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“期待を超えるおいしさ”を目指して、
アサヒグループが挑戦するノンアルコールビール開発技術の革新
ノンアルコール飲料や低アルコール飲料の商品展開が世界で拡大しています。消費者の飲み方やお酒に対する姿勢の変化に加え、有害なアルコール使用の低減に向け「責任ある飲酒」の推進が社会的な要請になっていることなども背景にあります。
認知や需要が高まり、ノンアルコール飲料の普及率が高いレベルに達している国も少なくありません。
アサヒグループでも、世界でノンアルコールビールの展開を加速させています。特に、同社が“グローバルブランド”と定義するプレミアムビールブランドから、2022年に『Peroni Nastro Azzurro 0.0%』、2023年から『Asahi Super Dry 0.0%』や『Kozel 0,0%』をそれぞれ世界各国で展開開始。これらの商品は、従来とは異なる革新的なノンアルコールビール開発技術を新たに導入し、ヨーロッパで製造した商品です。
アサヒグループでノンアルコールビール開発技術のイノベーションを推進する久保田さんに、開発秘話を聞きました。
アサヒグループホールディングス Supply Chain
Global Chief Brewer 久保田 順
2006年、アサヒビール入社。工場の醸造部を経て酒類開発研究所に所属しビール類の新商品開発を担当。2014年にドイツに留学し、Brew Masterを取得。帰国後の2015年から、イノベーションシーズの提案、ノンアルコールビール開発技術のイノベーションを担当。2019年、アサヒグループホールディングスの醸造技術担当として、グローバルにおける新商品開発や『Asahi Super Dry』の品質向上、ノンアルコールビール技術開発を担当。現在は、Global Chief Brewerとして『Asahi Super Dry』の世界各国の工場における新規展開プロジェクトや同ブランドのグローバルリニューアル、醸造技術におけるシナジー創出、グループ横断のイノベーション推進、グローバルブランド新商品開発などに携わる。(2024年4月現在)
久保田:
アサヒグループでは、「期待を超えるおいしさ、楽しい生活文化の創造」というミッションを掲げています。
「アサヒといえばビール」というイメージを持たれる方も多いと思いますが、「ミッション実現のための商品はビール」ということはありません。ビール以外の多様な選択肢があれば、より多くの人に商品を届けることができます。未来に必要とされる商品を提供することで、ミッションの実現に近づくことができるのです。
ノンアルコール飲料でもビールと同じように、「人とのつながりを生んだり、その場を楽しくしたりできるもの」という価値を提供したいですね。
また、近年「ソバーキュリアス※1」という言葉が使われ始めてきたように、ノンアルコール飲料は人々の選択肢の幅を広げるものとして存在価値を高めています。こうした流れは私たちにとってビジネスチャンスでもあり、世の中のニーズに応える意味でも、ノンアルコール飲料を開発・提供する価値は大きいと考えています。
※1: 健康志向の高まりやライフスタイルの変化などを背景に、若年層を中心に様々な世代でみられる“あえてお酒を飲まない”という新たな傾向。
久保田:
これまでの主なノンアルコールビール開発では、ビールならではの味わいを生み出す「ビール酵母」を使用しない、つまりアルコール発酵という工程を経ていませんでした。例えば日本で展開する『アサヒ ドライゼロ』は、様々な原料を混ぜる調合技術でビールらしい味わいを生み出しています。酵母は、どのような技術をもっても代替が難しい要素です。ビールの製造技術が進化した今でも、酵母のはたらきについて解明しきれていない部分もあります。今回の開発にあたっては、「発酵させたビールからアルコールを抜く」という脱アルコール技術を導入しました。
さらに、日本で長年培ってきたビールの開発技術も同時に採用しました。ビールはそれぞれの目標とする味の特徴に合わせて発酵度をコントロールする必要があります。特に日本では糖質をカットしたビール類をはじめ、世界でも類を見ない多様な商品が存在し、おいしさを実現するための技術が独自に発展しました。例えば、ビールの麦汁の仕込工程において、温度・時間・原材料・原材料の投入タイミングといった調整による発酵度コントロールなどです。一般的に低発酵度のビールは麦汁のエキス分がしっかりと残り、飲みごたえやコクが担保されます。
脱アルコール技術は近年のノンアルコールビール開発において世界で広まりつつある技術ですが、単にアルコールを抜くだけではビールらしい風味を残すことは難しいという課題があります。脱アルコール技術と日本で培った発酵度をコントロールする技術のふたつを融合させたことで、アサヒグループ独自の革新的な開発技術※2が誕生。よりビールらしい味わいを再現できるようになったのです。
※2: 国際特許出願中(2024年4月現在)
久保田:
アサヒグループの研究開発の本拠地は日本です。しかし、今回開発したノンアルコールビールはヨーロッパで製造しています。商品開発にあたっては、グループ横断で独自技術を確立するという挑戦を通じて、「もっとおいしい商品を世界のお客様へ届ける」という価値観を体現することができました。
とはいえ、“期待を超えるおいしさ”を実現するため、商品開発を通じてまだまだできることはあると思っています。
ノンアルコールビールの開発にあたって、現段階で一番大事なのは「どれだけビールの味わいに近づけられるか」です。これからもおいしいノンアルコールビールを作るという目標に技術面で貢献していき、“期待を超えるおいしさ”を世界に届けたいですね。