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研究レポート

Report38

「ビール酵母細胞壁」がイネの根の成長を促進。
ゴルフコース管理の環境負荷低減にも貢献!

アサヒグループでは、ビール醸造の副産物である「ビール酵母細胞壁」の活用に早くから取り組み、これまでに人の健康や、植物の成長などに役立つことを多くの研究で証明してきました。今回は、その一環として取り組んできた、「ビール酵母細胞壁」の農業資材(肥料)によるイネの根の成長促進効果と、同じイネ科の芝に着目したゴルフコース管理における環境負荷低減に向けた研究成果をご紹介します。

植物は「ビール酵母細胞壁」を病原菌と勘違いする!?

私たち人間に、病原菌から体を守るための免疫システムが備わっているのと同じように、植物にも様々な病原菌から自分を守る免疫システムが備わっています。植物内に病原菌が侵入しようとすると、それを感知して、植物内のある種の成分の合成が盛んになるなど、免疫力を高め、植物を強くして子孫を残そうとする反応が起こります。アサヒグループが開発した、「ビール酵母細胞壁」の農業資材(肥料)(Report 24参照)は、ビールの発酵の役割を終えたビール酵母からつくられるもので、病原性はありませんが、病原菌と類似の成分を持ち合わせているため、これを水に溶かして植物に与えると、植物が「病原菌がきた!」と勘違いして、免疫力や植物の成長に関わる様々な応答が起こることが分かってきています。

「ビール酵母細胞壁」がイネの成長促進因子を増やし、根の成長を促す

これまでにおこなった多くの試験や、実際にこの農業資材を使っていただいた農家の方の声を聞く中で、「ビール酵母細胞壁」が植物の成長を促すことは明らかになっていましたが、そのメカニズムを調べるため、イネを用いて「ビール酵母細胞壁」が植物の根の成長や植物ホルモンに与える影響を調べました。

<試験方法>

イネの根を「ビール酵母細胞壁」溶液に浸し、7日間栽培しました。その後、根の重量(乾燥)および植物ホルモンの濃度を測定しました。

<結果>

「ビール酵母細胞壁」を与えたイネは、通常栽培したイネと比較して、根張りがよく、根の重量が有意に増加していることがわかりました(図1,2)。また、植物中のオーキシン(根の成長促進因子)の濃度が増加し、一方でサイトカイニン(根の成長抑制因子)の濃度は減少していることがわかりました。このことから、ビール酵母細胞壁は、植物の根において、オーキシンの合成を活性化するとともに、サイトカイニンの合成を抑制することにより、根の成長を促すことがわかりました。
(本研究は、京都大学大学院農学研究科応用生命科学専攻との共同研究です。 )

ゴルフコースの芝の管理における環境負荷低減への貢献

「ビール酵母細胞壁」の農業資材を与えることで、イネの根張りが良くなったことから、次に、同じくイネ科の植物である芝に着目しました。ゴルフ場では、一年を通してコース内の芝を良好な状態に保つために、農薬や化学肥料の使用が欠かせません。「ビール酵母細胞壁」を活用し、その分、農薬(殺菌剤)や化学肥料の使用量を削減することができれば、環境に優しいゴルフ場の管理が可能になります。そこで、 「ビール酵母細胞壁」を活用することによる環境負荷低減効果について、ライフサイクルアセスメント(LCA)(※)の手法を用いて評価しました。

※ライフサイクルアセスメント(LCA)とは
 ある製品・サービスのライフサイクル全体(資源採取―原料生産―製品生産―流通・消費―廃棄・リサイクル)又はその特定段階における環境影響を評価する手法のことをいいます。

<試験方法>

ゴルフコースを2つの区画にわけ、一方は、従来の手法で(対照区)、もう一方は、「ビール酵母細胞壁」の農業資材を定期的に散布して(試験区)、芝を含めたゴルフコースの管理をおこないました。評価期間(4月〜11月)中、対照区と試験区が同等の芝の状態であることを確認した上で、2つの管理方法について、ライフサイクルアセスメントの手法を用いてGHG(温室効果ガス)排出量を算出しました。

<結果>

「ビール酵母細胞壁」の資材を用いて管理した試験区では、従来の手法で管理した対照区と比較して、GHG排出量が約47%減少すると計算されました。
(本研究は、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構と、株式会社アコーディア・ゴルフとの共同研究です。)

まとめ
イネを用いた研究では、「ビール酵母細胞壁」が植物の成長を促すメカニズムの一端が明らかになりました。また、ゴルフ場での芝の管理における環境負荷を評価する試験では、「ビール酵母細胞壁」を活用することで、環境負荷を大きく低減させる可能性が見出されました。
 「ビール酵母細胞壁」の農業資材は、日本だけでなく世界の食糧生産や環境保全に向けた課題解決に大きく貢献する可能性を秘めていると考えられます。今後も、「ビール酵母細胞壁」が植物に与える影響について研究を進めるとともに、様々な分野での活用を提案してまいります。

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