REPORT
“環境”と“人”に配慮した『軽量6缶パック包装材』の開発
スーパーの缶ビール売り場で見かける6缶パック。まとめ買いをするお客様が持ち運びに便利なだけでなく、お店側の品出しの負担軽減や在庫管理などにも役立っています。
この度、6缶パック包装材のさらなる環境負荷低減と利便性向上を目指して改良を行った 、“環境”と“人”に配慮した『軽量6缶パック包装材』の開発についてご紹介いたします。
「強度は上げたい。でも、紙の使用量は減らしたい。」 相反する課題に同時に挑む
アサヒグループでは、商品の品質保持・安全性の確保はもちろん、「使いやすさ」や「環境」にも配慮した容器包装材の開発をおこなっています。
アサヒビールで1年間に使用される6缶パック包装材は、約5億枚。1枚につき1gでも軽くすることができれば、紙の使用量を大幅に削減することができます。また、従来品では、紙パックを持った際に缶が抜け落ちてしまったり、開封ジッパーが片側方向からしか開けることができないという問題点がありました。
これらの課題を一挙に解決するために開発されたのが、『軽量6缶パック包装材』です。
缶の固定方法を変えることで、抜け落ち防止と軽量化を同時に実現
従来品では、パックの四隅にある上下8ケ所のマチで缶を抑えて固定する仕様でした。真ん中の缶は固定されていない状態のため、缶を1本だけ取り出したときやちょっとした衝撃で缶がパックから抜け落ちやすい構造でした。
そこで、今回開発した『軽量6缶パック包装材』では、缶底の凹み部を利用して1本ずつ固定する設計とすることで、缶の抜け落ちを抑制することに成功しました。これにより、従来品に比べて安全率を約1.5~2.0倍に向上させることができました。
また、四隅のマチが必要なくなったことにより板紙の面積を縮小することができ、従来品比で1枚当たり約14%の紙使用量削減を実現し、年間の紙使用量削減量は約2,000t、CO2排出量は年間約1,500tの削減に成功しています。
左右どちらからでも開封できるジッパーで、誰でも使いやすい設計に
パックの天面部分には、開封しやすいように開封ジッパーが設けられています。
一般的なジッパーミシン目の構造は、片側方向からしか開封することができません。例えば右から破った場合、赤の方向に切れが伝わり、隣のミシン目構造へ伝わっていくことで、ジッパーが開いていきます。左から切った場合は、青の構造の通り、切れ方向が下に逃げてしまうため、うまく切れが伝播せずに開封することができないのです。
一方、今回開発した『軽量6缶パック包装材』では、右から切っても左から切っても、切れが主線か補助線に伝わることで、隣接したミシン目に切れが伝わります。この構造にすることで、利き手によらず左右どちらからでも容易に開けることができ、利便性の向上につながっています。これは、業界初の試みです。
まとめ
缶の抜け落ち抑制、紙の軽量化、左右どちらからでも開封可能なジッパーへの改良、これら3点を同時に実現したことが評価され、社団法人日本包装技術協会の「第42回木下賞 改善合理化部門」を受賞しました。また、利便性については、一般財団法人国際ユニヴァーサルデザイン協議会の「IAUDアウォード2017」においても「銀賞」を受賞しており、すべての人に使いやすいデザインであると評価されています。
アサヒグループでは、“容器や包装も大切な商品の一部である”という考えのもと、これからも「安全」や「使いやすさ」を追求するとともに、「環境」に配慮した容器包装開発に取り組んでまいります。
関連情報
- ■ニュースリリース
環境とユーザビリティに配慮した『軽量6缶パック包装材』が「第42回木下賞」を受賞