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暑熱環境における
強炭酸水の摂取効果

暑熱環境下での強炭酸水の
摂取が、
生理的な反応や
気分などに与える
影響を検証

炭酸水の販売数は世界中で増加しており、その消費量は夏季に多くなります。夏季などの暑熱環境下で、冷えた炭酸水を飲むと喉が潤されるだけでなく爽快な気分になることを、多くの方が経験されているかと思います。しかし、炭酸水の摂取が体温や血液循環などの生理的な反応や、知覚・気分といった主観的感覚にどのような影響をもたらすかについては、明らかになっていないことが多々あります。

そこでアサヒ飲料は筑波大学と共同研究(研究代表:体育系、藤井直人 助教)を実施し、暑熱環境下での強炭酸水の摂取が、心血管反応(平均動脈圧、中大脳動脈平均血流速度 〔脳血流量指標〕 、心拍数など)、体温調節反応(胸部と前腕部の発汗量・皮膚血流量、皮膚温、直腸温など)、呼吸反応(酸素摂取量、呼気終末二酸化炭素分圧など)、主観的評価(温度感覚、熱的快適性、意欲、爽快感、眠気など)にどのような影響をおよぼすのかを調査しました。

主観的評価は、VAS*1を用いて測定しました。

*1 Visual Analogue Scale

Report

強炭酸水の摂取後、
中大脳動脈平均血流速度が
増加し、
気分の改善が見られた

今回の実験は、健康で活動的な若齢成人17名(男性9名、女性8名)を被験者に、暑熱環境を想定した室温37℃、相対湿度50%に制御された実験室内(人工気象室)で実施しました。実験室にて座位で60分間安静にした後、強炭酸水または水を30秒かけて男性は150ml、女性は100ml摂取し、15分間データを計測しました。これを強炭酸水、水を摂取する試験を各2回ずつ計4回行いました。摂取する飲料の順序は可能な限りランダム化し、均等になるようにしました。

その結果、強炭酸水を摂取した場合と水を摂取した場合のどちらも、中大脳動脈平均血流速度が増加し平均動脈圧(血圧)は上昇しましたが、いずれも強炭酸水のほうが反応は大きく、有意差が見られました。

脳血流量指標の変化
強炭酸水を飲んだ場合のほうが、中大脳動脈平均血流速度が増加しました。
動脈血圧の変化
強炭酸水を飲んだ場合のほうが、血圧が上昇しました。

Report

強炭酸水の摂取により、
爽快感、眠気、意欲にも
変化が見られた

VAS による主観的評価の結果、強炭酸水、水ともに摂取により全身の爽快感(口腔内、全身ともに)の増加が見られましたが、この反応は強炭酸水のほうが大きく、有意差が見られました。

VASによる「全身の爽快感」の変化
摂取により感じた「爽快感」増加の平均値は、強炭酸水のほうが有意に高まりました。

さらに、VASによる主観評価の結果、水、強炭酸水ともに飲用により眠気が減少しましたが、その効果は強炭酸水のほうが大きく、「意欲」に関しても水、強炭酸水とも上昇しましたが、やはりその効果は強炭酸水のほうが大きいことがわかりました。

VASによる「眠気」の変化
摂取により感じた「眠気」増加の平均値は、強炭酸水のほうが有意に減少しました。
VASによる「意欲」の変化
摂取により感じた「意欲」の平均値は、強炭酸水のほうが有意に高まりました。

今回の実験結果によって、暑熱環境下における強炭酸水の摂取は、水を摂取した場合よりも中大脳動脈平均血流量速度が有意に増加し、それにより、眠気の減少、意欲および、爽快感の向上という変化も見られました。

さらに、強炭酸水の摂取による中大脳動脈平均血流速度の増加が大きい人ほど、意欲が向上しやすい、口腔内の刺激をより感じる人ほど、全身の爽快感が高まるなどの相関がありました。

一方で、炭酸水摂取は体温調節反応、心拍数、および温度感覚・熱快適性には影響しないことも明らかとなりました。

Summary

実験概要
  • 参加被験者:健康な若齢成人17名(男性9名╱女性8名) 年齢:25±5歳
  • 実験開始の48時間前からサプリメントの摂取、前日からは激しい運動、12時間前からはカフェイン、アルコールの摂取を禁止。
  • 実験開始2時間前に200mlの水を摂取し、その後は絶食。
  • 実験環境:室温37℃、相対湿度50%に制御された実験室内(人工気象室)。
  • 飲料の温度:4℃
  • 実験室内にて座位で60分間安静をとり、10分間のベースライン測定を行った後、水または強炭酸水を男性は150ml、女性は100mlを30秒以内に摂取(無理なく飲める量)。摂取後、安静座位のまま15分間データを測定。
  • 上記を2回ずつ計4回実施。飲水摂取の順序を均等にするため、可能な限りランダム化。
  • 測定項目:中大動脈脳平均血流速度、動脈血圧、心拍数、心拍出量、総末梢血管抵抗、換気量、前腕部・胸部発汗量、前腕部・胸部皮膚血流量、直腸温、皮膚温、主観的感覚 (温度感覚、熱快適性、爽快感、眠気、意欲、刺激感、腹部膨満感)

実験方法

実験方法
摂取は飲料を摂取するタイミング。
初回のみ事前の安静時間を60分とった。
飲用前の10分間と飲用後15分間でデータを取得。
被験者は強炭酸水と水を2回ずつランダムに摂取し、計4回、合計160分間にわたり実験を実施。

【実験風景】

全身に測定装置を取り付け、中大脳動脈平均血流量速度、呼気ガス、発汗量、皮膚血流量、血圧などを測定。その状態のままVASを記入してもらいました。

出典:Ingestion of carbonated water increases middle cerebral artery blood velocity and improves mood states in resting humans exposed to ambient heat stress (Physiology & Behavior, Volume 255, 15 October 2022に論文掲載)
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0031938422002487