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CO2排出量削減の新しいモデルをつくる
地球温暖化により、これまで経験したことのない気候の変化や、熱波による干ばつ、台風や豪雨による洪水など異常気象が世界各 地で発生し、生命や財産に大きな被害をもたらしています。この気候変動問題は、「自然の恵み」を享受して事業を行うアサヒグループにとって重要な環境課題です。
アサヒグループは、パリ協定や国連の持続可能な開発目標 (SDGs)などを踏まえ、「アサヒグループ環境ビジョン2050」を策定しました。2040年にScope1,2,3におけるCO2排出量ネットゼロを目指す「アサヒカーボンゼロ」に加え、バリューチェーンを超えて社会全体のカーボン排出量削減に貢献できるよう「Beyondカーボンニュートラル」の目標を掲げ、達成に向けてさまざまな取り組みを積極的に推進しています。
アサヒグループはCO2排出量削減の新たなモデルとして、ビール工場排水由来のバイオメタンガスを利用した固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell、以下SOFC)による発電の実証事業をアサヒビール㈱の茨城工場にて2020年から開始しました。SOFCとは、水素から電気をつくる発電装置です。水素以外にも都市ガスが利用されることも多く、エネルギー変換効率が高い発電手段として知られている一方で、CO2排出量削減への効果は限定的な状況となっていました。
そこで、アサヒグループは、ビール工場の嫌気性排水処理設備から得られたバイオメタンガスをSOFCによる発電に活用することを目指して、バイオメタンガスに含まれる不純物を除去する精製プロセスを構築。ここで得られた精製バイオメタンガスを用いて、九州大学と共同で開発した試験用SOFC発電装置による実験を進めました。
1998年にこのチャレンジが始まりましたが、燃料電池の技術が黎明期であり一時中断を余儀なくされます。その後、技術や研究の進化があり2015年に再開すると、バイオガスに含まれる燃料電池に有害な成分を除去できる安価なシステムを開発、2019年に実験室で10,000時間の連続発電に成功しました。この結果を受けて、環境省の補助事業に採択され、茨城工場にバイオメタン設備及び燃料電池を建設。2020年にテスト運転を開始し、バイオメタンガス燃料電池発電に成功しました。2021年秋より連続稼働(2023年10月時点で17,008時間)を継続しており、実用化に向けた工程改良を実施しています。2023年には、環境省主催「COP28ジャパン・パビリオン」に出展、CO2排出量削減のためのこの新技術「ビール工場排水由来のバイオメタンガスを利用した燃料電池による発電」を展示しました。