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炭酸感を音で感じる
国内最軽量キャップ

※当社調べ (2022年6月時点 種類:炭酸飲料用)

Report

爽快な“音”を追求しながら、
環境にやさしい炭酸飲料用
キャップの開発に成功

アサヒ飲料では以前から、炭酸飲料を開栓する際に発する「プシュ」という心地良い開栓音が、炭酸感を感じる重要な要素であり、嗜好やおいしさにつながるものであると考え、炭酸飲料の価値の一つとして重視していました。この仮説を実証するため、包装資材が異なる6種類の容器を用いて開栓音の官能検査(人間の感覚を用いた製品の品質判定検査)を実施したところ、「PETボトル×樹脂キャップ」が最も炭酸感を感じる傾向が強いことが分かりました。

各種包装資材による開栓音の官能検査調査
PETボトル×樹脂キャップが最も嗜好性が高く、炭酸感を感じる傾向にあることがわかりました。

一方、アサヒグループでは持続可能な社会の実現に向けた、さまざまな取り組みの一つとして、環境負荷低減を考慮した炭酸飲料用キャップの軽量化に取り組みました。
具体的には、樹脂キャップの原料となるプラスチックの使用量を減らすことでキャップの軽量化を目指しました。

ところが、新たなキャップの開発を進めていく段階で、ある課題に直面しました。キャップを軽量化することによって、これまでのような炭酸感を感じさせる心地良い開栓音が失われてしまったのです。そこで、キャップ開発に向け、下記の3つの目標を掲げました。

  • 炭酸飲料用キャップにおいて
    「国内最軽量」であること
  • 炭酸飲料の容器として「密封性」などの基本性能を満たしていること
  • 「開栓時に炭酸感を感じる音」となる
    開栓音を有していること

3つの目標のどれ一つ損なうことなく新たなキャップを完成させるべく、キャップ製造メーカーである日本クロージャー(株)と共同で数年にわたり開発に取り組みました。その結果、炭酸飲料用キャップとして、3.03gという国内最軽量かつ開栓時に炭酸感を感じさせる樹脂キャップの開発を実現したのです。

軽量化概要 従来品 フラップ形状 重量:3.25~3.35g > 開発品 フック形状 重量:3.03g
開発品では、キャップ下部をフック形状に改良したことにより、軽量化を実現しました。

Summary

実験概要

◆ 新たなキャップの開発にあたり、
「PETボトル×樹脂キャップ」の開栓音
発生のメカニズムを分析

開栓音発生のメカニズム ①開栓前は、ボトルのネジ下とキャップのネジ上が接している ②キャップを開ける時にブリッジが伸びるにつれ、クリアランスが開く ③ブリッジが切れると、内部からガスが放出され、ネジ同士も衝突する
この分析結果を元に、試作キャップによる開栓音の波形解析を実施しました。その結果から、キャップ開栓時の音は「ガス抜け音」と「ネジ衝突音」によってもたらされることが分かってきました。そこで、試作を重ねながら「ガス抜け音」と「ネジ衝突音」の発生タイミングの最適化を目指しました。

◆ 集音計を用いて開栓音を録音。
解析ソフトを用いて開栓音データを解析

実験に使用したのは、極限まで音の反射をなくし、無視できるほど小さくなるように設計された無響室。周囲から反射してくる音がないため、キャップを開栓する際の音だけを録音することができます。

実験に使用したのは、極限まで音の反射をなくし、無視できるほど小さくなるように設計された無響室。周囲から反射してくる音がないため、キャップを開栓する際の音だけを録音することができます。

開発品評価 
開栓音解析のイメージ

開発品評価


開栓音解析のイメージ

開栓音

軽量化前の
従来品
軽量化の
途中段階
軽量化後の
開発品
開発品は、「ガス抜け音」と「ネジ衝突音」の発生タイミングが近づくように構造を改良しました。
それにより最終形状の開発品は、2つの音がほぼ重なる結果となりました。

◆ 従来品・開発品の開栓音の「官能評価」を実施 従来品を超える評価を獲得

開発品評価 開栓音官能評価
「官能評価」によって“炭酸感の有無”を5段階で評価しました。その結果、開発品は『そう思う』『ややそう思う』が全体の約6割を占め、キャップを軽量化しても従来品以上に、“炭酸感を感じるというデータが得られました。

Environment

環境効果

※2021年時点

  • 約7〜10%の省資源化(年間プラスチック使用量:約310トン削減)
  • 年間CO2排出量:約410トン削減(従来製品比)

今後もアサヒ飲料では、こだわりを追求しながら炭酸飲料のおいしさを伝えるのはもちろんのこと、環境に配慮した容器開発を行うことで、持続可能な環境保全型社会の実現に取り組んでいきます。

出典:国内最軽量 炭酸飲料用キャップの開発と展開 (第57回全日本包装技術研究大会、2019年)