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研究レポート

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発酵乳の“香り”でリラックス

「香り」は、食品や飲料のおいしさの決め手にもなる、とても重要な要素です。しかし香りがもたらす効果はそれだけでなく、植物や果実の香りがもたらす、リラックス効果、免疫賦活効果、ダイエット効果など、様々な知見が報告されています。
 今回、アサヒ飲料社独自の発酵乳がもつ特有の香りが、リラックス効果をもたらすことが明らかになりました。

香りがもたらす様々な効果

私たちの身の回りでは、化粧品、芳香剤、入浴剤、洗剤など、多くの商品に香りが利用されています。この香りを治療に役立てる、アロマテラピーの考え方が日本に普及したのは1980年代で、その後の研究により、香りは中枢神経に働きかけることで、リラックスや疲労低減、睡眠改善など、様々な効果をもたらすことが分かってきています。食品の香りについても同様に注目が集まり、おいしさを高めるという観点以外に、香りの機能性にフォーカスした研究も推進されています。

乳酸菌と酵母による2回の発酵を経てつくられる、アサヒ飲料社独自の発酵乳(以下、本発酵乳)は、さわやかな酸味が感じられ、乳酸菌の発酵のみでつくる一般的な発酵乳にはない、果実のような独特の香りがあります(図1)。

先行研究において、発酵乳の香りの機能性に着目した報告はほんどないため、アサヒグループでは、本発酵乳の香りがもたらす効果について、2012年頃から研究に取り組んできました。これまでに、この香りによって本発酵乳への嗜好性が高まることを動物実験で確認し、おいしさの決め手となることを明らかにしています。今回は、動物やヒトの自律神経活動や心理面にどのような効果をもたらすか検証した研究について、ご紹介します。

図1:本発酵乳ができるまで

本発酵乳の香りによる自律神経調節作用の検証<動物編>

自律神経は、休息時に優位になる副交感神経と、活動時に優位になる交感神経に分けられます。本発酵乳の香りを嗅いだ時に、これらの自律神経に対してどのような影響を及ぼすか、動物実験で検証しました。

<試験方法>

本発酵乳、もしくは水を脱脂綿に浸して、ラットに10分間あて、匂いを嗅がせました。開始から60分間、ラットの副交感神経と、交感神経について、神経活動の変化を記録※1しました。

※1 自律神経活動の変化は、各神経枝を切断後、神経フィラメントを分離し、電極を用いて測定しています。得られた電気信号をアンプで増幅させ、ノイズカット後にデータを記録しています。

<結果>

本発酵乳の香りを嗅いだラットは、60分間にわたり副交感神経の活動が上昇し、一方で交感神経の活動が低下しました(図2)。どちらも水の匂いを嗅いだラットと比較して、有意な差が確認されたことから、本発酵乳の香りには、自律神経に働きかけ、リラックスさせる効果がある可能性が示唆されました。

図2:発酵乳の香り刺激による自律神経活動の変化

本発酵乳の香りによるリラックス効果の検証<ヒト編>

本発酵乳の香りには、自律神経の調節作用があることが動物実験から示唆されたため、今度はヒトにおいても同様の効果が得られるか検証しました。

<試験方法>

この試験では、本発酵乳を含む市販の乳酸菌飲料を用いました。大学生30名(男女各15名)を2つのグループに分け、1つのグループは乳酸菌飲料の香りから、別のグループは脱臭空気から5分間匂いを嗅いでもらい、その後休憩を10分間取ってから、もう一方の匂いを嗅いでもらいました(図3)。匂いを嗅ぐ前後で、瞳の収縮率※2および心拍数を測定すると共に、主観的なストレス度を測るため、メンタルヘルスに関するアンケートを実施しました。

※2 縮瞳率とは、瞳孔の収縮の程度を示しています。安静状態では縮瞳率が大きく、緊張状態では小さくなるため、心理状態の指標として使用しています。

図3:ヒトでの試験の概要

<結果>

乳酸菌飲料の香りを嗅ぐと、縮瞳率が大きくなることが明らかになりました(図4)。またアンケートでは、香りを嗅ぐことで不安感が減るというデータも得られました。

一方メンタルヘルスに関するアンケートから、ストレスを強く感じていると判断された人(30名中20名)を対象に心拍数の変化を調べた結果、脱臭空気では、嗅いだ後に心拍数が増加するのに対して、乳酸菌飲料の香りを嗅ぐと、心拍数が増加しないことが明らかになりました(図5)。

このことから、ヒトにおいても発酵乳の香りは、自律神経活動を調節しリラックス効果をもたらすことが明らかになりました。

図4:発酵乳の香り刺激による縮瞳率の変化
図5:発酵乳の香り刺激による心拍数の変化
まとめ
近年、身体面だけでなく精神面も含めた心身両方の健康が注目され、ストレスを軽減する方法に対してもニーズが高まっています。今回の研究では、発酵乳の香りに着目し、おいしさだけでなく、自律神経や心理面に働きかける効果があることを実証しました。中でもストレスを感じている人に対しては、より高いリラックス効果が期待され、ストレスマネジメントに役立つ可能性も示唆されました。
 これからもアサヒグループでは様々な研究を通じて、お客様の心とからだの健康維持に貢献して参ります。

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