フリーズドライ食品の賞味期限はなぜ長い?理由を解説

2019.03.18

お湯を注ぐだけで食品が元の状態に戻る、フリーズドライ食品。長期間保存しても品質の変化が少ないので賞味期限が長いというメリットもあります。では、なぜフリーズドライ食品の賞味期限は長いのでしょうか?ここでは、フリーズドライ食品の賞味期限について解説します。

フリーズドライ食品の賞味期限が長いわけ

フリーズドライ食品の賞味期限は、多くの場合、数カ月から数年と長めに設定されています。なぜ、そんなに賞味期限が長いのでしょうか。理由を知るために、フリーズドライの加工方法について確認しましょう。

フリーズドライとは

フリーズドライとは

フリーズドライとは、「フリーズ(凍らせる)」と「ドライ(乾燥させる)」の文字通り「凍結乾燥」のこと。食品を凍結させ、真空凍結乾燥機にて真空下で乾燥させることで、フリーズドライ食品が出来上がります。太陽熱と自然の風を利用して食品を乾燥させる天日乾燥や、熱風を発生させ食品に吹きかけることで乾燥させる熱風乾燥とは異なり、凍らせた状態を保ったまま食品を乾燥させるのが大きな特徴です。フリーズドライ加工を施した食品は軽くて穴の空いたスポンジ状になっているので、お湯をかけるだけですぐに元の状態に戻ります。味や食感が保てるだけでなく、栄養価も損なわれにくいのが特徴です。

食品にフリーズドライ加工を施す際には、昇華という現象を用います。圧力を一定値以下まで減らせば、氷は水にならずに直接水蒸気へと変化します。この現象が昇華です。フリーズドライ加工は凍らせた食品を真空に近い状態まで減圧し、昇華に必要な熱を加えることで氷を水蒸気に変えます。そのため、高熱を加えなくても乾燥させることができるのです。

フリーズドライの賞味期限が長い理由

フリーズドライの賞味期限が長い理由

フリーズドライ加工を施した食品は、水分をほとんど含みません。水分が少なければ食品に含まれる成分や風味の変化を抑えることができるため、乾燥状態であるフリーズドライ食品の賞味期限は長いのです。

フリーズドライ食品の保存方法

フリーズドライ食品は賞味期限が長く、美味しく食べられる状態を長期間保てます。しかし保存方法に気をつける必要があるため、保管する際のポイントについて確認しておきましょう。

フリーズドライ食品を劣化させる原因

フリーズドライ食品を劣化させる原因

フリーズドライ食品の品質を劣化させる1番の原因は、高温にさらされることです。例えば、直射日光のあたる場所や高温の場所にフリーズドライ食品を放置してしまと化学変化が起きてしまい、劣化の原因につながってしまいます。

また、フリーズドライ食品を開封後、一度に食べきれない場合はとくに注意が必要です。そのとき考えられる劣化の原因としては水分と酸素が挙げられます。

フリーズドライ食品の特徴として、水分が抜けたときにできた穴が多数存在します。この穴に注いだお湯が入り込むことで、フリーズドライ食品は素早く元の状態に戻るのです。これは、水分の吸収スピードが早いことを意味します。つまり裏を返せば、空気中の水分に非常に弱く、湿気やすい性質があるのです。

空気中の水分を吸収することで、食品に含まれる成分や風味が変化してしまいます。従って、開封したフリーズドライ食品を保管する場合は、密封した容器に入れ高温多湿の場所を避けて保存するようにしましょう。

また、フリーズドライ食品だけでなく多くの食品に共通していえるが酸化による劣化です。酸化とは、ある物質が酸素と化学反応を起こし別の物質を作り出すことをいいます。

食品が酸化すると、色や風味が変化したり、栄養価が損なわれたりすることも。また、成分が酸化することで健康に悪影響を与える成分に変わってしまう危険性もあります。水分だけでなく、酸素にも注意して保管する必要があるといえるでしょう。

フリーズドライ食品保管のポイント

前述した通りフリーズドライ食品を保管するときは、劣化を防ぐために高温の場所に置くのは、避けるようにしてください。高温の場所を避ければよいので、冷蔵庫などで保管する必要はありません。

ちなみに食品に設定されている期限には、消費期限と賞味期限の2種類があります。消費期限は、定められた方法により保存した場合において、腐敗、変敗その他の品質(状態)の劣化に伴い安全性を欠くこととなるおそれがないと認められる期限を示す年月日のこと。弁当やケーキなどの傷みやすい食品に設定されています。消費期限が過ぎてしまうと食品が腐る可能性があるので、期限が過ぎたものを食べるのは避けましょう。

