグループ独自の微生物ライブラリーから選抜した微生物で、これまでに腸内環境の改善、精神的ストレスの緩和、また睡眠の質向上といった効果があることを明らかにしました。

掲載誌
Daisuke Sawada et al., Journal of Functional Foods, 57, 465-476, (2019)

脳腸相関
腸と脳は自律神経系を通じて双方向の情報伝達を行いながら、生体機能の恒常性を保っており、この仕組みを脳腸相関と言います。腸管からのシグナル伝達により中枢神経系の機能が調節されることも徐々に明らかになっており、腸内細菌やプロバイオティクス、パラプロバイオティクス(殺菌乳酸菌)は脳腸相関を通じて中枢神経系に影響を及ぼす可能性が注目されはじめています。

参考

アサヒクオリティーアンドイノベーションズ(株)コアテクノロジー研究所の乳酸菌技術部では、革新的な技術や商品をお届けするため、乳酸菌の新たな機能性を見出し、人々の健康増進に活かす研究に取り組んでいます。これまでに、整腸作用や免疫賦活効果をもつ乳酸菌だけでなく、今回の研究で明らかになった疲労感の軽減をはじめ、体脂肪低減、歩行機能改善といった、様々な機能を有する乳酸菌を見出しています。様々な乳酸菌の効果を検証する際、生きた乳酸菌だけでなく、乳酸菌がつくり出す成分や、菌体そのものにも機能性があることも明らかにし、活用の幅も広げています。

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