ビールの「キレ味」を生み出す秘密は酵母にあり? ビールのキレとビール酵母の関係をご紹介!

2019.03.18

ビールのコマーシャルでよく「キレ(味)」という言葉を耳にする機会が多いと思います。キレがあるビールが好き、という方が多いかもしれませんが、そのキレの秘密が実は「酵母」にあることをご存知ですか? 今回は、ビールのキレとビール酵母の関係についてご紹介します。

ビールづくりのパートナー「ビール酵母」

ビールのキレとビール酵母の関係性の話の前に、まず、そもそも「ビール酵母」とは、次に「ビールのキレ」とは何のことかについて明確にしておきたいと思います。

ビール酵母について

ビール酵母は微生物の一種。微生物の名の通り直径5~10μmほどの非常に小さな生き物です。人間は食物を栄養源として成長するのと同じように、ビール酵母も糖やアミノ酸を栄養源として増殖します。酸素のない環境下、ビール酵母は糖をアルコールと炭酸ガスに分解する「アルコール発酵」を行っています。ビール酵母と一口に言っても種類はさまざまで性質も異なります。このため使うビール酵母により、出来上がるビールは様々な味や香りになります。

ビールのつくり方

ビールのつくり方

ビールは主に麦芽(大麦を発芽させたもの)、ホップ、水などの原料にお湯を加えて仕込み、麦の甘い汁「麦汁」をつくります。ビール酵母はこの麦汁中の糖などを栄養源として増殖したあとで発酵をスタート。約1週間もすると麦汁中の糖はアルコールや炭酸ガスに分解されます。同時にビールの味わいに奥ゆきを醸し出す数百種類もの香気成分もつくられているのです。小さな酵母による大きな働き、といったところでしょうか。その後で発酵タンク内の沈んだ酵母を取り除き、貯酒タンク(熟成タンク)にて数十日間、低温、無酸素の環境下で熟成されます。この間も一部残った酵母によりじっくり発酵が続けられ、調和のとれたビールの味や香りがつくられます。そして熟成を終えた後でろ過し容器に詰めて出来上がります。

ビールのキレって何のこと?

「キレ」があるビールとは?

ビールのキレって何のこと?

「キレ」があるビールとは、口に入れたときの風味(味、香り)に落差があり、突出した風味が口の中に残らないビールのことをいいます。言い換えると
キレが良いというのは後味が早く消える、いわゆる「後味スッキリ」な味わいのビールと言えるでしょう。

日本ではどんな料理にも合わせやすい、キレのある辛口のビールが好まれています。和食のようにだしを用いた味わいの料理をはじめ、中華や洋食など世界中の料理に慣れ親しんでいる日本人の場合、料理のジャンルや種類を問わず飲んでも調和する、キレのある味わいのビールが重宝されているのでしょう。

酵母はビールのキレ味のカギ

そんなビールのキレに、なぜビール酵母が関係していると言えるのでしょうか。先にご紹介した通り、ビールは酵母が発酵してつくられています。キレづくりにはこの酵母の働きが影響しているからなのです。

ビール酵母は麦汁に含まれる糖などの栄養素を利用して一気に増殖します。次に「アルコール」と「炭酸」や香味成分をつくり出しています。このとき、ビール酵母が糖をどれだけ取り込むか、言い換えるとビール中に糖がどれだけ残るかがキレ味に大きく影響することが分かっています。つまり、ビール酵母が糖を取り込むチカラによってビールのキレ味は左右されているのです。

「アサヒスーパードライ」のキレ味の秘密

「キレ」があるビールとは?

アサヒビール社の代表的なビール「アサヒスーパードライ」は、キレ味のあるビールとして広く知られています。なぜキレ味がつくりだされるのかを見ていきましょう。

「アサヒスーパードライ」のキレを生み出す「318号酵母」のチカラ

アサヒがキレのあるビールをつくり続けられるのは、使用している「318号酵母」のおかげ。この「318号酵母」は、アサヒグループが保有する数百種の酵母バンクの中から、高い発酵能力をもちキレのあるビールづくりに優れているとして特別に選ばれたビール酵母なのです。ではなぜ「318号酵母」はキレの良さを実現できるのか、様々な研究が進められてきました。

その結果、遺伝子解析により、「318号酵母」は、他の酵母と比べて次の特徴をもつ3つの遺伝子を多く持っていることが分かったのです。

まず1つ目は「栄養源となる糖があることに、早く気がつく遺伝子」。早く気がつくからより多くの糖を食べることができるのです。

2つ目は、「増殖に関わる遺伝子」。「318号酵母」は糖などを栄養源として素早く増殖することができます。

3つ目は、「糖をアルコールに変えるための酵素をつくる遺伝子」。「318号酵母」は糖をアルコールに変換する能力にも長けています。

以上のように、「318号酵母」は(1)栄養源(糖)に早く気づく (2)早く増殖する (3)糖をアルコールに変えるための酵素が多い からこそ、勢いよく糖からアルコールと炭酸ガスを生み出し、ビールにキレを与えることができるのです。

この研究成果は、世界的に権威のある国際ビール学会「ヨーロッパ醸造協議会(EUROPEAN BREWERY CONVENTION)2017」において発表され、国外でも高く評価されています。

まとめ

ビールのキレ味の良さは、ビール酵母がカギを握っています。キレ味の良いビールづくりのためには、良い酵母を選び、酵母を適切な環境で働かせることが重要です。今後さらに、酵母の研究や醸造管理技術の開発が進めば、よりおいしくて高品質なビールが世の中に出てくることでしょう。

<関連情報>

ニュースリリース 『アサヒスーパードライ』さらなる品質価値向上への挑戦!
https://www.asahibeer.co.jp/news/2018/1109_1.html

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