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ホップ生産の未来に光を照らすプロジェクト
ホップはビール醸造に欠かせない原材料の一つであり、チェコは1000年以上の歴史を持つ世界有数のホップ生産国です。そんなチェコで生産されるホップのうちおよそ80%を占めるのが、北西部で栽培されている「ザーツ種」と呼ばれるもの。独特の苦味と軽やかな香りが特徴で、ピルスナービールの独特な味わいを生み出すには欠かせない存在です。
そんなザーツホップが、今、危機に直面しています。原因は、近年加速している気候変動。極寒や猛暑に加えて、干ばつや短期間の集中豪雨、これらがホップの収穫量や品質に深刻な影響を与えているのです。
「水さえ十分に確保できれば、ホップのツルは2カ月で7mも生長します。不安定な天候にも左右されない、品質と収穫量を維持する新たな方法を編み出さなくてはなりません」と、ホップ農家はこの難局を打開する道筋を探っていました。
「FOR HOPS」が目指すゴールは、ホップ生産農家が土壌や気候条件に関するデータを正確に把握できる仕組みを作り、効率的な灌漑(かんがい)に繋げることで、ホップ生産の持続可能性を高めること。
チームはまず、ザーツ地方の6つのパイロット農場を選定。ホップ畑の土壌やホップの苗一つひとつにセンサーを取りつけ、降水量、湿度、土壌中の栄養素といったデータを2022年に収集しました。ホップ畑の各所に設置されたセンサーは、干ばつで受けたストレスを示す、いわば「ホップの心電図」。Microsoft社とAgritecture社は、これらのデータを管理する独自のソフトウェアを開発し、ホップが何を必要としているのかを正確に把握できるようにしました。
開発されたソフトウェアは、モバイルアプリとしてホップ農家にテスト提供しました。刻々と移り変わる状況のなか、ホップ農家は広大な畑のそれぞれの場所において、いつ、どれくらい灌漑すればホップの生長を最大化できるのか、手元のスマートフォンで確認できます。2023年に実施した小規模なテストでは、収穫量が40%増加した農家もあります。また、チェコ国内の約120のホップ農家を対象としてワークショップやカンファレンスを実施し、データの分析から得られた学びを共有するなど、共通の志をもつパートナーとの強力なネットワークの構築にも取り組んでいます。
各分野で活躍する専門家がつながり、持てる力を総動員することで、ピルスナービールの命であるザーツホップを守り、未来へとつなぐ「FOR HOPS」。アサヒグループは、このプロジェクトで得られた知見を、今後チェコ以外の世界各国のホップ生産にも活かせるか、可能性を探っていきます。また、ビールの醸造に欠かせない原料である大麦の栽培にも同様の手法を活用することも予定しています。
アサヒグループは、自然の恵みを活かした商品やサービスを通じて世界の人々のつながりを生みだし、日々の生活を照らしてきました。持続可能な農産業の実現に向けて、コミュニティや社会とのより良いつながりで、世界の明日を明るく輝かせます。