挑戦する研究者たち挑戦する研究者たち

乳酸菌が持つ不思議な力を、
サプリメントという形で健康に役立てたい!

image開発

アサヒカルピスウェルネス株式会社
商品開発部 商品開発グループ
鈴木 はるか

高校生のとき、「食べ物にまつわる科学」に興味を抱き、大学では農学部に進んだ鈴木。大学3年時には、留学先で体験したモンゴル遊牧民の食生活を通じ、発酵食品の奥深さに魅了された。現在、アサヒカルピスウェルネス株式会社でサプリメントの設計・開発を手がける鈴木の“力の源泉”は、「食品に関する研究成果を、人々の健康につなげたい」という熱い思いだった。

「発酵食品の奥深さ」に魅せられて

現在、乳酸菌を中心とするサプリメントの設計・開発に携わる鈴木。そんな彼女と乳酸菌との出会いは、高校時代にまでさかのぼる。きっかけは、近隣の大学が開催した市民講座で乳酸菌のはたらきに関する講演を聞いたことだった。
「牛乳というひとつの食品から、チーズやヨーグルトなどさまざまな食品をつくりだし、さらに健康づくりにも役立つ乳酸菌や発酵食品の不思議さにすっかり魅了されてしまったんです。その後、高校の自主研究で牛乳のタンパク質について研究しました」
大学は農学部生物生産科学科に進学。そして3年生のとき、その後の進路を決定づける機会に恵まれる。牧草地研究のため1か月間モンゴルを訪問する研究グループが組織され、鈴木も参加することになったのだ。
「遊牧民の食文化について体験できるチャンスだと思って参加しました。ゲルと呼ばれる移動式天幕住居で1週間ホームステイをしたんです」
初めて体験したモンゴル遊牧民の“発酵食生活”は、鈴木が想像していた以上に豊かなものだった。

「例えば、モンゴルの伝統的な飲み物である馬乳酒は、各家庭でつくられていて、家ごとに味わいが異なります。馬乳酒は、馬乳を乳酸菌と酵母で発酵させたアルコール度数2%程度のお酒で、人々の健康維持に重要な役割を果たしてきました。ほかにもヨーグルトやチーズなど各種の乳製品がつくられ、お腹がゆるいときにはこれ、便秘のときにはこれ、というように、薬やサプリメントのように体調に応じて乳製品を使い分けています。伝統食が健康と深く結びついていることに感心しました」
モンゴルでの体験は、鈴木の「食品に関する研究を、人々の健康に役立てたい」という思いをさらに強くした。4年生になると、乳酸菌の研究室に入室。「乳酸菌がつくり出す抗菌ペプチド」に関する研究に携わった。
「抗菌ペプチドは、タンパク質の最小単位であるアミノ酸が十~数十個連なって形成されており、菌と戦うための生体防御機能としてあらゆる生物に備わっている物質です。私は、乳酸菌がつくり出す抗菌ペプチドが作り出されるメカニズムについて研究していました」
卒業後の就職先にカルピス社(現アサヒ飲料社)を選んだのも、同じ思いからだ。
「“カルピス”の乳酸菌研究については、大学時代に参加した乳酸菌学会でも注目していました。乳酸菌等の微生物に関する研究成果を、きちんと商品という形にして社会に提供している点に魅力を感じたんです」
そして2014年、鈴木はカルピス株式会社に入社。商品開発センターに配属され、サプリメントの設計・開発に従事することとなった。くしくも“カルピス”の原点は、カルピス社の創業者、三島海雲と内モンゴルの酸乳との出会いであった。鈴木も大先輩の“発酵”と“微生物”の恵みを人々の健康に役立てたいという強い想いを継承すべく、モンゴルでの感動を胸に、社会人生活をスタートさせた。


前代未聞!「直径8ミリ、噛んでも食べられるサプリメント」

2016年、組織改編により通信販売を主な事業とするアサヒカルピスウェルネス株式会社の所属となった鈴木は、引き続きサプリメントの設計・開発に従事することとなる。
ところで、「サプリメントの設計・開発」とは、具体的にはどんな仕事なのだろうか? 鈴木は、こう説明する。
「安全性や、食べやすさ、使いやすさはもちろんですが、それに加えて製造効率、コストなども総合的に勘案しながら原材料の配合比率を決めていきます」
錠剤(タブレットタイプ)のサプリメントには、有効成分を含む主原料のほかにも、さまざまな原料が使われている。結着力を高める「結合剤(けつごうざい)」、製造時に機械に貼り付くのを避ける「滑沢剤(かったくざい)」、錠剤をほぐれやすくする「崩壊剤(ほうかいざい)」などが相当し、これらの配合がサプリメントの「特性」を左右する重要な要素となる。アサヒカルピスウェルネスでは、商品の安心感を高めるため副原料の種類や数を絞り、極力お客様に馴染みの深い食品素材を副原料に使用するよう努めている。