一方賞味期限は、定められた方法により保存した場合において、期待されるすべての品質の保持が十分に可能であると認められる期限を示す年月日のこと。フリーズドライ食品のほか、カップラーメンや缶詰、ペットボトル飲料、スナック菓子など消費期限に比べて腐りにくく品質の劣化がゆるやかで長期間保存できる食品に設定されています。

賞味期限が表示されている商品は、消費期限が表示されている商品とは異なり、期限が過ぎたからといってすぐに食品が腐るわけではありません。適切な温度で保存し、色や匂いなどに問題がなければ、賞味期限が過ぎても食べられます。ただし、風味は賞味期限内のものよりも落ちてしまうため、なるべく賞味期限内に食べるのがおすすめです。

災害時のための備えとして備蓄食品を保管している場合も、賞味期限が過ぎる前に食べ終え、新しい食品を購入するとよいでしょう。なお、一度開封してしまったら、期限に関わらず早めに食べなければなりません。※1

もっとおいしく フリーズドライ技術の進歩

フリーズドライ商品は技術開発が進んだことで、よりおいしくなり、バラエティに富んだ商品も増えています。従来、フリーズドライ商品といえば、味噌汁やスープ、インスタントコーヒーなどの飲み物、カップラーメンの具などが一般的でしたが、最近ではパスタやリゾット、親子丼などのさまざまなフリーズドライ商品が販売されています。ここからは、さまざまなフリーズドライ商品を生み出す技術をご紹介します。

さまざまな食品のフリーズドライを可能にする技術力

さまざまな食品のフリーズドライを可能にする技術力

フリーズドライは、ほかの乾燥方法と比べて栄養価が損なわれず、味や食感が元の状態に戻りやすいというメリットがあります。そのため、適切に製造する技術が必要です。

例えば、フリーズドライ食品の代表ともいえる味噌汁の例を見てみましょう。味噌汁は、味噌の種類や使用している具材の種類によって素材の性質や水分量が異なるためフリーズドライを行うのが難しく、製造条件を誤ってしまうと、お湯を注いだときにもとの食品と同じような風味やラクスチャーを再現できなくなります。

従って、風味を落とさずおいしいフリーズドライ味噌汁を製造するには、味噌汁の種類ごとに適切な凍結乾燥条件を見出すことが重要なのです。

フリーズドライ加工の過程において最も重要なのは、凍結速度と温度の管理です。凍結速度を早くすることで、氷の結晶が小さくなり、食感をそのまま残したり栄養が失われるのを防いだりできます。しかし、氷の結晶が小さいとそれだけ水蒸気の通り道も狭くなってしまうのです。

その結果、狭い道を水蒸気が無理やり通ろうとして食品に圧力がかかり、昇華ではなく融解や沸騰といった現象が起きてしまいます。味や食感が損なわれることにつながるので、適切な凍結速度を守る必要があるのです。

フリーズドライ食品を扱うアサヒグループでは、味噌汁に使われている味噌や野菜の種類を考慮して、商品ごとに凍結速度や温度管理を徹底しています。そうすることで、さまざまな種類の味噌汁でもフリーズドライ加工でき、風味豊かな味噌汁を販売することができています。

アサヒグループでは味噌汁以外にも、1分で復元できるパスタや衣のサクサク感を味わえるカツカレーなど、従来のフリーズドライ食品の常識をくつがえすような商品を展開しています。※2、※3

まとめ

フリーズドライ食品は、賞味期限が長いのが魅力の1つです。しかし、保存方法に注意しなければ、劣化の原因につながってしまいます。おいしさを長時間保つためにも、高温の場所を避け保存するようにしましょう。また、一度開封したフリーズドライ食品は、密封した容器に入れ高温多湿の場所を避けて保存し、賞味期限に限らずなるべく早く食べるようにしてください。

※1 農林水産省
http://www.maff.go.jp/j/syokuiku/kodomo_navi/featured/abc2.html

※2 たかが味噌汁、されど味噌汁、フリーズドライ技術の蓄積
https://www.asahigroup-holdings.com/research/report/37.html

※3 アサヒグループ食品(株)フリーズドライ、食品
https://www.asahi-gf.co.jp/products/food/

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