鈴木が初めて本格的に設計に関わったのは入社2年目。乳酸菌の一種である「ラクトバチルス・ガセリCP2305株」を配合した商品「ココカラケア」の開発だ。この商品の設計にあたっては、乳酸菌粉末と、麦芽糖、植物油脂などの限られた副原料のみを使って、「噛んで食べられる硬さ」と「直径8ミリの小さい粒」を両立するという目標が掲げられた。会社にとって初めてのチャレンジだった。
「錠剤タイプのサプリメントは粒が大きくなりがちで、特に高齢の方には飲み込みにくい場合もあります。実際に先行商品では、コールセンターに、粒が大きすぎて飲みにくいので解約したい、という声をいただいたこともありました。そこで「ココカラケア」を開発するに当たっては、小粒で飲み込みやすいだけでなく、かみ砕いてもおいしく感じられる錠剤にすれば、ラムネ菓子を食べるような感覚で、幅広い世代の人に手軽に利用していただけるのではないかと考えました」

試行錯誤を重ねて設計した結果、研究室での試作段階では目論見どおりの錠剤をつくることに成功した。ところが、実際に工場の製造ラインでテストしてみると、なぜか目標より硬い錠剤に仕上がってしまう。そこで、目標の硬さになるよう機械の設定を変えてみると、今度は錠剤が機械に貼り付いてはがれない……。この日は結局、何度も機械を止めながら試作を進めなければならなかった。
「このときは焦りましたね。発売日までのスケジュールは決まっていますから、開発に遅れを生じさせるわけにはいきません。上司に相談し、試作時間短縮のために検討項目を選択するアドバイスを仰ぎました」
鈴木は研究室でさらに検討を重ね、その後、数回の工場テストを経て、ようやく「直径8ミリの、噛んでも食べられる粒」を実現することに成功した。
「成功に至るまで多くの苦労があった分、『カルピス健康通販』サイトで『ココカラケア』を見たときは一層喜びが込み上げてきましたね」


お客様の要望に「技術」で応え、社会に貢献したい

アサヒカルピスウェルネスの通信販売事業では、定期購入の利用者が多いため、コールセンターには日々、さまざまな意見・要望が寄せられる。このような利用者の声は、開発メンバーもチェックしていて、寄せられた意見・要望に対し、技術という側面からどのように応えることができるかを、日々考えているという。
「開発メンバーが検討した改善案は、『既存製品の改良』や『新製品の提案』という形でマーケティング部に伝えます。中には、風味の改良などすぐに実現することが難しい挑戦的なテーマもありますが、長期的なお客様満足向上のために、粘り強く改良に取り組んでいます」
入社から4年、通信販売事業に携わってきた鈴木が、この仕事ならではの魅力と感じているのが「お客様との距離の近さ」だという。
「コールセンターには、『期待したほどの効果が感じられない』などの声も寄せられますが、その一方で、『長年飲み続けていますが、とても調子がいいです』とか『こんな商品をつくってくれてありがとう』という言葉をいただくことも多いんです。実際に商品を出してみて、乳酸菌等の研究成果を、商品という形にして社会に提供する価値を改めて実感しました。自分たちの仕事が、お客様にきちんと届いている、と肌で感じられるのは、通信販売ならではの醍醐味でもありますね」

鈴木は、今後の仕事についてこう語る。
「お客様に『こんなの欲しかった!』と思っていただける製品を、1つでも多く世に送り出していきたいです。アサヒグループの強みである乳酸菌や酵母など“発酵のチカラ”や
“微生物のチカラ”を活かした製品を多くのお客様に届けることで、社会に貢献していきたいと思っています」
発酵や微生物が持つ不思議な力を人々の健康に役立てたい。鈴木が高校生の頃から抱き続けてきた思いは、少しも熱を失っていない。
(2018年1月30日取材)